美容教と健康教(2) | この国のタブー

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素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

※すみません、一旦投稿後、記事を誤って消してしまいました。前半はかなり原稿が残っていましたが、後半は記憶を頼りに復元しました。ので、表現がだいぶ変わってしまいました。何卒ご容赦下さい。


 続編ですので、前回の投稿はこちらをご覧ください。
 →美容教と健康教(1)





梅雨で蒸し暑い日が続きますね。(そこデブとか言わない!)

年中暑がりの私ですが、こんな季節でも朝の起き抜けに1杯のホットコーヒーは欠かしません。これが無いと何だか元気が出ず、便通も悪い気がします。冷房と睡眠によって低下した代謝を復活させると言うか、そんなイメージです。


一方の妻ですが、毎朝起きると最初に必ず、某有名栄養ドリンクを1本飲み干します。彼女曰く、これが無いとスイッチが入らないのだそうで。

確かに彼女は、これを飲んで15分もするとエンジン全開で動き出します。洗濯機のスイッチを入れ、ガーッと掃除機をかけ始めます。娘を起こして幼稚園の支度をする傍らでは、朝食と弁当を作り出します。
彼女が一日の中で最も活発に活動するのがこの時間帯です。寝ぼけ眼の私には、その動きが早すぎて追い切れず、残像しか見えていません。


さて、昨日投稿した新たなシリーズ、前回は食べ物に関する危険性について述べました。そして続く第2段は、健康と栄養に関するあれこれです。ただし後半は少しグロいので、苦手な方はご注意ください。



【栄養ドリンクはなぜ効くのか】

チ○ビタ、リゲ○ン、リボ○タン。これらはコンビニでも売っている、「タウリン」を主成分とした指定医薬部外品の栄養ドリンク剤です。
タウリンとはアミノ酸によって構成される分子で、動物の胆汁から抽出される成分の事です。細胞を正常状態に保つ作用があり、血圧を下げたり血中コレステロールの上昇を抑制したりします。また色々な臓器の活動を助けますが、特に肝機能を高めることで知られています。主に、貝類やイカ・タコなどに多く含まれるので、これらが不足している方には特に有効です。と厚生労働省も言っています。
 参考:厚生労働省 メタボリック症候群が気になる方のための健康情報サイト「タウリン」

なるほど。ってあれ?なんかおかしいですよね?
僅か15分で内臓に作用して元気になるって、少し早すぎる気がします。ましてや、血圧を下げてしまったら元気に動けるはずもありません。つまり、これにはカラクリが有ります。

まず栄養ドリンクには、アルコールとカフェインと大量の糖が含まれます。アルコールは血管を拡張して体温上昇させますし、カフェインは精神賦活作用と心拍数の増加を促します。中でも糖は強烈で、ブドウ糖は脳が必要とする唯一の栄養源ですし、果糖は素早く吸収して血糖値を上昇し、運動エネルギーとなるグリコーゲンの元となります。さらに果糖は、筋肉疲労の原因物質であるL-乳酸を除去するので、疲労回復にも繋がります。
 参考:ビジネスジャーナル(2012.09.13)「カフェインもタウリンも効果なし? ユンケルは飲むだけ無駄!?」

つまり、栄養ドリンクを飲むと元気が出るのは、これらの作用によるものというわけですね。お陰さまで、妻はもう少しで瞬間移動ができそうです。

「タウリンは意味ないじゃないか!」とか「コーヒーかコーラで十分じゃん!」などと言ってはいけません。タブーですので。



【健康食品は科学ではない】

コエンザイム、白金ナノコロイド、コラーゲン、ヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン、ローヤルゼリー、プロポリス、酵素、水素、酸素、炭素、などなど。美容や健康を謳った健康食品の数は半端ではありません。
これら商品はどれも薬ではなく食品ですが、一見科学的に見える(或いは意図的にそう見せている)ことから、「ニセ科学」とか「疑似科学」と呼ばれます。科学的に有効性が立証されていないばかりか、中には効果が相当疑わしいものも多く含まれます。
 参考:Wikipedia記事「疑似科学」

