絆~二十八話~
ーあなたがいれば、何も要らなかった。
報われないとしても。
添い遂げることが出来なくても。
なのにあなたは、僕を・・・。
ー誰よりも大好きだった。
あなたの笑顔、怒った顔、全てが愛しくて。
でも、短い命なら。
そう思って、酷いことを言ったよね・・・。
「・・・理由は分かっていますので。
いい訳なり何なり言うことがあったら言ってください」
第一声が、それ。
冷たくて、突き放されたみたいだった。
あたしが酷いことを言ったのに、ズキンって心が痛む。
病院の中庭の奥。
あまり人が入ってこないけど、綺麗な場所。
「・・・言い訳なんかない。
でも、あれは・・・あたしの本心だった」
これは本当。
なんで場の雰囲気が悪いときに素直になるんだろうね?
自分の性格がホントに嫌になっちゃう。
「だった・・・?」
「・・・うん。
あたしが死んだ後、未桜みたいになったら嫌だって・・・
陵には、あんな想いしてほしくなかった」
幸せな記憶だけじゃなくて。
辛い記憶が痛いくらい脳裏に焼きついて離れない。
それを、最愛の人にさせたくなんかない。
陵は静かにこう言った。
「嶺羽は、未桜を置いていきました。
無念で仕方なかった・・・。
別れよう、と嶺羽が言ったことありましたよね?」
・・・あぁ。
嶺羽が亡くなる一月前だった。
呪いじゃなく、流行病で病床に伏していて。
『・・・未桜、そなたに辛い想いはさせたくない。
私の屋敷から・・・』
出て行くんだ。
そう言った嶺羽に、未桜は、
『そんなっ・・・
あなたを捨て行くことに何の幸せがあるのですか・・・!
最後の瞬間まで・・・あなたの傍にいさせてください』
「僕も、今なら未桜の気持ちが分かります・・・。
未来さんが思う気持ちも、嶺羽の記憶を通して分かります。
それでも・・・」
傍にいたい。
傍にいて愛していきたい。
「・・・あたしも同じだよ、陵」
お互いが想い合ってるのに。
こんなにも愛おしくてたまらないのに。
神様はイジワルだ。
前世だけでなく、現世でも引き裂こうとする。
・・・負けない。
絶対に。
呪いと病気。
運命の悪戯なの?
そうだとしたら・・・
抵抗して抵抗してしまくってやる。
愛しい人を、最後の瞬間まで愛し続けるために。