先日来、書こうと思っていた「原子力ルネサンス 」の背景が、雑誌にまとめられていたので、収集してあった情報とともに現状と背景を紹介します。

「原子力ルネサンス」とは

日経BPnet 時代を読む新語辞典 「原子力ルネサンス」 より)


欧米で原子力発電所の再評価が進んでいる。米国をはじめとする国々が、凍結していた原発の建設を再開しているのだ。この状況を、原子力産業や原子力政策の関係者は「原子力ルネサンス」と呼ぶ。この背景には、地球温暖化への現実的な解法として原発の利用が選択肢に上がってきたことがある。また、価格高騰リスクを抱える石油エネルギーから、何とかして脱却したいという意向もある。いっぽう、原発の利用についての国際的なコンセンサス(合意)は出来上がっていない。原発見直しの傾向を「ルネサンス(再生)」と呼ぶことに冷ややかな目を向ける人もいる。

(略)

まず始めにお断りしておくのは、以下に登場する日本の巨大企業にはわたしの友人・知人、さらには親族までもが勤務しており、またそうした背景はなくとも、企業で働く人に対してなんら差別的な思いを発露するものではありません。


むしろ、原発誘致が地域の生き残りをかけようとする選択である場合ことから示唆されるような、究極の選択という状況もあるでしょう。

となれば、これも一人の市民で抗うことの難しい、国内行政・国際行政・さらには巨大コングロマリットの支配しようとするエネルギー戦略の問題、として捉えるべきものです。


~~~

まずは、原子力ルネサンスについて、業界3大勢力とその周辺の関係を作図していたのですが(ちょっとした別の事情があって)、先日たまたま読んだ雑誌"WEDGE" 07/10月号の『三菱重工は東芝の軍門に降るか 原子力ビジネス新局面 国家レベルの事業で失う主導的立場 仲介に動く経産省 』で整理されている情報を追記しました。


【クリックで拡大・・・しないと読めませんね。

 *間違いがあればお知らせください。

 なお経産省周辺・ブッシュ周辺は取り巻く情報が多すぎ、一部のみ示しました】


070925原子力ルネサンスの周辺


さらには(どうも口実が多いですが)、正直なところ、雑誌WEDGEをたまに手に取るたび毎回「市場原理主義的」な論調に辟易とするのですが、今回のこの記事は、原子力ルネサンスを推し進める産業側・中央省庁側の立場からながらも事態を詳細にまとめあげていて、理解しやすいものになっています。


それでは、時系列+記事の流れにもならって、原子力ルネサンスの一面から見た概略を記載します。


~~~

まず、英国原子燃料公社(BNFL)加圧水型原子炉 の寡占企業であったウェスティングハウス (WH)の原子力部門を売却に出したのですが、そこでの各社の参入による買収競争の結果、最終的には東芝が当初予測価格の3倍近い54億ドルで落札したことから、本格的な原子力産業の業界再編が始まりました。


◆原発業界再編に関する参考記事:

  asahi.com 2005年12月23日

  原発の業界地図、激変か 三菱重、東芝参加へ 米ウェスチングハウス最終入札


東芝(T社)はこれで、従来の自社開発してきた沸騰水型軽水炉(BWR) に加えて、加圧水型軽水炉(PWR)の技術を手に入れたることとなりました。


ただし加圧水型軽水炉に関しては、三菱重工(M社)がWHから、技術永久使用権を取得しているなどの経緯もあり、当然ながら穏やかではありません。


生き残りをかけて、M社はフランスの大手アレバとの提携 を図りますが、アレバは原子力プラントの設計維持だけでなく、ウラン採掘~使用済み核燃料再利用も含めた核燃料サイクルの全範囲をビジネス領域としているため、提携を深めれば、事業全体が飲み込まれる懸念もあり、提携には及び腰です。


それでも、2種の技術を持ち合わせる「T社・WH社」連合と、ネームバリューの高い「日立(H社)・GE」統合に比べて、M社は、国内原子力設備の受注が鈍っている中、技術力を維持・向上させ、海外展開を図ることを迫られているという危機感を持っています。


【クリックで拡大:世界の原子力発電プラントの需要見通し】
0710WEDGEより原発需要見通し
 (経済産業省資料をWEDGEが掲載したもの)


