絆~四話~
あたしは、そのまま入院することになった。
ただね。
さくらちゃんが、
「うちの経営しとる病院に入院し!
タダで面倒見たる!」
あたしのお母さんも、えぇ!って驚いてたけど。
さくらちゃん、言い出したら聞かないんだもん。
勝手に手続きしちゃった。
「ごめんね、さくらちゃん・・・」
「ええんよ?
うち、未来の為にしてあげられることそんなにないんやから。
ちょっとは、うちと龍に甘えてな?」
さくらちゃんの言葉はあたしが言わなきゃいけないのに。
あたし、さくらちゃんたちの為にしてあげられること何にもない。
むしろ迷惑かけてる。
なのに、笑ってくれるんだね。
二人とも・・・。
さくらちゃんたちの家が経営してる「桜咲大学病院」。
あたしの家から少し遠いけど。
それがかえって嬉しい。
陵に会わなくて済む。
しかもあたしは、特別室に入れられた。
個室で、ほとんど24時間体勢の部屋。
・・・逃げ出すことも出来ないなぁ。
入院して一週間が過ぎた頃だった。
お見舞いに来たさくらちゃんが、
「うち、これから舞う!
そしたら、病気の進行を遅れさすことも出来るし・・・」
「ダメ!
倒れたらどうすんの!?」
しゅんっとなるさくらちゃん。
さくらちゃんが舞って、命を落としかけたことだってあるんだから。
絶対にダメ。
「うちは・・・ご先祖様から受け継いだ力に誇りを持って生きてきた。
病気の人が苦しんどるのに、無視しろ言うん?
そんなん、うちのプライドが許さんわ!」
「でもっ!」
「自惚れんなや、未来!
友達やからやのうて、ご先祖様の為にすることや!」
怒鳴られて、あたしは何も言えない。
でも、あたしのせいで危険なマネはしてほしくない。
「さくらはこう言ったら聞かないから。
もし、未来がどうしても嫌だと言うなら、陵に言うが・・・」
「それだけはダメ!
・・・分かった・・・
でも、無理はしないで・・・」
龍の止めの言葉に、あたしは抵抗する手段を失った。
さくらちゃんが舞いだすと、体が軽くなる。
でも、だんだんと苦しむさくらちゃんに・・・。
龍も止めに入った。
「なんや・・・っ
まだ、舞える・・・っ!」
「無理はだめだ。
さくらが命を落としたら、未来は早死にすることになるぞ」
「無理しないでね、さくらちゃん。
あと・・・ありがとう。
随分楽になった」
微笑んで言うと、さくらちゃんはほっとしたような表情を浮かべて、
気を失った。
「この程度なら、大丈夫だ。
今様も半分もいっていなかったから」
「そ・・・っか。
ごめん、龍」
「いや。
未来こそ・・・」
「?」
「何もない」
龍は言いかけて、やめた。
あたしがもし。
前みたいだったら。
陵とも、一緒にいられたのにね?
・・・未桜。
あなたなら、嶺羽に伝えていましたか?
自分が病であることを。
未桜は・・・
嶺羽が悪い、と言っていてもそんなことはなくて。
進んで看病してた。
陵もそうなのかな?
未桜みたいな気持ちになるのかな?
逆にあたしは、嶺羽の気持ちが分かる気がする。
大切な人たちに迷惑をかけて。
健康だったら、と思う気持ちが。
嶺羽と未桜・・・
あたしは今すごく、二人に会いたいです。
叶うことなら、二人の気持ちを聞かせて欲しい。
記憶の中でなく、実際に。