例えばコラーゲンを考えてみましょう。
コラーゲンとはタンパク質のひとつで、ゼラチンの主成分です。にもかかわらず、その価格を見るとビックリします。娘のお気に入り「ゼリーの元」とはえらい違いです。
コラーゲンは細胞と細胞の間を支えるクッションですので、不足すると肌のたるみやしわといった老化原因となります。しかしタンパク質は、腸でアミノ酸に分解しなければ吸収することができません。したがって、コラーゲンを食べてもそれがそのまま体に浸透することは、科学的に有り得ないのです。
 参考:新庄徳洲会病院院長コラム「Vol.38 コラーゲンは食べても塗ってもお肌は若返りません!」



【時には科学も否定する】

それと全く同じ理由で、コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸を食べても関節痛が緩和されることはありません。ひょっとして万が一、消化吸収以外の作用があるのかも知れませんが、それは今のところ全く立証されていないというのが真実です。

もっとすごいのは次に掲載するリンク先です。ネットで健康食品を調べていたら、あるサイトのランキング1位は「有機ゲルマニウム」でした。何の1位かはよくわかりませんが。
このサイトには、「体内に酸素を運び悪玉の水素イオン(H+)を排除する。」と書かれています。って絶対おかしいですこれ。だって、活性酸素を排除するために水素イオンが注目されてるんですよ。しかも思いっきり「効能」って書いてあるし。わかってやっているのか、それとも馬鹿なのかわかりませんが、薬事法違反です。
 参考:ゲルマニウム普及会「効能・効果」

すごいです。すごすぎて言葉もありません。



【マイナスイオン詐欺】

人間は、健康や美容という言葉にとても弱い生き物ですね。これを謳い文句にして、世の中では様々な嘘や詐欺が横行しています。しかもそれは食品だけでもありません。日本を代表する超一流家電メーカーさえも、その一派です。

10年ほど前、「マイナスイオン」というものが流行しました。私の家でも、エアコンやヘアドライヤーなどに搭載済みです。
しかしこれ、既に科学的には何の効用もない事がほぼ確実視されています。マイナスイオンは空気をきれいにしないし、殺菌もしませんでした。人体の抗酸化作用など全くありません。というか、マイナスイオンがそもそも何の物質を指しているのか、実は一度も証明されていないのです。
 参考:Wikipedia記事「マイナスイオン」

しかし家電メーカーは、これら製品を回収するとは絶対に言いません。人によっては、これらの商品に何十万円も投じたケースも有るでしょう。これは詐欺行為です。もういい加減、どなたか集団訴訟でも起こしてくれないかと思います。



【イオンではなく有害物質オゾン】

ではなぜ効用が謳われたのでしょう。実はイオン発生器の一部は、副産物としてオゾンを生み出すのです。オゾンは酸素原子が3つ連なった物質で、通常の空気中にも微量に含まれています。濃度が余程高くならない限り健康に影響はありませんが、それでも毒性があります。実はこれが殺菌効果をもたらしていたことがわかってきました。
 参考:Wikipedia記事「オゾン」

都合が悪くなったメーカーは近年、「プラズマクラスターイオン」や「ナノイー」といった新たな製品を発売するようになりましたが、つい最近の研究でこの効果も否定されました。こちらでもオゾンが影響をもたらしていたそうです。
 参考:日経新聞電子版(2012/12/20)「殺菌効果ほとんどない? 空気清浄機「粒子」に関する論文 」



【電気と磁気は見えない誤解】

イオンとは電荷のことです。健康や美容を謳った商品で、電気や磁気と言った見えない力が出てきたら、まずは眉唾だと思って下さい。これは常套句です。

プロスポーツ選手によって広められた「ファイテン」ですが、その製法や効能は謎だらけです。「アクアチタン」なる技術によって「心身を本来のリラックス状態へとサポート」するんだそうですが、そもそもアクアチタンという加工法が謎だらけで科学的根拠に乏しいと指摘されています。またリラックス効果については、Wikiによれば「生体電流を整える」と謳っていたそうなので、表現が変わったのでしょうか。いずれも科学的根拠はありません。
 参考:ファイテンwebサイト「よくある質問」

