絆 ( 5 ) | 君がために奏でる詩

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絆~五話~



さくらちゃんは、

あたしの為に舞っては倒れ、を繰り返していた。

次の日には無理をしてでも舞ってくれる。


そんな生活が更に一ヶ月過ぎた頃。

紅葉が最盛期を迎えて、窓の外には綺麗な景色が広がっている。

そんな時期だった。


体に負担がかかっていたんだろう。

さくらちゃんは、倒れてから一週間、目を覚まさないまま。

何年か前にも、同じようなことがあったって。

龍が教えてくれた。


「具合はどうだ?」


「大丈夫!

さくらちゃんはまだ・・・?」


「・・・ああ。

まだ目を覚まさない」


ずっと高熱を持ったままだ。

そう言う龍に、申し訳ない気持ちになる。

だって・・・お姉ちゃんが大変なときに。


「ごめん・・・」


「未来が謝ることはない。

さくらが自分でやりたいと言ったことだ。

俺もそれを、望んだから」


あたしが舞おうか?

って言ったら、龍が止めた。

舞えば、病気が一気に進行する恐れがあるからって。


「さくらちゃんに、会いたいなー

・・・あたしと同じ部屋にしちゃだめ?さくらちゃん」


だめもとで聞いてみる。

龍はちょっと迷ったようだけど。

了解してくれた。


その日のうちに、さくらちゃんはあたしの部屋に来た。

龍は、さくらちゃんの服を持ってくるからって言って家に帰った。


そろ、っとベッドから立ち上がる。

確かここに・・・あった。

カバンの中には、未桜の扇子を入れてきてた。


・・・命懸けであたしを助けてくれようとしたよね。

だからあたしも・・・その想いに報いらなきゃ。

止めても無駄だよ。

強情なさくらちゃんの先祖の生まれ変わりなんだから。

さくらちゃんよりも、頑固だよ?


『君を初めて見る折はー』


舞いながら、どっと溢れてくる愛しい人との思い出。

笑顔に、怒った顔に、悔しそうな顔。

どれも、かけがえのない思い出・・・。


舞い終わって、ペタンと座り込む。

さくらちゃんは、顔色が良くなってたから多分大丈夫だと思う。


・・・別れてから3ヶ月。

会わなくなってもう、3ヶ月・・・。

陵があたしを呼んだ声を、あたしは無視した。


『未来さん!!』


・・・不思議だね。

こんなに時間が経つのに。

あたしはまだ、こんなにも陵のことを覚えてる。


表情も仕草も声も。

あたしから何一つ、消えていかない・・・。


「おいっ未来!?

未来・・・っ」


龍が倒れてるあたしを見つけて。

少しだけ・・・苦しい・・・な・・・。


「未来・・・・・っ!」