絆 ( 35 ) | 君がために奏でる詩

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絆~三十五話~






陵side


紅葉が鮮やかに木々を彩る。

そんな折だった。


未来さんは体調が優れなくて。

でも・・・とうとう来たんだ。

この日が。


・・・新しい命を迎えるときが。


僕は病院に向かっている最中に龍羽くんから連絡を受けて。

全力で走った。

走って走って・・・気づいたら病院にいた。


「未来さんは!?」


息を切らしながら言うと、さくらさんと龍羽くんが部屋の前にいて。

さくらさんは祈るように手を合わせている。


「未来は今、頑張っとるよ。

せやから・・・うちらが落ち着いて待たなあかん・・・」


自分自身に言い聞かせるようにも思えたその言葉は。

震えていて。

龍羽くんも、じっと未来さんがいる部屋を見ている。


僕はさくらさんの隣に座る。

すると、ビクッと震えて僕のほうを見る。


「・・・さくらさん?」


「あ、陵くんやったんや・・・

気づかんかったわ」


無理に笑うさくらさん。

僕は頷いて、未来さんのいる部屋を見据えた。


・・・無事に。

どうか無事で・・・3人を返して下さい。

それだけだった。


しばらくすると、中から看護師の女性が出てきて。

僕を見て、言った。


「ー奥様とお子様、お選びください・・・」


その言葉に、さくらさんたちも、僕も衝撃を受けた。

さくらさんは立ち上がって、掴みかかろうとする。


「なんやそれ・・・っ

未来も赤ん坊も助けられんの!?」


「母子共に危険な状態です・・・

どちらかを選ばなければ、両方の命は保証出来ません・・・」


未来さんか、双子か。

瞼を閉じると、浮かんでくる・・・


未来さんの笑顔。

泣き顔。

怒った顔。

拗ねた顔。


『陵っ』


ー僕を呼ぶ声。


僕は目を開ける。

看護師の女性の後ろの扉は少し開いていて。

見えたんだ。


気を失っている未来さんと、先生たちの声。


「意識は!?」


「まだ戻りません!」


「呼吸、脈拍数低下してます!」


・・・未来さん・・・

走馬灯のように駆け巡る、幼い頃からの未来さん。

誰よりも正義感溢れていて、友達想いで、お人好しな未来さん。


龍羽くんとさくらさんが、看護師さんに抗議している様子が、

遠くの出来事のように思えて。


僕たち、いい仲間が出来ましたね。

世界中探しても、こんなにいい仲間はきっといない。


「僕は・・・」


その言葉に、看護師さんも、さくらさんも龍羽くんも注目する。


・・・ごめんなさい・・・



「双子を・・・助けてください・・・・」



未来さん・・・・・。


僕の頬を、一筋の涙が伝った。