絆~二十五話~
がむしゃらに走った。
走って走って。
気づいたら、病院の屋上にいた。
どこまでも青い空が、広がっているはずだった。
でも今は・・・分厚い雲が空全体を覆っている。
そして、ポツリポツリと雨が降り出した。
寒くて冷たい小さな涙は、あたしの頬を伝っていく。
バンッとドアが開いて。
あたしを呼ぶ声がする。
振り向かなくても・・・いいかな。
だってもう、先は無い命なんだから。
そう思ってあたしは、宙へと一歩を踏み出した・・・。
「未来さん!!」
雨の振る中、屋上に佇んでいた未来さん。
あまりにも殺風景なその光景。
未来さん以外、何も映らない僕の目。
彼女は、僕の視界から姿を消した。
ー飛び降りたんだ。
「未来さん!!!」
ここは15階。
落ちたら・・・即死は免れない。
「支那都比古神よ!!!」
僕の感情の激しさが、力となって現れ出る。
後、一瞬でも遅れていたら。
彼女は地面に叩きつけられ、命を失っていた。
しっかりと抱きしめた未来さん。
目には涙の跡が。
そして・・・黒い・・・瘴気?
未来さんにまとわりついている。
これか。
未来さんの感情を負で固めたのは。
「鎮守の神よ、取り付きしものを払い賜え」
光が出て黒いもやを浄化する。
病院で飛び降り自殺をした霊だろう。
絶望、悲しみ、無念・・・それを未来さんへと送り込んだ。
未来さんの感情が、当時の自分に似ていたからだろう。
僕は、窓から顔を出している龍羽君とさくらさんの元へと急いだ。
もちろん、腕には未来さんを抱えて。