絆~二十四話~
4月下旬。
桜もとうに散って、葉桜になった頃。
あたしは力を使えるように練習していた。
舞わなくても治せるように。
どんな傷でも、癒して上げられるように・・・。
「・・・っ
やっぱ無理・・・!」
「未来さんなら出来ますよ。
もう一度やりましょう?」
気持ちを込めて舞う。
それは出来ない・・・。
なら、詩だけで癒せるようにしなきゃ、ってことで特訓中。
「う~・・・
大きい傷は治せないのかな・・・」
「ウチの歴代の当主を調べたけど、
舞わんで治せる人なんかおらへんかったよ」
「未来が出来れば、桜咲でもカリキュラムとして追加される」
・・・うん。
龍の言葉はいいとして、最もだよね。
だって本来は舞いと今様、両方で効果を発揮するもん。
「言葉変えたらええんちゃう?
一番気持ちこもる詩・・・探してみ?」
「うん・・・」
波長が合うかどうかも、難点なんだよね。
舞えないと・・・また足引っ張っちゃう。
迷惑ばっかりかけていられないもん。
あたしが・・・しっかりしなきゃ!
「よしっ!
あたし、ジュース自販機で買ってくるね!」
「あ、僕が・・・」
「ううん、あたしが行きたいから」
部屋から出ると、我慢していた涙が少し出る。
あたしは無力だ。
いつかのときも、そう思った。
だからしっかりしないとダメ。
もっともっと・・・上を目指さなきゃダメ。
皆を支えられるように。
笑顔でいてもらう為に。
ジュース四本を買って部屋に戻る。
あ、ちなみに、
陵はカルピス、さくらちゃんはアップルジュース、龍はコーラ、あたしはオレンジ。
部屋の前まで来ると、
ぼそぼそと話す声が聞こえた。
耳をドアに近づけて聞いてみると。
「未来・・・元気そうやのに。
ほんまに、先が短いん?」
「俺も同感だ。
医者の言ったことは間違いじゃないのか?」
あたしの・・・余命のこと?
聞きたくない。
でも・・・足が動かない。
「・・・はい。
腫瘍は至る所に転移していて・・・
もって後一年だと・・・」
・・・・・うそ。
うそ、でしょ?
だって、こんなに元気じゃん。
普通に、生きてるじゃん。
缶が音を立てて落ちる。
その音が部屋まで聞こえたのか、こっちを向いた気配がした。
あたしはどこか分からずに駆け出した。
今病院を出れば危険なことも、全てわかってた。
でも・・・
今のあたしには、そうすることしか出来なかった・・・。