このところ、中越沖地震の活断層問題や柏崎刈羽原発の被災に対し、国や電力会社からの発表が連続しています(TVは従来通り、完全に及び腰のようですが)。


■1 東電による、柏崎刈羽原発運転再開を白紙と考えているという「表向き」の表明(1/10)

■2 保安院に提出された東電による床応答スペクトルその他解析結果の一部公開(1/11)

■3 政府地震調査委員会の断層評価結果の報告(1/11)

■4 経産省保安院の柏崎市の方々に議事録「廃棄」の件で謝罪(1/12)


まるでIAEAの、1/31からの第2回調査に先駆けての証拠作りのように思える「美しい」連携ぶりです。


皮肉な連想として浮かび上がるのは、正しい手順から大きく逸脱してきたがために、何かの監査の前に大慌てをする会社の状況です。


現実の事例に目を向けると、税務監査も、ISO監査なども、文書管理の多少の混乱や誤りをチェックするつもりの作業が予想外に膨大になったり、あるいは、「事態の収拾」(表ざたにできないような「コト」の処理)などもあります。

そして今回、「事態の収拾」に走っているようなイメージを受けることは、単なる思い込みなのでしょうか?

メディア報道の裏読みに過ぎるのでしょうか?


憶測はさておき、以下、多少散漫な箇所(どうも言い訳がちですが、新たにプライベートでの課題がにわかに約3倍増となっています)をお許しいただくとして、まずは現状をまとめてみたいと思います。

そして本筋から言えば、外野がまとめるものではないのに、ということもつぶやいてみます。


ここでは詳細には触れませんが、原子力産業の推進の裏側の事実に関しては、外野にも内野にもに無数の証人が存在するという事実は記しておきたいと思います。


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まずは、

■1 東電による、柏崎刈羽原発運転再開を白紙と考えているという「表向き」の表明(1/10)

所長の年頭会見でのメッセージを伝えるニュースから:

中越沖地震:原発運転再開は白紙 所長、年頭会見で強調 /新潟
1月11日11時1分配信 毎日新聞 (Yahoo!)


 東京電力柏崎刈羽原発の高橋明男所長は10日、年頭の会見を開き、中越沖地震後に停止している原発の運転再開について「(原発周辺の)地質調査が終わっていない段階では頭にない。今はできることを確実に一歩一歩進めていく」と計画の白紙を強調した
 東電は昨年11月に原発周辺海域の海底音波探査を終了。データが膨大なため、報告のとりまとめは当初予定の今月末から3月にずれ込む見通しだ。陸域の地質調査は3月末に終わり、分析に3カ月以上はかかる見込みだという。
 高橋所長は「活断層の調査後、(耐震設計の基礎となる)基準地震動を設定し、どういう耐震補強が必要か分からないと、その後の工程はつかみにくい」と説明。運転再開の議論が本格化するのは地質調査の結果が出る夏以降になりそうだ
 一方、6、7号機で制御棒が一時抜けなくなった問題について、東電は同日、運転停止により異物混入防止のため駆動機構内に流す水が止まったことで、金属のさびがたまりやすくなったためとする報告を公表した。原子炉に挿入する機能には「問題がない」としている。【前谷宏】

1月11日朝刊
最終更新:1月11日11時1分

こうした明確なコメントが出されたこと自体には、ひとまず「評価」(電力供給の受益者であり、そのことによる原発押し付けの間接的な加害者として)をしたいとは思います。


また、これまでに、重要な情報が「内輪」(電力会社のみを意味しません)に温存され、今回の柏崎刈羽原発被災の後も繰り返されたという企業体質の発露を見てきた以上、ここでやはり翻意して、「なんとしても」再稼動に向けた動きが水面下で取られることはないかも念頭に置きながら動向を見ていきたいと考えます。


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次に、■2 保安院に提出された東電による床応答スペクトルその他解析結果の一部公開(1/11)を見てみます。

新潟日報 柏崎原発の一部設備解析公表

 東京電力は11日、柏崎刈羽原発の原子炉建屋内にある設備や機器類が、中越沖地震の地震動でどのような力を受けたのかを解析した結果、地震の力が加わっても変形はするが破壊までには至らない弾性範囲内の数値だったと発表した。

 解析したのは、代表号機として選んだ1、7号機の耐震重要度が最も高い圧力容器や残留熱除去系配管など六カ所。地震の観測記録などを基に、設計時よりも詳細な条件を設定し、コンピューターでシミュレーションした。

 いずれも、力が加わっても元の姿に戻る弾性範囲を維持できるとしたが、その中で最も厳しい結果が出たのは1号機主蒸気系配管。許容値の1平方ミリメートル当たり310ニュートンに対し、290ニュートンだった。原子炉建屋も解析上は弾性範囲に収まった。

