絆 ( 6 ) | 君がために奏でる詩

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絆~六話~



陵side


もう秋なのに。

夏休みが明けてから一度も未来さんを見ていません。

クラスが隣だから、チラッと見てもいないようで。

さくらさんの姿もない・・・?


「あー

さくらちゃんなら、旅行に行ってるらしいよぉ?

龍くんはいるみたいだけどね?」


そう教えてくれた未来さんの友達。

未来さんは、と問うと苦笑いして逃げるように去っていった。

他の方も同じだった。


未来さんが別れろと言ってから既に3ヶ月が過ぎようとしていて。

でも、僕の中では時間が動いていない。

あの日から・・・。


どうして別れようなんて言ったんです?

どうして、思ってもいないことを言ったんです?

どうして・・・


疑問は浮かんでは消え、消えては浮かぶ。

心に穴が開いたような気持ちで、この3ヶ月をすごしてきた・・・。


HRが終わった後、


「龍羽くん!」


帰ろうとしている龍羽くんを呼び止める。

振り返る龍羽くんに、ちょっと来て下さいと言うと、着いて来てくれた。


部室の前で立ち止まると、僕は切り出す。


「さくらさんと未来さんは一緒に旅行ですか?」


「・・・ああ」


「どこへ?」


「・・・京都に」


何かを隠して、ますよね?

少しうろたえているような気がして。

ふふっと僕が笑うと、何が可笑しい?と聞いてきて。

メガネを取りながら言う。


「率直に申し上げますと・・・

未来さんとさくらさんはどこにいるんですか?」


黙ったままの龍羽くんに更に、


「知っているんですよね?

旅行なんかじゃないはずだ。

現に、龍羽くんは・・・っ」


掴みかかると、龍羽くんは無表情で言った。


「着いて来い。

・・・覚悟があるなら」


僕は背を向けて歩き出す龍羽くんを追った。


着いた場所は、家から離れている「桜咲大学病院」。

なぜここに・・・?


龍羽くんは、特別室の39号室の前で立ち止まる。

中には、点滴を受けながら眠っている未来さんと。

その隣には、少し顔色が悪いさくらさんがベッドで眠っていた。


傍によると、龍羽くんは辛そうな顔をして。


「・・・未来は重い病にかかって、さくらはその進行を遅らせようとして舞ったんだが・・・」


全ての事情を聞いた僕は、呆然と未来さんを見た。


さくらさんが未来さんを救おうとして舞い続け、倒れたこと。

龍羽くんがいないすきに、さくらさんを救おうとして舞ったこと。

そのせいで、一気に具合が悪くなったこと・・・。


「治癒の力は・・・万能じゃない。

自分が悪いときに力を使うと、それが一気に進行することは薄々気づいていた。

それを言っていたのに・・・」


お互いがお互いを助けようとして。

滅びへと近づけた。

そう言う龍羽くんに、僕は恐怖を感じた。


その時。

ドアが開いて入ってきたのは、、、


「陵くん・・・」


未来さんのお母さんだった。

全てを悟ったように、悲しげに微笑んで。


「びっくりしたでしょ?

さっきの検査で分かったんだけど・・・もう他の部分まで転移してるらしくて。

晴治も先に逝ったのに、この子まで・・・っ」


泣き崩れるお母さんにハンカチを渡すと、ありがとうと言われて。


「いえ。

僕は・・・龍羽くんに連れて来られるまで知りませんでした。

護るといったのに、それすらも出来なくて・・・」


「それはしょうがないわ。

未来がそう望んだんだから」


驚いてお母さんを見ると、顔を伏せていて。

龍羽くんも、辛そうに目をつぶっていて。

でも、龍羽くんは・・・


「先に逝ってしまう自分よりも。

自分のことを忘れて他の誰かと幸せになってほしい。

お前が幸せであることが・・・自分の幸せだから言うな・・・って・・・」


「そんな・・・」


僕は未来さんじゃないと嫌だ。

他の誰も、未来さんの代わりになんてなれない。


「この子は馬鹿なくらい、他の子の幸せを願って。

自分が傷つくことを省みずに、人の為に行動して・・・

それが、本当は違うって自分でもわかってるのにね」


未来さんのお母さんは微笑んで、

一回帰ってくるわね、と言って出て行った。


「未来さん・・・」


どうして、傍にいさせてくれなかったんですか・・・。

あなたが苦しんでいるとき、支えてあげたかった。

寄り添わせて欲しかった。


青白い顔をして眠っている未来さんは、僕の呼びかけに答えてはくれなかった。


               ~続く~


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陵ご登場ですよ~・・・やっと!!


ちなみに私、こういうシリアス系の方が書くの得意なんですよねー・・・


本当はラブ系の書きたいのに!!(泣


絆、書き始めてから、異様にアクセス数アップしてます・・・。


人気なんでしょうかね?w