六甲縦走キャノンボールラン、パワーの部完走記(1)~関西ローカルですが、そのタフさメガトン級! | 「最後まで諦めない」~医師、時々作家、そしてランナー

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医師であり、時々作家、そしてランナーである筆者が日々の出来事について徒然なるままに綴っております。「最後まで歩かない」事をレースでも、人生でも目指しております。

今日は月曜日です。

本日の山口県西部、朝はぐっと冷え込んだようです。天候は朝から気持ちよく晴れています。日中は少し暑いと感じるぐらいに気温も上がっています。

10月も今日を除くとあと3日で終わります。10月終盤に列島を見舞ったダブル台風には驚きました。10月に又台風が発生しなければいいがと気を揉んでいます。

本日の「金沢守クリニック」の外来総受診者数は36名でした。

さて、私は10月26日から27日掛けて兵庫県神戸市、西宮市を又に掛けて開催された第9回六甲縦走キャノンボールラン、パワーの部に出場致しました。

結果は戦前に想像もしなかった24時間10分という中々惨憺たるものでした。しかし、生まれて初めて24時間以上横にならず、身体を動かし続けた事は得がたい経験ですし、大きな自信になりました。

この大会、神戸市にある“けんこう堂”という整体やダイエットの指導を行うお店の方々が主催しており、
記録計測のタグもないですし、折り返し地点でのスタンプなどのチェックもありません。

けんこう堂

エイドは全部私設エイドですし、記録も自己申告制です。関門制限もなければ、完走制限時間もないのです。

昨日の何時に最終走者がゴールしたのか知りません。

少なくとも私より後ろに10名以上の選手が、もうフィニッシュを目指すしかない場所まで入り込んでいたので、23時~24時までレースは続いたと想像しています。日付が変わった可能性も拭えません。

どんなに辛くても、山の中では引き返すのも又地獄なのはどんなレースでも同じだと思います。

とにかく“性善説”を信じていなければ成り立たないレースじゃないかなと思います。

日中ならコースを完璧に定められた通りになぞる事が出来る人もいるでしょうが、夜中になると思わぬ見過ごしから違うルートをうっかり辿ってしまう事もあるかもしれませんが、それは大きな問題ではありません。

変に色気を出してショートカットを狙うととんでもない目に遭う可能性があるようです。最後に大怪我をしたくなければ、安全を重視しなければならない大会でもあります。

年に2回開催されるようです。毎年3月と10月に開催され、スタート地点はその度毎に須磨浦公園か宝塚駅近くの湯本台広場が交代で指定されると決まっています。

今回はパワーの部、バディの部が湯本台広場からスタートし、スピードの部が須磨浦公園からスタートしています。

来年3月に開催される記念すべき第10回大会はパワー、バディは須磨浦公園をスタートし、スピードは湯本台広場からスタートする事になります。

尚、3月の六甲縦走路は10月より冷え込みが厳しいらしく、路面の凍結や、降雪、積雪の恐れもあると出場経験のある方が話していました。

私は今回、復路を走る際に神戸市出身で現在は東京都に住んでいるランナーさんとご一緒しています。

Sさんという方です。ウルトラを中心としたマラソンやトレイルレースに出場しているそうです。今年3月の小江戸大江戸203kは36時間で完走を果たしたそうです。

Sさんはハセツネや信越五岳、キタタンなどのトレイルレースのメジャーどころも概ね制しています。その
Sさんが、“キャノンボールラン、パワーの部”はハセツネよりも信越五岳よりもきついと話していました。

パワーの部に匹敵するレースはSTYが該当しそうだとの事です。恐るべしはキャノンボールラン、パワーの部です。ハセツネはキャノンボールランに比べたら、全然楽だとも話していました。

私はこの大会を萩往還140キロの部を完踏するためのステップと考えていましたが、キャノンボールに比べたら、萩往還140キロなんて甘いです。完踏した事もないのに大口叩いてすいません。

確かに萩往還140キロの部には関門制限や完走制限時間が定められていますが、2カ所のレストステーションが用意されています。

ここでウェアを着替えたり、トレッキングポールを準備する事が出来ます。又、不要になったヘッドライトや
ハンドライトなども預ける事が出来るも出来るので、出場者には大きなメリットになります。

又、公設のエイドステーションが何カ所かありますし、街中を走る時はコンビニエンスストアを利用する事が
出来ます。何より要所には案内して下さるスタッフの姿があります。

翻ってキャノンボールでは、荷物は全て最初から最後まで背負って行動しなければなりません。又、神戸市が監修している“六甲全山縦走マップ”を見ただけでは、あのコースを夜中に一人で走るのは怖いです。

