絆~十三話~
周りの景色も、秋から冬へと移り変わる。
そして、冬から春へ。
陵はお正月に半日帰った以外、いつも傍にいてくれた。
お誕生日も、桜咲家に神山家とあたしの家が、盛大に祝ってくれた。
なんせ、あたしと陵一緒の日だもん。
バレンタインもホワイトデーも。
傍にいるから準備するの、お互い大変だったけど。
楽しかった。
そして。
「卒業かぁ・・・」
そっか。
あたしたち高3でもう卒業だもんね。
「そうですねー
あ、僕たち皆卒業できますから^^」
「そうやで♪
未来は・・・出来んのちゃう・・・?」
陵が笑顔で言った言葉。
何で!?
驚いた顔をしたからか、龍が答えてくれた。
「学歴テストがあったんだ。
それを受けて、全員問題なかったから卒業できる」
いつの間に!?
そんなこと一言も言ってなかったのに・・・。
て、あたしは・・・?
「未来さんも、所々テストを受けてたので大丈夫ですよ^^」
テスト?
受けたっけ・・・?
「僕が問題を出してましたよね?
あれ、実はテストだったんです。
ちゃーんと紙に書いてくれて、先生に提出してたんですよ」
うっそ!
「復帰したときの為ですよ」
とか言われて勉強させられてたやつ、テストだったの!?
へー
あれで卒業出来るんだー。
声も、出ないままで・・・。
あたしずっと出ないままなのかな?
診察のとき。
女医さんにこう言われたのをハッキリと覚えてる。
「何かが足りないか・・・探しているものを見つけたら。
鍵が開かれるかもしれないわね」
何が足りないの?
何を探してるの・・・?
陵やさくらちゃんたち、皆いて。
欠けてるものなんて一つもないのに。
ねぇ、あたしは何が足りないのでしょうかー?
「ぅ・・・っ」
かすれた声しか出なかったけど。
陵には聞こえた。
・・・あたしの苦しむ声が。
「未来さん・・・?
どうかしまし・・・っさくらさん!先生を!!」
「!?
・・・すぐ呼んでくるけ、待っときぃ!」
「急いでください!」
バタバタと遠ざかるさくらちゃんの足音。
体が痛い!
・・・っ
転移した腫瘍・・・?
「しっかりしろ、未来!」
龍の呼ぶ声。
陵の呼ぶ声。
それに重なって聞こえた綺麗な声。
「私が舞うわ」
さくらちゃんのお母さん・・・
椿さん?
ふわりと微笑み、薄紫色の扇子を開く。
あぁ。
未桜の詩声だ。
自分でもそう思うくらい、似ていた。
少しだけ色香が入ったせいか、未桜そのもの。
さくらちゃんが出せない雰囲気が出てた。
痛みがすぅっと引いていく。
椿さんは、舞い終わると真っ青な顔をして。
イスに座った。
「母上・・・っ」
「・・・大丈夫よ、龍羽」
ごめんなさい。
あたしのせいで。
治癒の力のリスクは、あなたたちには大きいものなのに。
「大丈夫ですか!?
唐沢さん、どこが痛いですか?」
問われながら、注射を打たれる。
痛みを和らげるものだろうな。
お腹が・・・痛い。
陵。
さくらちゃん。
龍。
たくさんたくさん心配かけて、迷惑かけてごめんね。
なのにあたしはー・・・
感謝の気持ちを言うことさえ出来ない。
椿さん。
未桜の生まれ変わりが、こんな人でごめんなさい。
謝ることも、何も伝えられない。
どうしたら。
どうやったら。
閉ざされた扉は開くの?
どこにあるの?
癒しの詩を紡ぎだす声の鍵は。
閉ざされた扉を開ける鍵は。
ドコニアルンデショウカ。
ミンナヲシアワセニデキルコエハ。
オモイヲツタエラレルトビラノカギハー・・・・