一方で、T社は国策に沿って、甘利大臣が率いた経済産業省の07年4月のカザフスタン訪問 に同行し、現地企業からのWHへの出資受入やウラン採掘権を手に入れ、日本企業として初の総合的な原子力産業への先鞭をつけようとしています。


そのような先行きを持つサイドにも弱点はあります。T社・WH連合は、原子力プラント製造に必須の基幹部品技術が不足しています。しかし、なぜか(というか当然でしょうか)、実績と能力のある前出のM社に委ねず、他社に協力を得ようとし、さらに海外にも調達先を求めています。

とくに微細な配管の加工や組み立てが必要な蒸気発生器の製造にはかなりの熟練度が必要とされ、体制準備にも時間がかかる」(WEDGEによる)にも関わらず、です。

記事中では、この事態に至った経緯を、T社とM社のトップの「感情的なもつれ以外に考えられない」とし、「水面下で経産省を中心とした両者の手打ちを模索する動きが出始めている」と書いています。


けれども、トップの感情的なもつれ、という私怨だけに押し付けるのはさすがに浪花節的過ぎるとわたしは考えます。原子力開発が、尋常ではない巨額投資と巨額のリターンを見越した(さらに政治的な立場も築くことのできる性質の)ビジネスである以上、競合に対しての過剰な警戒に出ることは、企業の論理としてきわめてありがちな行動だということもひとつの理由です。


上に挙げた、経済産業省の「水面下で両社の手打ちを模索する動き」につながるものとして、H社が事実上GEの「軍門に下った」中、このままT社、M社が「原発ビジネスでいがみあうと国益を損なう」(経産省関係者)という判断のもとで、08年から7年間総額600億円を投ずる国家プロジェクト「日本型次世代軽水炉」(BWR、PWR各1台開発)での協力体制も仰ぎ、原子力開発における、「オールジャパン体制」を敷こうとしています


この件については、産業振興目的に留まらないさらなる経産省や企業側の思惑などがあることは疑いの余地がありませんが、両大企業の「歴史的和解」(雑誌記事本文より)を経てもなお、「原子力ルネサンス」に内在する、


 ・シンプルに技術的な危機

 (基幹部品の調達が真に技術力だけでは決められないという事実)

 ・国家利権・核燃料サイクルを抑えることの実質の意義


など、最も重要な事実関係があることは、記事には一切書かれていません。


~~~

先のエントリー にゴンベイさんから頂いた、コメント:

■こんな噂も

オルタナティブ通信: 郵便局=北朝鮮
http://alternativereport1.seesaa.net/article/54997634.html
> ゴールドマン・サックスはさっそく郵便局の資金で、中国に今後10年以上をかけて500基を越える原子力発電所を建設する事を決定した。建設を担う企業の代表は、世界最大の原子力発電所メーカー、ベクテル等である。ベクテルはもちろんブッシュの企業である。

という情報などを考え合わせれば、原子力ルネサンスという、美しい呪文による産業振興の原資がどこから来るのか、という疑いや、また、なぜ甘利大臣の福田Jr.内閣で続投が可能になったか(参考弊ブログエントリー: 07/9/1 『甘利経産相の原発ウルトラポジティブシンキング 』)ということにまでも憶測はつながります。


◆さらに参考:

朝日新聞新潟版の「原発震災」の記事は、以下ページに一覧があります。

http://mytown.asahi.com/niigata/newslist.php?d_id=1600030


現場で決して安全な停止がなされたわけでないことは長い連載からよく理解できますが、最終回の、電力逼迫に関しては、まだ語られていない真実があるように思います。


~~~

UNPLUG KASHIWAZAKI-KARIWA

引き続き、柏崎刈羽原発停止への署名↑をお願いいたします。


お願い-クマノミとサンゴを守るために!!!-

リーフチェッカー’さめ’の日記 』さん↑へのリンク

辺野古アセスへの意見書は9/27締め切りです!


ブログランキング

(よろしければクリックをお願いいたします。ランキング:ニュース全般)

---

トラックバックピープル「自民党」 に参加しています。

トラックバックピープル「野党共闘」 に参加しています。

トラックバックピープル「郵政民営化法案の凍結」 」に参加しています。

News for the People in Japanリンク集 に登録していただいています。