尚、六甲山から見下ろす神戸の夜景はもう絶景です。キャノンボールが行われるのが土曜日の夜を含んで
いますでの、恋人同士で夜景を楽しむカップルを多数目撃しました。

まあ、向こうはいい迷惑だったと思いますし、車やバイクで走った方が気持ちはいいかなと思います。

自販機は何ヶ所かで利用可能ですが、コンビニは市街地を走る時に利用出来る店が一軒ある以外は全く
見掛ける事はありません。

来年の萩往還140キロに既にエントリーしている私にとって、今回のキャノンボール完走は大きな自信に
なっています。

本筋に戻ります。

26日(土)の18時過ぎの新幹線に乗り、私は新神戸駅経由で阪急宝塚駅を目指しています。大会中に宝塚
からならJRを使って新大阪か乗車した方が早いと学んでいます。

湯本台広場に着いたのはもうレースが始まる20分ぐらい前でした。湯本台広場は変にテンションが高くなっているキャノンボーラー達で溢れていました。

受付を済ませて、ゼッケンを頂いたのですが、安全ピンが手違いでスピードの部がスタートする須磨浦公園に行ってしまったそうです。仕方なく私は終始ゼッケンを付ける事なく走りました。

又、スタートは21時だったのですが、これも何故か約20分遅れています。翌27日(日)のパワーの部の復路
並びにスピードの部のスタートも7時半の予定だったのが、7時45分と遅くなっています。

もし完走制限時間が例えば24時間と定められていたら、15分のロスは痛いかもしれません。スタート時間は大抵遅れる大会、それがキャノンボールでもあります。

走り初めて、程なく私は自分のヘッドライトが異様に暗い事に気付き、愕然としています。どうやら充電式の電池が上手く充電されていなかったようです。

一番最初のエイドで、アルカリ式乾電池を3本分けて頂く事が出来たのは奇跡としか言い様がない出来事
でした。

もし、この奇跡がなければ、ハンドライト1本で夜の六甲と戦わなければならなかったと思うとぞっとします。
これから夜のレースに出る時は充電式電池3本+アルカリ式乾電池3本の準備が必須だなと学びました。

この幸運をプラスに転じきれないのが私の残念なところでした。ヘッドライトが明るくなったのをいい事に
道をよく知りもしないのに、夜の六甲でスピードを上げてしまい、当然のように道に迷っています。

途中で神戸市須磨区に住んでおり、キャノンボールにいきなり出場するのは怖いけど、夜の六甲を一人で
走るのは嫌だと思い、大会を練習の場として利用していた男性とご一緒する事が出来ました。

この男性は宝塚から須磨浦公園へのルートを夜間に走りたいと思って参加されたそうです。先に登場した
東京都在住のSさんは何とパワーの部に練習として参加した事がありました。

私のように昼間に1回試走しただけで参加するにはスピードの部ならよいとしても、パワーの部に参加するのは完璧に準備不足でした。

普通のレースなら練習として勝手に参加する事は認められないと思いますが、こういった参加に関しても
全然問題ないのはキャノンボールの器の大きさだと思います。

日本三大夜景の一つと称される“掬星台”へと歩を進めている途中に出会ったトライアスリートは随分六甲の道に詳しい方でした。

掬星台

幾ら練習で参加しているとは言え、須磨浦公園までの往路の残り区間を決して速いとは言えない私にお付き合いして下さったのは涙が出るほど有り難かったです。

私はキャノンボールで苦戦しました。しかし、乾電池の件だけでなく、道中でご一緒させて頂く方が悉くいい方だったので、レースを続ける事が出来ました。

一人では戦えない私も、“共走”の気持ちを忘れなければ、自ずと道は拓けると何度も感じました。

その後は苦しみながらも、大きなトラブルはなく須磨浦公園へと歩を進めています。唯一にして、最大の問題は午前7時半に須磨浦公園に到着するのが困難であると分かった事でした。

最後の山である旗振山を下る時に7時半を迎えてしまったのです。200~300人の選手達が下から登ってくると思うと、こんな瞬間を目の当たりに出来る事はそうないと思う気持ちも湧いています。

但し、もしかしてスタート地点に大会関係者が待っており、関門に引っ掛かったと見なされDNFになるのではという大きな不安も感じ始めています。

後にスタート時間が15分遅れた事を知るのですが、坂を降りながら「なぜ、堤防は決壊しないのだろう」と
疑問を感じています。

もう、ほとんど須磨浦公園側のスタート地点に近いところで、キャノンボーラーの大群が元気よく坂を駆け上る姿を見る事が出来ました。

そして、不安を抱えたまま到達した須磨浦公園側のスタート地点に大会関係者の姿は既になく、私設エイドの方にチャイやパン、ビスケットなどを頂きました。

到着時間は7時50分過ぎでしたので、往路に10時間半を要した計算になります。

冷静になって考えれば事前に読んだ資料にも関門制限や完走制限時間の事は全く書いていなかったの
です。

私はレースを続ける事が出来る事が分かり、俄然力が湧いてくるのを感じています。

基本的にレースの完走記を幾つかに分けるのは好きじゃないのですが、今回のレースばかりはしょうがないなと思う今夜の私です。