絆 ( 14 ) | 君がために奏でる詩

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絆~十四話~





僕たちは、検査室に運ばれていった未来さんを見送る。

さくらさんが、力が抜けたようにへたり込む。


「なんで・・・未来なん・・・?

うちでもええやんか・・・

いっつも・・・苦しいとき笑って誤魔化しとるの、

見たくないんよ・・・」


途切れてるけれど、はっきりとそう言うさくらさん。

龍羽くんが無言で手を伸ばす。

さくらさんは放心したように未来さんが消えていった扉を見ている。


その時。

すっと立ち上がった椿さん。


「椿さん?」


次の瞬間。

パシンッと乾いた音が廊下に響いた。

一瞬、理解に苦しんだけど、椿さんがさくらさんの頬を叩いたんだと分かった。

皆、唖然としている中。


「ーあんたがしっかりせんでどうするんや!

親友が辛い思いしとるんやったら、そんな考え捨てなあかん!

頑張りよるあの子に失礼やろうが!」


さくらさんは、叩かれた頬を押さえながら。

涙声で、


「そう、やな・・・

うちが、こんなんでどうするんや・・・

未来を支えられるようにならんと」


最後は力強くそう言って。

椿さんは、さくらさんに手を伸ばす。


「そうよ、さくら。

あなたは桜咲家の跡取りなのだから。

この試練も乗り越えて見せなさい」


「はい、お母様!」


椿さんの言葉で、さくらさんだけでなく皆の目に光が宿った。

強い意志が目に表されている。


僕もしっかりしないと。

前世で支えられていた分。

いつも勇気をくれる分。

僕が頑張らないと・・・!


パタンー


検査室から出てきた先生。

ぐるりと見渡して、僕たちにこう言った。


「唐沢未来さんの腫瘍はかなり転移していて・・・

どれも手術では出来ない場所です。

声の問題もありますが、喉の奥に腫瘍はできていないので

声は出るようになるかと思います」


声は出る。

でも腫瘍は転移していてー・・・。

先生は最後に。


「ー余命のことです」


僕たちが最も恐れていたことに触れた・・・。



あたしが目を開けると。

真っ暗で。

でも、ずっと先のほうに・・・大きな扉が見えた。

走って走って。

扉の前まで来たけど。

開かなくて。


・・・鍵を探さなきゃ。

この扉を開けなきゃ。


「何で・・・

何でないの・・・っ」


泣きながら、真っ暗闇の中を探すけど。

どこにも無くて。


『心の奥を探すんだ。

落ち着いて、深呼吸しなさい』


誰・・・?

暗くて何も見えないよ・・・。

誰?


『何かが欠けている。

それは何なのか、心を探りなさい』


目を閉じる。

浮かんでくるのは、皆の顔。

少しずつ、自分の身に起きている事を思い出す。

きっともう、永くない。

でも、皆のために生きたい・・・。


『本当の思いを探しなさい。

それじゃないはずだ』


本当の思い・・・?

なに、それ。

自分でもわからないよ・・・。


『愛しい人を思い浮かべれば答えはおのずと出てくるはずー』


ぐるぐる回る。

今までの思い出と記憶。

陵・・・。

陵。


『好きだからお護りしたいんです』


『未来さんのこと、婚約者だって』


『僕も、未来さんのことが大好きです』


『僕は一生あなたを想い続ける。

死なせてしまったことを一生悔やみ続ける。


そんな人生は、僕の中で助かったと思える訳がないー!』


全てが、繋がった。

目をつぶったまま、右手を伸ばす。

ぐっと握り、目を開ける。


綺麗な金色のカギ。

扉に差込み、回す。

すると、辺りが一斉に明るくなって。


『見つけたか、鍵を』


横には、横にいたのは・・・


『生きなさい。

私たちの分、たくさんの想いの分を生きなさい』


嶺羽だった。

微笑んでる。

未桜の大好きなあの笑顔で・・・。



「未来さん!」


光が収まって。

目を開ける。

大好きな人たちの呼ぶ声。


「未来・・・!」「未来ちゃん!」


心配そうにあたしを見る皆。


「・・・ただいま、みんな・・・」


久しぶりに出す声は、ちょっと変な感じがして。

でも。

皆を幸せにできる声。


「!声が・・・」


驚くみんな。

驚く・・・大好きな陵。


鍵は。

生きたいって思うことだった。

皆のためじゃなく。

自分の為に。


『あたしは、陵と一緒に幸せになりたい』


声の鍵は。

治癒の力の鍵は。

これだったよ・・・。