美容教と健康教(1) | この国のタブー

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素人がタブーに挑戦します。
素人だけに、それみんな知ってるよ?ってこともあるかもしれませんが。
コメント、質問、大歓迎です。お手やわらかにお願いします。

「○○を食べる人は癌になりにくい」、「○○を食べれば血液サラサラ」。
良く見かけるキャッチフレーズですよね。

私は普段、健康・美容・エコというキーワードが含まれる情報は、ほとんど信用していません。
「癌のリスクが10倍低下する」というような見出しは、ほとんどが数字のマジックだからです。大抵は、0.01%が0.001%になるというような話です。つまり、私達の人生においてはそれほど意味がある数字ではありません。

にもかかわらず、この手口は横行しています。美容や健康に関することは本来、最新の学問を駆使してもわからないことだらけなのに、どうしてこんな話がテレビや商売で横行するのかと、いつも憤りを感じています。

ということで、新しくスタートするシリーズ記事ですが、第1弾は食べ物がテーマです。



【私達の周りは毒がいっぱい】

塩、つまり塩化ナトリウムは人間が生きていく上で欠かせませんが、致死量は成人で200~300g、子供では30g程度だそうです。下限値30gという量は大さじで約2杯、梅干し約10個ですから、本当にわずかな量です。
 参考:なんでも評点(2005年03月06日)「大さじ2杯の食塩が幼い命を奪った」

私達の生きている周りには、過剰摂取すると毒になるものが溢れています。ビタミンCは健康的なイメージですが、過剰摂取すればやはり死に至ります。
水もそうです。致死量はよくわかっていないそうですが、飲みすぎると「水中毒」になり、一日10リットルくらい飲むと死んでしまうことがあります。
 参考:Wikipedia記事「水中毒」

もちろん、食べ物だけではありません。空気にも毒物が含まれています。人間は空気中の酸素によって生きていますから、通常21%ある酸素濃度が下がってしまえば低酸素症になります。人体にとって許容される酸素濃度の下限は18%で、6%以下では数回の呼吸で意識を失い、数分の後に死亡するそうです。
しかし多過ぎるのも問題があり、60%以上の高濃度酸素を12時間吸入すると「CO2ナルコーシス」という症状に陥ったり、失明や死亡の恐れだってあります。
 参考:森の里ホームズ「酸素濃度と人体への影響」

つまり、何かが体に良いと言うのは単なるイメージに過ぎず、適量というものがあるのですが、私達はいつもそれを忘れがちです。



【野菜を食べ過ぎると死ぬ】

野菜は健康に良いイメージですが、必ずしもそうとは言い切れません。薔薇にトゲがあるように、キノコに毒があるように、私達が日常的に食べる多くの野菜にも、様々な微量の毒素が含まれています。

例えば、チンゲン菜やセロリなどの立ち野菜に多く含まれるシュウ酸は、15~30gが人間の致死量です。摂取し過ぎるとシュウ酸中毒症を引き起こし、呼吸器、循環器だけでなく、中枢神経にも影響があります。痙攣、昏睡、脳障害を引き起こし、数時間で死に至ることもあります。
実は、人参100g中のシュウ酸含有量は0.5g、ほうれん草では1gもあります。特に生で食べ過ぎると危険ですし、カレーやシチューに大量の野菜を入れたければ、一旦茹でこぼした方が良い場合も有ります。
 参考:カメの居る暮らし リクガメの飼育情報「シュウ酸について」

また、これはネットで見つけたのですが、世の中にはキャベツを大量に食べる「キャベツダイエット」とか、「キャベツ健康法」というものがあるそうですね。キャベツに含まれるビタミンUはキャベジンでも有名な栄養素ですし、イソチオシアネートという成分には抗がん作用があります。ブロッコリースプラウトで有名になった成分です。
しかし、キャベツにも100g中に0.5gのシュウ酸が含まれています。水にさらした千切りキャベツには、栄養も毒素もほとんど残っていないのでいくら食べても平気ですが、味噌をつけてバリバリ食べる場合などは、量や頻度に注意する必要があります。



【食用植物に含まれる様々な毒性】

野菜で注意すべき毒素はシュウ酸だけではありません。次は白菜です。

米国のある女性は、持病の糖尿病を改善するために、毎日大量の白菜を食べ続けたそうです。白菜に含まれるカリウムには体内の塩分を輩出する働きがありますし、タウリンはインスリンの分泌を促進しますから、ある意味では理に適った健康法です。
しかしこの女性。白菜を食べ過ぎた結果、ミロシナーゼという酵素を過剰摂取してしまったために、一時昏睡状態まで陥ったそうです。ミロシナーゼは、甲状腺ホルモンを分泌するために必要なヨウ素の吸収を阻害するため、疲労や呼吸不全を引き起こします。テレビ番組でも再現VTRが流れていたので、ご存知の方も多いかも知れません。
 参考:ナリナリドットコム(2010/05/23 13:00)「生の白菜を食べ過ぎて昏睡状態に、酵素が甲状腺機能を低下させる。」

