絆~七話~
さくらちゃん大丈夫かな?
元気になったかな?
龍の言ったこと、無視しちゃったなー・・・
ここ、どこだろ?
真っ暗で何も見えないし。
あたし、死んじゃった?
・・・龍の言ったこと守らなかった罰かな。
でも、死ぬ前に陵を見たかったな。
記憶の中じゃなく、現実の陵を。
『未来』
誰?
聞いたことある。
懐かしい、大好きな人の声。
『目を開けてごらん、未来』
怖くないから、そう言われてそっと開けると。
お兄ちゃんが立ってて。
「お兄ちゃん・・・?」
透けてないし、生きてるみたいで。
笑ってる。
『久しぶり、未来』
「お兄ちゃんっ・・・」
飛びつくと、ははっと笑いながら抱きしめてくれた。
子供の頃のように。
『甘えんぼだなー未来は。
・・・ほら、会いたがってた人たちだぞ』
あたしをそっと離して、指を指す。
指差す方向には・・・未桜が微笑んでた。
お兄ちゃんと同じ、生きてるようで。
「未桜!?」
あたしの頭をぽんぽんと叩きながら、お兄ちゃんは言った。
未桜はそっと近づいてくる。
『本当にそっくりだな、未来。
いや、今はこういう話じゃなくて・・・』
「・・・未桜は、自分が愛する人を苦しめてしまうことならどうする?」
穏やかに微笑んで、
『護ります。
たとえ苦しめてしまうとしても・・・傍におります』
俯くあたしに、お兄ちゃんはあたしと目線をあわすようにかがんで。
真剣な顔で、
『未来。
陵を苦しめてしまうと思うのは分かる。
・・・でもな、未来は陵と一緒にいたくないのか?』
ううん、と首を横に振る。
『陵も一緒だと思うぞ?
辛く苦しい想いをするから、って陵が別れを切り出したら未来はどうする?』
「・・・一緒にいたいって、伝える」
でも。
陵を傷つけてしまうのなら、離れてしまったほうがいい。
陵を幸せにしてくれる誰かを探してくれたら。
『未来に、陵の代わりはいるのか?
・・・いないだろ?
同じように、陵を幸せにしてくれる人は未来しかいないんだよ』
はっとお兄ちゃんを見る。
切なそうな顔をして、すっと立ち上がって未桜の隣に並ぶお兄ちゃん。
目をつぶっていた未桜が、そっと目を開ける。
『あなたなら、私が護れなかった愛しい方を護ることが出来ます。
叶えることが出来なかった私の夢ー・・・
生まれ変わりのあなたなら分かるでしょう?』
未桜の夢、願いは・・・
『最愛の人の傍にいて護っていきたい』だった。
ふふっと未桜は微笑んでる。
「陵みたいな願い、言わないでよ・・・」
あははっと笑うと、お兄ちゃんは目を細める。
『笑って、精一杯生きなさい、未来。
たとえ死ぬことになっても、最後の瞬間まで、陵に愛し護ってもらいなさい』
『見取る側は辛くても・・・
それは、あなたを安らかに眠らせてくれますから』
すうっと消えていくお兄ちゃんたちに。
「人が死ぬって決め付けないでよ!
あたし・・・未桜の想いとお兄ちゃんの願い叶えて見せるんだからね・・・っ」
未桜は最後まで微笑んで。
お兄ちゃんは、
『頼もしいよ、未来・・・』
そう言って、消えていった。
あたしは、すごい眠くなって・・・
目を閉じた。