この手の商法はいつも、電気や磁気といった目に見えず高度な物理学的説明を持ち出します。また、「アクアチタン」などの解読不明な造語をつくっては、消費者を惑わせます。



【ヒト由来プラセンタ】

ところで、ここ数カ月で私が最も注目している健康商品が、プラセンタです。ただ、以下は少しグロい内容ですのでご注意ください。


プラセンタとは胎盤エキスのことですが、最近のサプリメントには結構含有されていますよね。しかしこれらはどれも、動物由来の胎盤エキスに過ぎません。問題はヒト由来の胎盤エキス、つまり人体の一部が人の美容や健康目的に使われていることです。

数か月前、妻の友人がヒト由来のプラセンタ製剤を美容目的で注射したと話してくれました。正直、そんなものが一般的にあることを知りませんでしたので、とても驚きました。だって、人間の体の一部を人間に注射したんです。しかも血液のような単純なものでは無く、胎盤の成分をです。ということで、しばらく調べました。

最初に分かったことは、プラセンタは医療目的外の使用が薬事法で禁じられていることです。しかしどうやら、それを美容目的で注射したり経口摂取している人達が、実際には少なからず居ることもわかりました。目的は、アンチエイジングだそうです。



【カニバリズムとプリオン病】

人の胎盤成分を経口摂取する。つまりこれは共食い、カニバリズム、食人ですよね。羊たちが沈黙するあれです。超タブー。

とは言え、歴史を紐解けば食人は各地で行われてきました。儀式だったり健康目的だったりと様々ですが、今でも中国や韓国ではその文化が残っていますし、日本でも産後に胎盤を食べるという風習があるそうです。えー?と思うかも知れませんが、時々その手のニュースは小さく報じられてもいます。倫理的には大問題ですが、ただしそれを言うと臓器移植等にも言及しなければならないので今回は置いておきます。
 参考:中央日報(2012年05月09日)「恥ずかしい韓国、「人肉カプセル」外信も注目」

人や牛といった哺乳類など高等生物が共食いをすると、異常タンパク質「プリオン」を生み出すことがわかっています。BSE(いわゆる狂牛病)は、牛の飼料に牛の肉骨粉を入れたことで生じました。つまり胎盤の摂取には重大な疾患のリスクを生じることになるのです。
 参考:プラセンタニュース(2012-08-06)「胎盤を食べるのはチョッと待った!その裏に潜む危険なこと」

プリオンとは羊や牛の病気で知られるようになった異常タンパク質です。人間が共食いをすると、vCJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)という病気を患う可能性があります。今のところ治療法は確立されておらず、発症から1~2年で死に至る難病です。
加えてプリオンの恐ろしいところは、これが細菌でもウィルスでもないのに、発症した牛や羊を食べただけでなぜか伝染してしまうことです。いや、正確には伝染のメカニズムがわかっていないので、これが伝染と呼べるかどうかすら判明していません。
 参考:難病情報センター「プリオン病(1)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)(公費対象)」



【倫理観の欠如した違法治療】

妻の友人が注射したヒト由来プラセンタ製剤は、日本に2種類あり、どちらも本来は医療目的で認可された薬です。肝機能障害のためのラエンネックと、更年期障害のためのメルスモン。どちらも加熱等によって処理され、プリオンに対する安全性は担保されていると言っています。ただし、他の未知の病気も含めてわからないことだらけなので、一度でも摂取した人は献血することができません。
 参考:大阪府赤十字センター「ヒト胎盤(プラセンタ)由来製剤について」

これらはいずれも建前上、薬事法によって厳しく規制されています。そもそもヒト由来プラセンタ製剤の原料である胎盤は希少ですし、この薬が無いと困る人もいるのでしょう。しかしこの法律は全然守られていないようだとわかりました。
実体は、もう滅茶苦茶です。