他方、健康に良い野菜の代表格とも言うべき、ネギ、玉ねぎ、ニラ、ニンニクなどには、抗菌・抗酸化作用の強い「硫化アリル」の一種が多量に含まれています。硫化アリルは動脈硬化を抑制したり、消化を促進する有効成分ですが、多量に摂取すると胃痛や胸やけを引き起こし、歯茎が出血します。さらに過剰になると、胃腸機能障害、貧血、ビタミンB欠乏症、肝機能障害を引き起こします。だから、ラーメンにすりおろしにんにくを大量に入れたり、オニオンスライスの食べ過ぎは禁物です。
 参考:病気の症状と治療方法まとめ「にんにくを食べ過ぎた時の症状」

そして最後にはやっぱりひじきですね。昆布やわかめなどの海藻にはミネラルが多く含まれている一方、ヒ素も微量に含まれています。中でも特に含有量が高いのが、ひじきです。
乾燥ひじき100g中には11mgのヒ素が含まれますが、致死量は100~300mgと言われています。体内に入ったヒ素は、排出されるまでに何日もかかりますから、ひじきを毎日沢山食べていると蓄積し、恐らくは髪の毛が沢山生える前にヒ素中毒に陥ります。
 参考:東京都福祉保健局サイト(平成19年5月25日)「ひじきに含まれるヒ素」


要するにこれらは、至極当たり前のことですよね。栄養学も生理学も生物学もありません。適量なら健康に良いけど、食べ過ぎると健康に悪いという、誰もが経験的に知っている事実です。
にもかかわらずメディアは、ひとつひとつの有効成分だけに着目しては、○○をたくさん食べよう!と不健康な誤謬を垂れ流します。こうして垂れ流された情報は、やがて必ず一人歩きしていきますから多くの人が騙されてしまいます。



【オーガニック栽培に潜む危険】

ところで野菜と健康を考える時、いつも出てくるのが残留農薬の問題です。もちろん農薬は危険ですが、一方の無農薬有機栽培にだって危険は潜んでいるのです。

農薬とは主に、科学的に生成された殺虫剤や除草剤などのことですから、使わないに越したことは無いと一般には考えられています。しかし農薬を使わない作物は、先に書いたような毒性のある成分やアレルゲンタンパク質が増加することもわかっています。つまり植物だって生きていますから、作物自身が農薬を自家生成するのです。
 参考:社団法人日本冷凍食品協会「食品安全ハンドブック」(PDF)

一方、有機肥料だけを使って化学肥料を使わない農法も流行っていますが、これも問題が有ります。有機肥料そのものに毒性があるからです。
「牧草→家畜→堆肥→野菜」という生産サイクルは、一見とても自然なイメージがありますよね。しかし、このサイクルのどこかで生じた重金属などの有害物質は、食物連鎖によって必ず濃縮され蓄積するのです。例えば、有機肥料の元となる鶏糞や牛糞には、家畜に投与されたホルモン剤や抗生物質が残留していることがあります。また、そもそも家畜の飼料となる牧草やトウモロコシに除草剤が使われていれば、作物に農薬を与えなくても残留農薬は検出されます。遺伝子組み換え飼料の影響もあるかも知れません。
 参考:いのちのつながり ー無肥料・無農薬栽培米「なぜ無肥料栽培なのか?」

今日、オーガニック野菜は偽物も相当流通していると言われていますが、本物だったとしてもリスクはあるということです。また、オーガニック野菜は美味しいとか、栄養価が高いといった喧伝も鵜呑みにしてはいけません。野菜の種類にもよりますが、どちらも肯定派と否定派の研究結果がそれぞれあり、完全に立証された理論ではありません。
 参考:有機のがっこう『土佐自然塾』「有機野菜に関するQ&A 」




【牛乳は健康に悪い】

さて、野菜ばかり悪者にするわけにもいかないので、他の食材にも触れておきましょう。続いては乳製品です。

牛乳がアレルギーを引き起こす大きな要因になることはかなり知られていますが、近年は医学会や栄養学会でも様々な問題点が指摘されるようになりました。牛乳を沢山飲んでも骨が強くなることは無いし、中には骨折のリスクを高めるという指摘まで有るのです。さらに加えて発癌りクスも高めますので、野菜と同様に過剰摂取は良くありません。

