腎臓ん現キカイダー 第6話 前編 | 成田家の徒然なる日々 ~15th Season

成田家の徒然なる日々 ~15th Season

来訪される皆様に支えられて15年。昭和の特撮・アニメを取り上げていきます。

 

美しい月夜。


物思いに耽るミツコ。

「ばかね … 何考えているの。ジローはただのロボット」

 

(ミツコ)

「否定するの? だって彼は傷つき、悲しみ、憎んでいる。今そう言ったのはミツコさんでしょ。一番ジロー君の事を人間の様に感じているのはあなたじゃないのかな?」

(服部探偵。以下「服部」で)

服部探偵がやって来た。

「今の話、全部本当なんですか?」(ミツコ)

「ええ … 証拠とよべるようなものはありませんが確かな筋からの情報です」(服部)

「そんな …」(ミツコ)

「ミツコさん、あなたの父上は、光明寺博士は …」(服部)

部屋の明かりが消える。

「ふっふっふっふっふ。うんふははははは」(?)

悲鳴を残し


ミツコは何者かにさらわれた。


第6話 負の断片


ミツコの状況など知らずにジローはギターを弾いている。


「人間は何かを信じていないと生きていけないんだ。あんたにもいるでしょ、そういう人」というミユキの言葉が胸に蘇る。


次にジローの胸にミツコの姿が浮かぶ。


「ミツコさん …」(ジロー)


何故か鳴る壊れた電話ボックスの電話にジローが近づき、受話器を取ると


「ミツコに会いたいのかキカイダー?」(?)

「お前は誰だ!」(ジロー)

「ミツコを預かっているものだよ」(?)

「何!?」(ジロー)

「会いたければ来るがいい。場所は …」(?)


電話ボックスを出たジローは
何処へかと向かう。
とある屋敷


「キカイダーはここに来るそうだ。お前さんを迎えに」

(ゴールデン・バット。以下「バット」で)

「ジローに何をするつもりなの? あなたは誰?」(ミツコ)

「そんな怖い顔で見ないでほしいねぇ。これでも世間で言う良心とやらは持ち合わせているつもりだ。あの探偵は気を失わせただけだし、お前さんの弟には何もしていない。それに私は元来フェミニストだ」(バット)

「質問に答えて!」(ミツコ)

「私はキカイダーにも、お前さんにも恨みはない。だが命令でね、キカイダーをす」(バット)


「はっ…」(ミツコ)

「いやいや、壊す、だ。そう言葉はは正しく使わねばならない。壊すだ」(バット)

「何故そんな事を」(ミツコ)

「言っただろ、命令だと」(バット)

「あなたは …」(ミツコ)

「人造人間 … すなわちロボットには命令への拒否権などない。ロボットはお嫌いかな?」(バット)

「………」(ミツコ)

「しかし私にも命令に従うのを楽しむくらいの感情はある。
キカイダーが来るまで屋敷内でゆっくりしていてくれ。だが屋敷からは出ない方が賢明だ。

様々なトラップが用意してあってね。それに引っかかったら命の保証はしかねる」(バット)

「あなた達は誰なの。あなたは一体、誰の命令で」(ミツコ)


「今はただ、プロフェッサー・ギルの手の物とだけ言っておこう」(バット)


「プロフェッサー … ギル」(ミツコ)


「あなたの父上は … 光明寺博士は、どうやらギル・ヘルバート、通称プロフェッサー・ギルと呼ばれる外国人から資金の援助を受けていたらしいんですよ」(服部)

「プロフェッサー・ギル」(ミツコ)

「そうです。そいつはダークと呼ばれる組織の頂点に立つ男らしい」(服部)

「ダーク?」(ミツコ)

「まぁ商売柄、裏社会に結構、情報網がありましてね、色々聞いて回ったんですが、みんな怯えているんですよ。ダークの話はしたくないとか、命が惜しかったらプロフェッサー・ギルとは関わり合うなとかね」(服部)

「そんな組織と父が、どうして関わりを」(ミツコ)

ミツコの焦点が

古い電話に合わせられる。

「ええ、そうよ。… 分かったわ。プロフェッサー・ギルにそう伝えておいて」(千種)

母がプロフェッサー・ギルに電話する様子を幼い頃のミツコは見ていた。

「母さん …」(ミツコ)

周囲の様子をミツコは見回す。

「知ってる … 私 …」(ミツコ)

「ここは …」(ミツコ)