 東電は今回の解析で弾性範囲だった部分の詳細点検について、「原則的には不要と考えるが、場合によっては点検、検証することはあり得る」としている。

新潟日報2008年1月11日


日経 柏崎原発1・7号機「主要設備、影響なし」・中越沖地震で東電が解析
 東京電力は11日、柏崎刈羽原子力発電所1、7号機について、新潟県中越沖地震の揺れで原子炉圧力容器などの主要設備にかかった力は許容範囲内で影響はなかったとする解析結果をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院の作業部会に報告した。1号機は想定の2.5倍と同原発で最も強い揺れに見舞われていた。

 東電は「設計上の余裕が大きかったため、設備の許容範囲におさまった」と説明している。

 東電は地震による柏崎刈羽原発への影響を、目視や超音波による点検と並行して、目に見えないゆがみなどが生じていないかを解析調査してきた。(11日 21:01)


東電のプレスリリース欄 で、解析結果の一部が1/11付として下記タイトルで報告されています。


「「総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会第9回構造ワーキンググループ、中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会運営管理・設備健全性評価ワーキンググループ第3回設備健全性評価サブワーキンググループ合同会合」における当社説明資料の配布について」

http://www.tepco.co.jp/cc/direct/080111-j.html


開示情報の一部、こちらのPDFデータ(http://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/080111a.pdf )のp.2にあるように、建屋の振動解析に冠する、「初期調査の結果報告」、という位置づけです。


また、今回の限られた検証での結果に、「きわめてぎりぎりの結果オーライ」が含まれており、弾性変形か塑性変形かについては、今後の検討の余地もあると表明されているのにもかかわらず(新潟日報での言及: また具体的には報告資料のhttp://www.tepco.co.jp/cc/direct/images/080111b.pdf のp.20に該当)、特に日経その他では、発電プラント全体の安全性確認が取れたかのような印象を与えるように受け取れます。


これは、メディアの、データを読み解く力の投入不足なのか、ほかの事情があるのか、なぜでしょう?


開示データの細かい点では、床応答スペクトルの実測値との解析の比較がなされていますが、ほぼ全ての床応答スペクトルで解析のほうが高い値(激しい揺れ)を示していることも、気がかりといえば気がかりです。


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次に、■3 政府地震調査委員会の断層評価結果の報告(1/11)に関してです。


まず、活断層の傾斜面と立地条件について、「震度6強が原発を襲った」の図が理解しやすいものと思います。


(クリックで拡大)
活断層面と地形(「震度6強が原発を襲った」から)

(※)断層傾斜面が北西であると、原子力発電所直下(「近い」)と見なしているとまずは捉えていただきたいと思います。


断層評価には紆余曲折があり、報道のほとんどが南東面が証明されたことを「事実」というニュアンスで伝えていますが、どうも依然事は単純ではないようです。


(1)南東面を強調した例:

日経 中越沖地震、断層が原発から遠めか・調査委結論へ
 政府の地震調査委員会(委員長・阿部勝征東京大学名誉教授)は11日に定例会議を開き、新潟県中越沖地震を起こした原因断層の傾きについて結論を出す。海底に設置した地震計のデータや海底断層の調査から、海側から陸側に深く傾いた「南東傾斜」の断層が地震を起こしたと判断する見通し。東京電力の柏崎刈羽原子力発電所寄りの傾きではないことから、原発近くまで断層が迫っているなどの懸念はなくなりそうだ。

 中越沖地震の原因断層が、陸から日本海に向かって深くなる「北西傾斜」なのか、陸側が深い「南東傾斜」なのかは昨年7月の地震発生から半年近く特定できていなかった。原因断層が地震計を設置していない海底にあり、さらにこの地域の地質が複雑だったためだ。昨年8月に東京大学などが中心になって設置した海底地震計の余震記録や産業技術総合研究所による海底活断層の調査の結果がこのほどまとまり、南東傾斜との見方が強まった。(07:00)



読売 中越沖地震断層、傾きは「陸向き南東下がり」で決着
 昨年7月に起きた新潟県中越沖地震を起こした断層の傾きは、主に南東(陸側)に向かって下がっていることが、東京大学地震研究所や産業技術総合研究所など複数の研究機関の解析でわかった

 断層の傾きをめぐって、専門家の間でも見解が二転三転していたが、発生から約半年たち、ようやく正体がはっきりとした。11日の国の地震調査委員会で報告される。

 東大は、地震後に設置した海底地震計の余震記録を分析。産総研は船で海底の地下構造を調べ、震源域西隣の海底下にたわんだ地質構造を見つけた。いずれも、断層は主に南東傾斜であることを示すという

 南東傾斜の断層の延長上にある海底では、東京電力が過去に断層を見つけており、産総研活断層研究センターは「この断層が動いて、中越沖地震が起きた可能性が高い。東電が、海底の地質構造から断層の傾斜を推定していれば、中越沖地震と同規模の地震を予測できたはずだ」としている。

 地震調査委は地震直後に「震源断層は南東傾斜」とする見解をいったんまとめたが、北西傾斜を示すデータもあり、その見解を3週間後に取り下げるなど、専門家の間でも意見が分かれていた。

