絆 ( 8 ) | 君がために奏でる詩

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絆~八話~



優しいオレンジ色の光があたしに届く。

あたしは、それに導かれるようにして目を開けた。


始めに見えたのは、病室の天井。

そして、夕焼けのオレンジ色。

綺麗に夕日が出てて。


なんか、手の辺りに違和感あるなって思って。

左側を見ると。


思わず飛び起きそうになった。

だって、陵がいたんだもん。

周りを見るけど、さくらちゃんの姿もベッドにはなくて。

あたしと陵だけ・・・?


陵は瞑っていた目を開けて。

あたしを見る。

あたしが起きているのを見た途端、パッと起き上がって、


「大丈夫ですか?

気分が悪いとかないですか?」


あたしは首を横に振る。

陵は、ほっとしたように良かった・・・と呟いた。


陵の声だ・・・。

三ヶ月ぶりに聞く陵の声は、全然変わってなくて。

悲しいくらい、陵は変わってなかった。


あたしをじっと見てくる陵に目を向けると。

怒ってるように見てて。

ギクッとしたあたしに構わず、続ける。


「どうして・・・別れようなんて選択をしたんですか?

僕は、未来さんを支えられないような男だったんですか・・・?」


違うよ、陵。

支えてもらってるのはあたし。

でもね、言ったら苦しんだでしょ?

心の中で呟いて、黙ったままでいると。


「この3ヶ月、未来さんの傍にいたのは龍羽くんだ。

僕は・・・未来さんを護ると言ったのに護れなかった」


ぐっと拳を作る陵。

オレンジ色に染まった光は陵とあたしを照らす。

あたしが起き上がると、

陵は真っ直ぐにあたしを見てきて。

立ち上がって、あたしを抱きしめた。


「傍にいさせてください。

あなたの傍にいたいんです・・・

愛してるんです・・・!」


今にも泣きそうに言った陵は少しだけ震えてて。

でも、ぬくもりも匂いも全然変わってなくて。

それがたまらなく愛しくて・・・。


あたしをそっと離した陵。

あたしは、陵の髪を撫でる。

・・・髪の毛も変わってないんだ。

ふふっと笑うと、困ったように


「あの・・・未来さん?」


聞いてくるからおかしくて。

あたしは陵の目を手で隠して、唇を重ねた。

離れると、陵は幸せそうに、でも泣きそうに笑ってた。


あたしも大好きだよ、って言おうと思って。

口を開くけど。


「・・・っ・・・・・・っ!」


喉に手を当てるけど、声は出なくて。

あたしの異変に気づいたのか、


「どうしたんですか!?」


声が出ない、声が出ないよ・・・陵・・・・

あたしの様子で気づいたのか、


「声が出ないんですね?」


うん、と頷くと。

陵はナースコールのボタンを押して。

パニックに陥ったあたしの手を握り締めてくれた。


「深呼吸してください、未来さん」


言われたとおり、何回か繰り返すと。

ちょっと落ち着いて。

陵を不安げに見ると。

優しく微笑んでくれた。


「傍にいますから。

安心してください」


陵は魔法使いかもしれないな。

って、非常時なのに思ってしまった。

言葉一つで、すーって心が落ち着いてく。


「どうかしましたか?」


「未来さんの声が出ないそうなんですが・・・」


「分かりました。

ちょっと、先生を呼んできて」


もう一人の看護士さんに言うと、テキパキと色々してくれた。

その間に、龍も来て。

さくらちゃんも、さっき起きたって言うから安心した。


でも・・・

なんであたしは、声が出ないのか。

落ち着いてた心が少しだけ、不安に駆られた。