廃屋内を歩き出したミツコの脳裏に服部探偵の言葉が蘇る。

「あなたとマサル君の母上が光明寺博士の後妻だったというのは当然ご存知だと思いますが」(服部)

「ええ」(ミツコ)

「博士はあなた達に、その辺を何と説明なさってましたか?」(服部)

「前の母親 … つまり父の先妻ですけど、その人は病気でんだって。

それから、その母との間に生まれた子供、私達の腹違いの兄にあたる一郎っていう人がいたけれど、その兄も事故でんだんだって。父はそれ以外は何も。

それが何か?」(ミツコ)

「最初の奥さんが亡くなり、長男の一郎さんも事故で亡くなられ暫くして博士は再婚した。

ですが、あなたのお母さん、旧姓坂本千種さんを博士に紹介したのは、どうも、そのプロフェッサー・ギルという男らしいんです」(服部)

「あっ …」(ミツコ)

「つまりですね、資金援助を受けていたギルから彼女を紹介され博士は再婚した。そして、あなたとマサルくんが生まれたという訳です」(服部)

「間違いないわ、やっぱり、ここは …」(ミツコ)

「なえ、お母さん」(ミツコ)

「なぁに?」(千種)

「ギルって、だぁれ? お母さんの友達? お父さんのお友達?」(ミツコ)

「そうね … お父さんとお母さん、両方のお友達よ」(千種)

喜ぶミツコ。

「それよりミツコ、赤ちゃんの名前、もう決めたの?」(千種)

「うん、マサル君」(ミツコ)

「女の子だったら?」(千種)

「だった、私、弟がいいんだもん」(ミツコ)

「そう … 女の子の名前も考えておいてね」(千種)

「ここは昔 … 私達が住んでいた家。今の家に引っ越すずっと前に確かに私達はここに住んでいた」(ミツコ)

幼い頃の楽しかった記憶が蘇る。

「分からない。あの男は、どうして私をこんな所に」(ミツコ)

「つまりですね … 資金援助を受けていたギルから彼女を紹介され博士は再婚した訳です。そして、あなたとマサル君が生まれた。どうも博士とプロフェッサー・ギルはかなり親しい関係にあったようですね」(服部)

玄関まで着たミツコは母が去った日の事を思い出す。

父は母が去った理由を語らず


マサルの世話をミツコに命じただけだった。


悲嘆に暮れる幼い頃のミツコ。


その時の事を思い出したミツコは、ゴールデン・バットの警告を忘れ思わず家の外に出てしまい


トラップに襲われるが間一髪の所をゴールデン・バットに助けられる。


「言ったはずだ。屋敷の外に出たら危険だと」(バット)


屋敷内に戻ったミツコが「一体どういうつもりなの?」と問うと


「何がかね?」(バット)


「とぼけないで! ここは昔、私と父が、そして母が住んでいた家よ。そんな家にどうしてわざわざ連れてきたの!」(ミツコ)

「簡単な事さ。それがプロフェッサー・ギルの命令だからだ」(バット)

「何ですって …」(ミツコ)

「プロフェッサー・ギルからお前さんをここに連れて来いと言われれば我々、人造人間はその命令に従う。ただ、それだけの事だ」(バット)


「誤魔化さないで。父さんとプロフェッサー・ギルとは一体どういう関係があったの?」(ミツコ)


「見た目より気が強いのだなぁ。そういう女性は嫌いではないよ」(バット)


ミツコは冷静なゴールデン・バットに怯える。


「お前さんの親父、光明寺博士は何故キカイダーを作り上げたのか。それは私の知る所ではない。


過去にプロフェッサー・ギルと光明寺、そしてお前さんの家族の間に何があったのかも知らん。


だが、ここに1つ真実がある」(バット)


ゴールデン・バットが言おうとする真実にミツコは怯える。


「お前の親父はキカイダーに良心回路を組み込む事で命令に対する拒否権を与えてしまったのだよ」(バット)

「拒否権?」(ミツコ)

「そうだ。本来、命令に100%従うべき人造人間にそれを拒否する権利、言い換えれば命令の選択権を与えてしまった。


私のボス、プロフェッサー・ギルは、それが不愉快で堪らないのだ。ロボットの分際で、人間の下僕として作られた機械であるはずなのに主の命令に背くとは何事か。我慢できんという訳だよ」(バット)


ミツコの怯えは止まらない。


「良心回路をブッ潰せ!


キカイダーを壊してしまえ。


単純だが筋の通った理屈さ」(バット)


 

↓衝撃の後編へと続く