学校給食で牛乳を飲んで育った私達は、牛乳を飲むと背が伸びると教わってきましたが、これは農水省と酪農業界が創ったイメージ戦略に基づく誤解です。
ただし、北海道開拓民の産業支援という政治的な意図をも含んだ善意の嘘ですので、酪農家を嘘つき呼ばわりするつもりはありません。統計的にも生理学的にも、身長との因果関係が否定されているということです。
 参考:生活習慣病を予防する食生活「牛乳カルシウムの真実」



【栄養学はどこまで信用できるのか】

栄養学が規定する「一日の摂取量」は、一日の代謝で消費される栄養成分から逆算された理論ですが、生理学がほとんど加味されていないため、私はこれを信用しません。

例えば、骨の形成にはカルシウムだけでなくマグネシウムや鉄分が必要ですし、コラーゲンも必要です。コラーゲンを生成するためにはビタミンCを摂取しなければなりません。またそもそも、カルシウムを吸収するためにはビタミンDが必要ですが、ビタミンDは日光浴によって皮下で生成されます。つまり、牛乳を飲んでも日焼けをしなければ背は伸びないのですが、そういう言い方をする人はまず居ませんよね。

反対に、カルシウムを摂取しないとどうなるかと言うと、人間には恒常性という働きが有るので、カルシウムは体内で生成します。骨に含まれるカルシウムが自然に少しだけ溶け出しますので、血中のカルシウム濃度はちゃんと一定に保たれるのです。栄養学が提唱する一日の摂取目安量もわずか0.6gですから、骨が溶けて脆くなることも普通には有り得ません。

こうした恒常性の働きは、他の多くの栄養素にも同じことが言えます。つまり、足らない栄養素は体がある程度まで自然に補ってくれるのです。カルシウムが少しくらい不足しても、怒りっぽくなるとか骨が弱くなると言うのは全く根拠がありません。どれもイメージです。



【善玉コレステロールは別に善くない】

時々、「肉を食べなければ力が出ない」と言う人がいますが、これは誤解です。野菜や穀物、豆類からもアミノ酸は同じように生成されますし、同じように力は出ます。牧草しか食べない牛も馬も、きちんと骨や筋肉や脂肪を蓄えますよね。ヒトだって全く同じ理屈です。

また反対に、「肉は体に悪いが、魚には善玉コレステロールが多い」と考える人がいます。血液検査では血中コレステロールを測定しますが、そこには善玉(HDL)と悪玉(LDL)の両方が記載されていますよね。この善玉コレステロールは、増やした方が健康的であると長らく信じられてきました。
しかし最新の研究では、善玉コレステロールが増えても動脈硬化や心臓の疾患を抑制する効果は確認できませんでした。つまりこれも、「善玉」という言葉が生んだイメージの一人歩きだったようです。
 参考:Yahoo!ニュース(朝日新聞デジタル 6月17日)「善玉の中に裏切り者 崩れるコレステロールの常識」

加えて、このコレステロールも肝臓が生成しますので、普通の人は肉や魚を摂取しなくても生きていけます。だから菜食主義者でも死にません。精進料理しか食べない坊さんだって、100歳まで健康に生きてます。
 参考:Wikipedia記事「コレステロール」

つまり、どの栄養がどれだけ必要かというのは、個人の体質や体調、生活環境によるところが大きく、普遍的にこれが健康に良いということは必ずしも言えません。個々の食品がどれだけ健康に影響を及ぼすのかは、生理学の複雑なステップを全て検証しなければ、本来はわからないはずです。にもかかわらず、○○が良いというイメージだけが先行し、一方のリスクについてはほとんど語られることがありません。非常にステレオタイプです。



【美容教と健康教】

さて、今回取り上げた食べ物は、私達の命を支えるものであるにもかかわらず、その本質はいつも誤って宣伝されていきます。生産者を守り、また食糧自給に寄与する目的も理解できなくはありませんが、それにしても、あまりにも演出過剰です。だから皆が誤解します。

恐らくこれはタブーです。何かをたくさん食べたからと言ってさほど健康にはならないし、病気が治るわけでもありません。美容を保てるというのもほとんどが誤解です。これら効果は決してゼロではないと思いますが、体感できる程の変化などは生じませんし、明らかな弊害だってあるのです。
健康になりたい、美容を保ちたいと願うのは人の常ですが、このメッセージや思い込みは、行き過ぎるとカルト宗教になってしまいます。しかし私は、宗教を信ずる者は救われるかも知れないけれど、健康教と美容教に救いはないと思っています。



今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。シリーズの次回テーマは美容と健康に関する商品を取り上げたいと思っています。少し黒いです。次回もどうぞよろしくお願いします。



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美容教と健康教(2)に続く