絆~二十七話~
ー鈍い音が廊下に響く。
「・・・え?」
涙目の未来さんが前を見て唖然とする。
未来さんを庇ったのは・・・さくらさんだった。
両腕で消火器を防いで。
不敵な笑みで、笑った。
「ここでくたばられたら・・・
桜咲家のプライドっちゅーもんが粉々になるんや。
なぁ、未来」
「・・・っ・・・」
へたっと床に座り込んだ未来さん。
それが合図だったかのように、僕と龍羽くんは二人の傍に駆け寄る。
「さくら!
大丈夫か!?」
「こんくらい大丈夫や。
陵くん、ウチら一回家に戻るわ。
やることあるねん」
「はい・・・
ありがとうございました」
何に対して言ったのかは、僕自身分からなかった。
さくらさんは、軽く笑って龍羽くんと一緒に帰っていった。
「未来さん・・・」
「・・・ごめんね、陵」
未来さんは静かにそう呟いた。
俯いていた顔を上げて、立ち上がって駆けて行く。
「未来さん!?」
走ったら・・・!
迷うことなく一階まで降りて、さくらさんたちに追いつく。
息一つ切らすことなく、未来さんは言った。
「さくらちゃん、ごめん・・・!
あたし、自分のことしか考えられてなかった。
ホントに・・・ごめんね・・・!」
さくらさんは、ふぁ、とあくびをして言った。
「分かればええの。
桜咲がご先祖の生まれ変わり死なせてどうするんや」
龍羽くんも頷いて。
未来さんは、微笑んで扇子を取り出した。
「いたいのいたいの、とんでけー・・・」
ふわっと光がさくらさんの両手を包み込む。
真っ赤になってた手が一瞬にして癒えた。
「・・・痛くない?」
「ありがとな。
大丈夫や」
ひらひらと手を振って、笑いかける。
「未来、俺たちは今日は帰る。
陵と話でもしてこい」
「あ・・・うん。
引き止めちゃってごめん」
「ちゃーんと話せなあかんよ?
なんせ別れるとまで言われて傷ついとるやろー」
・・・若干。
お見通しですね、さくらさんは。
未来さんの表情はよく見えなかったけれど、
またね、と言ってこちらに歩いてきた。
とても、清々しい顔で。