①違法投与
美容目的での使用は薬事法で禁じられていますから、妻の友人もきっとどこかの闇医者でも探したのかと思っていましたが、実態は全く異なります。「ご近所のターミナル駅名+プラセンタ」でググってください。街の内科クリニックが美容目的を謳っています。皆さんも驚くかも知れません。

②健康保険の不正請求
下のリンクに寄れば、15年以上前から摂取していると称する人がこんな発言をしています。
「美容外科で打つと何千円もかかるのに対し、内科、皮膚科などは安いところだと500円くらいで打てるところも多いですよ。」
これは保険適用のことを指していると思われますので、医師がカルテを改ざんして不正請求が行われている証です。
 参考:Yahoo!知恵袋質問「プラセンタ注射って打つとどのような効果があるのでしょうか? 美容目的で打ちたい...」

③禁じられた経口摂取
いずれの製剤にも、アレルギーやショック症状が無い限りにおいては、投与は注射に限ると書かれています。これは薬事法が定めるルールです。しかし、次のサイトではあからさまに経口摂取できると記載しています。注射よりお手軽って訳ですが、まるで覚せい剤ですね。共食いなのに。
ちなみにこのサイト、善意の第三者を装った典型的な広告誘導のページです。つまり誘導先である美容クリニック系列の通販会社が情報発信限としか思えません。
 参考:ラエンネック紹介サイト「ラエンネックの摂取方法」

④架空請求
原料となるヒトの胎盤はどこから入手するかと言えば、産科しか有り得ません。しかし、胎盤を活用すると言われたお母さんには、一度も会ったことがありません。むしろ、胎盤は感染性廃棄物なので、「胎盤処理料」が請求されることだってあります。
お母さん本人の承諾なく裏取引が行われているとすれば、これは架空請求による詐欺行為です。
 参考:大阪府/医療廃棄物のQ&A「Q96 胞衣汚物や手術等により生じた臓器は感染性廃棄物か?」

いやー凄いですね。書いていて気持ち悪くなります。皆さんは大丈夫ですかね?読んでいて気持ち悪くはなりませんか?



【美容と健康は魔法】

非科学的で詐欺まがい。疑うことなく踊る無知な消費者。双方の倫理観の欠如。
もう美容と健康は魔法ですね。もう疑う余地がありません。そのうちきっと、空中浮遊するやつも発売されることでしょう。妻ももっと早く動けそうで何よりです。

以前の記事でも触れましたが、健康食品や関連製品が薬たり得ないのは、「プラセボ(プラシーボ効果)」以上の薬効が確認できないためです。人間の思い込みはとても強力なので、時には効用以上の結果が現れてしまうことも有ります。反対に摂取を止めると「ノセボ効果」が生じて、体を壊す人までいます。
これら製品はプラセボ以上の効果が認められないので、薬ではありません。ただ、「食品」という言葉では売れないので、「サプリメント」と呼ぶことになりました。

「このサプリ良く効くから、騙されたと思って試してみて!」
という方が時々いますが、最初から効くと信じ込んで、効用書きもじっくり読みこんだ人は、プラセボも最大限に発揮されます。でも、例えばこんな記事を書く私のような猜疑心の塊は、最初から騙されまいとして効用書きも一切読みませんから、プラセボは効きません。いや、本物の薬だって効かないことだってあるかも知れません。

ただ、全く効用が無いわけではありません。個人差もありますし、数年に渡って継続すれば絶大な効果が表れることも十分考えられます。ただ、臨床薬理治験が行われていないのでそれもわからないのです。非科学。それだけのことです。



2回も書いて疲れたので記事は以上です。
今回、このテーマを調べていてわかったことは、美容と健康をネットで調べるのは、普段の10倍の労力が必要ということです。どのサイトも、誇大、説明不足、虚偽、時には詐欺。読んでいて信頼できる情報源がほとんどありません。
そこからわかる事実はひとつです。販売する側には、倫理意識が欠如しているということです。誰もが金。少なくとも顧客の美容や健康には興味が無いみたいですよ。

今回も最後まで読んで下さり、ありがとうございました。



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美容教と健康教(3)に続く