(2008年1月11日9時45分 読売新聞)

(2)北西傾斜面と南東傾斜面の共存を示し、主従つけがたいというコメントも報道されています。どうも単純ではないと理解しているのはこちらの時事ドットコムの見解です。

時事ドットコム 2008/01/11-22:07

2つの逆断層が活動=一方は原発の地下深くまで?-中越沖地震、政府調査委
 政府の地震調査委員会は11日、昨年7月の新潟県中越沖地震は、大局的には海から陸に向けて下がる南東傾斜の逆断層(長さ27キロ)によって発生したが、震源域の北東部では反対に陸から海に下がる北西傾斜の逆断層(同8~10キロ)も活動したとの評価をまとめた。東大地震研究所が観測した余震分布、産業技術総合研究所が行った地質構造探査、国土地理院が推定した断層モデルなどの報告を受け、判断した。
 V字形になる両断層の動きの前後関係については、委員会としての評価はまとめなかったが、阿部勝征委員長(東大名誉教授)は記者会見で「ほぼ同時に壊れてもおかしくない」と述べ、本震の震源がどちらの断層にあるかも「一見、北西(傾斜の断層)に見えるが、どちらであっても大きく変わらない」との考えを示した

この内容(本質を十分に抽出しているかはまだ知りようがないですが)からは、少なくとも短文の中でも十分に伝えられることがあることが分かります。


(1)の南東面での決着を伝えたものと、著しく大きな温度差があります。


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■4 経産省保安院の柏崎市の方々に議事録「廃棄」の件で謝罪(1/12)

について:

東京新聞(共同) 柏崎で説明会、住民に陳謝 経産省原子力安全・保安院
2008年1月12日 19時00分

 新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発がある同県柏崎市で、経済産業省の原子力安全・保安院が12日、地震後初めてとなる説明会を開き、薦田康久院長が、昨年12月に発覚した活断層非公表問題や、発生直後の一連のトラブルなどについて「あらためて深くおわび申し上げます」と陳謝した。

 説明会には住民約300人が参加。保安院の加藤重治審議官らが、専門家による委員会で実施している原発の耐震安全性評価について説明。住民からは「地震が来る前から、これくらいのことは検討しておいてほしかった」などの意見が出た。

 説明会に先立ち、反原発の市民団体が、保安院の川原修司耐震安全審査室長らを、原発敷地内で地殻変動の疑いがあるとされる場所に案内。「東電のデータをうのみにせず、国などの第三者機関が主体的に調査すべきだ」と申し入れた。

(共同)

NHK 原発被害の情報提供遅れ謝罪
去年7月の新潟県中越沖地震で被害やトラブルが相次いだ柏崎刈羽原子力発電所について原子力安全・保安院が地元住民への初めての説明会を開き、情報の提供が遅れたことなどについて謝罪しました。柏崎刈羽原子力発電所では被害状況の確認作業が続けられていて、地震から半年近くたっても7基ある原子炉はいずれも運転再開のめどがたっていません。

(1月12日 19時20分)

東電のデータを鵜呑みにすることは保安院としてあってはならないことですが、連携状況を見るにまったく懸念が払拭できません。


同じことは原子力委員会についても言えます。


『柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会』
Group of Concerned Scientists and Engineers Calling for the Closure of the Kashiwazaki-Kariwa Nuclear Power Plant


のエントリー、08/1/1『今年は大きな勝負の年 』に、原子力委員会への公開質問状に対する回答を示した部分があります。

原子力委員会からの回答該当箇所を挙げます。


「原子力安全 意見・質問箱」に寄せられた御意見・御質問とその回答2007年12月20日 原子力安全委員会
http://www.nsc.go.jp/toi/071101-071130.htm
整理番号07年-12

「納得できるものではありませんが」と上掲のエントリーに書かれているように、たしかに、具体的な質問に対して出された回答には、定義に対してのポリシーや、「・・・検討が適切に行われ、また必要に応じ、適切な補強等の措置が講じられ・・・十分な支持性能を持つ」という官僚用語が返されています。


耐震偽装でも薬害問題でも常につきまとっていた、自己無誤謬性を示す態度がここでも現れているように感じられてなりません。


◆参考情報1

07/9/26弊社ブログエントリー:

甘利経産相続投にあたり、原子力ルネサンスについてまとめます(郵政の資金も原資とされる?) 』アップした図(作成は07/9月時点)を再掲します。


(クリックで拡大)

070925原子力ルネサンスの周辺

◆参考情報2

中日新聞 疑問解消で原発容認も IAEA事務局長がイラン首脳と会談

2008年1月13日 朝刊


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UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA

引き続き、柏崎刈羽原発停止への署名↑をお願いいたします。

被災された方々の不安と風説被害に心よりお見舞い申し上げます。

「運転再開は白紙」と所長が年頭会見で強調されたそうですが、動向を見守りたいと思います。

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