あまりにも悲しい虐待死事件、二度と起こって欲しくない | ファンドレイザー北村のブログ

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こんにちは、ファンドレイザーの北村です。

表題の通りの記事を紹介します。私事ですが、私には世界で一番可愛い甥っ子がいます。その甥っ子と、以下で取り上げられている亡くなった子どもは全く同じ年齢です。同じ国、同じ時代の子どもがこんな目に遭うことが、私は、とても悲しいです。なんとか子どもの虐待を減らしていきたいと、改めて思いました。ご参考ください。


◆平成24(2012)年10月5日 毎日新聞 地方版
ひまわりが咲く日:児童虐待を追う 桜井・餓死事件/1 遺体写真、悲劇を語る /奈良
◇事件の答え求め、再び現場へ

1枚の写真が悲劇をすべて語っていた。薄く張り付いたシワシワの皮膚。ほお骨、あばら、骨盤、指、足、体中の骨がくっきりと浮き出ていた。10年3月に桜井市で起きた虐待事件。わずか5歳7カ月で人生を閉じた智樹君の遺体写真だ。解剖直前に撮影された。体重6・2キロ。1歳児の平均にも満たない。背中は、背骨に沿って皮膚がただれていた。床ずれだった。
「マー、マー」――。あどけない可愛い声が法廷に響いた。昨年2月の母親の裁判。生前の智樹君を撮ったビデオだった。傍聴席は音声しか聞こえない。それでも、よちよち歩きで母親に甘える姿が目に浮かぶ。映像を見た女性裁判員は、涙ぐんでいた。

◇ささいなきっかけで一変した幸せな日々
04年7月、帝王切開の難産で生まれた。初めて抱いた時、母親はとても喜んだ。近所のスーパーでばったり会った同級生に「私に似ている?主人に似ている?」とうれしそうに話していた。妹もでき6畳のワンルームマンションで両親と4人暮らし。ただ、楽しい時間は短かった。

きっかけはささいなことだった。妹の腕を誤って踏んだ。両親は07年1月、室内にある高さ約190センチのロフトで一人だけ別に生活させるように。09年4月ごろには、ケチャップをまき散らしたとして、トイレに閉じ込め、食事は1日におにぎりと水だけにとエスカレート。孫に会いたいと願う祖母の面会も断り続けた。10年2月ごろには、衰弱のため全く食事ができなくなった。風呂に入れてもらえず、服の着替えもさせてもらうことがなかった。

「子供がぐったりしている」。同年3月3日、県中央こども家庭センターに、母親から電話があった。連絡を受けた桜井市職員が自宅に駆けつけると、母親は「どうしよう、えらいことになった」と泣き叫び、すがりついてきた。布団に寝かされた智樹君は顔面そうはくで、ハァハァとかすかな息づかいが聞こえた。救急搬送されたが、栄養失調でその日に死亡した。胃や腸にはほとんど何も残っていなかった。

◇「人として許せない」 当時の捜査員は語る
「『かたきをとってやるからな』という思いだった」。当時の県警捜査1課の捜査員は振り返る。「どれほどおなかがすいていたんだろう。児童虐待は犯罪の中でも最も悲惨。警察官の前に、親として、人として許せない」

「頭が良く、樹木のようなおおらかな子に」。そんな願いを込めて名前をつけた両親。それぞれ11年2月と3月、保護責任者遺棄致死罪で実刑判決を受け、今も服役している。同年5月、祖母は近所の1歳半の男児を抱きしめ、泣き崩れた。「智樹もこのくらいの時はよく遊んだ。智樹…」。そして、智樹君が生前遊んでいたショベルカーの玩具をあげた。
   ◇   ◇

記者は今夏、智樹君の遺体写真を初めて見た。子供の虐待死のむごさに、言葉も出なかった。死ぬ間際、智樹君の手は母親の襟元をつかんでいたという。母親が法廷で証言した、その話を忘れることができなかった。智樹君は何を思って、母親に手を伸ばしたのだろう。「ママに愛されたい」。最後の最後まで、そう思いながら死んでいったのだろうか…。せつなくて息が苦しくなる。なぜ、両親はこれほどまでの虐待をしたのか。事件発生当時から取材し、両親の裁判をすべて傍聴しても見つからなかった答え。写真がもう一度、現場に向かわせた。(この項つづく)

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◇昨年度対応、過去最多 10年で3倍に
児童虐待は年々、増加している。厚生労働省によると、全国の児童相談所が児童虐待について対応した件数は昨年度、過去最多の5万9862件(速報値)。このうち奈良県は972件で同じく過去最多。320件だった10年前に比べ約3倍に激増した。また、桜井市で餓死事件が起きた10年度の728件と比較すると、昨年度の増加率は33・5%で、過去5年間で最大となった。虐待の種類別では、身体的虐待が365件と最多。次いで心理的虐待が314件、ネグレクトが265件、性的虐待が28件だった。

◇検討会、県設置 防止策で成果も
10年3月3日、桜井市の自宅で、長男の智樹君が餓死寸前で見つかり、病院で死亡した。両親は同日、逮捕され、保護責任者遺棄致死罪に問われた。奈良地裁は、母親を「智樹君をストレスのはけ口にした。人間扱いせず、無慈悲で残酷だ」、父親を「無関心という名の虐待だ」と断罪。それぞれに懲役9年6月の判決を下し、双方とも控訴せずに確定した。この事件では、智樹君が生後10カ月以降の健康診断を未受診で、幼稚園などにも就園していなかったため、行政が虐待に気づかなかったという問題点が浮上した。県は10年3月、有識者でつくる検討会を設置して事件を検証。その提言を受けて11~13年度の「児童虐待防止アクションプラン」を策定した。

◇乳児家庭訪問や発生後ケア充実
プランは、未然防止▽早期対応▽発生後の対応▽体制整備を柱とし、乳児家庭の全戸訪問の実施や、虐待を受けた子供やその兄弟へのケアの充実など、それぞれの課題と具体的な取り組みを盛り込んだ。このうち、健診未受診児がいる家庭への訪問は、10年度が約36%だったのに対し、11年度は約89%まで改善するなどの成果を上げている。


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