陰陽五行から見た体質分類、半夏瀉心湯の配合法、高脂血症の漢方治療 | 富士堂(漢方薬局・はり灸マッサージ治療院) ブログ

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中国南京中医薬大学出身の中医師・順天堂大学医学博士である代表の許志泉が創立した富士堂東洋医学研究所(富士堂漢方薬局飯田橋本店・渋谷店;富士堂針灸マッサージ治療院)のブログです。

陰陽五行から見た体質分類、半夏瀉心湯の配合法、高脂血症の漢方治療
研修薬剤師 松本

**このレポートは富士堂漢方薬局で研修する薬剤師が研修会でまとめたものです。

1.「黄帝内経」の陰陽二十五人分類

 人の形体、皮膚の色、認識能力、感情による反映、意志の強弱、性格の静と燥、季節と気候に対する適応能力などの方面の違いに基づいて、体質を木、火、土、金、水の五つのパターンに分け、また経絡、気、血が頭、顔、手足に反映される生理の特徴に基づいて、さらにすべてのパターンを5つに分けた。これが「陰陽二十五人分類」である。
 この木、火、土、金、水は中国の東西南北中にあてはめて考えられる。中国の東部は木、南部は火、西部は金、北部は水、中央は土となる。

 木形の人:顔は青白い。頭が小さい。顔面が長い。肩幅が大きく、手足は小さい。神経質で疲れやすい。気滞。寒熱往来(悪寒と熱とが互いに交代する状態)。柴胡が効果的。
 火形の人:顔は赤みがかっている。頭は小さい。肉付きはよい。性格はせっかちで肩を揺り動かしながら動く。信用がない。 黄連、黄芩、連翹が効果的。
 水形の人:顔の色は黒っぽい。顔の彫りが深く、頭が大きく、顎が角張っている。肩が小さく、腹は大きい。いつも手足を動かしている。長身である。性格としては年長者を敬う心なく、よく人を欺く。 むくみやすく、目の下のくまができやすい。附子、茯苓が効果的。
 土形の人:顔は黄色っぽい。顔面が丸く、頭が大きい。肩から背にかけての線が美しい。腹が大きく、足も肉付きがよい。性格は心が安定していておおらかで他人に親切である。権力を好まない。よく人の意見を聞く。人参、黄耆、半夏が効果的。
 金形の人:顔が白い。顔が角張り、顔や肩背が小さい。腹、手足ともに小さい。骨格も小さい。性格としては清潔好きで正義感が強い。牡蛎、石膏が効果的。
  
 利水剤には茯苓、黄耆、防已などがあるが上の例で茯苓は水形の人に効果的で、黄耆は土形の人が効果的とある。これはイライラ感などがある場合には茯苓、穏やかな場合は黄耆や防已をと使い分けることにある。


2.半夏瀉心湯の配合法 

 半夏瀉心湯:半夏6.0、黄ゴン3.0、大棗3.0、人参3.0、甘草2.5、乾姜1.5、黄連1.5
  
 「苦寒の黄連・黄芩で上熱を冷まし、辛熱の乾姜で下寒を温散する。和胃
降逆の半夏で胃気を和降し補益剤の人参・甘草・大棗で脾を強める」

 四気・五味
人間が感じる事のできる「味」を体への働き方によって五つの味に分けることができる。これは「甘、  辛、苦、酸、鹹」の五つで「五味」という。
 酸(酸っぱい。収斂作用あり。肝臓・胆嚢・目によい)
 苦(苦い。消炎作用あり。心臓によい)
 甘(甘い。滋養作用あり。脾臓・胃によい)
 辛(辛い。発散作用あり。肺・鼻・大腸によい)
 鹹(しおからい。柔和作用あり。腎臓・膀胱・耳などによい)

 また、性質によって「寒、熱、温、涼」の四種類に分けられこれを「四気」という。
 寒(体を冷やす。のぼせや高血圧によい)
 熱(体を温める。貧血や冷え症によい)
 温(熱と同じ作用だが、熱より弱い)
 涼(寒と同じだが、寒より弱い)
 *その他に寒でも熱でもない「平」の性質もある。

 これより、苦寒の黄連、黄ゴンが上部の熱を冷まし、辛熱の乾姜が下部を温め発散するということがわかる。

 和胃降逆:胃の機能が失調し、気が下降できず嘔吐や吐き気、胃痛が起こったときの治療法。

3.漢方による高脂血症治療

 高脂血症という病気は中医学では「痰湿」「瘀血」の範疇に属する。「痰湿」とは体内に余分な水分が溜まり、血漿中のコレステロールや中性脂肪が高い状態である。つまり血管の内壁に粥状のドロドロした血脂が沈着し、その結果血液の流れが悪くなったり滞ってしまう(瘀血)。
その他に気虚(血液を流す原動力である気が不足、さらに不足すると陽虚となる)、陽虚(体が冷えて血の巡りが悪くなる)、陰虚(水分が不足して血液が粘って流れにくくなる)も原因となる。

 痰湿に効果的:半夏、天麻、茯苓、タクシャなど
 お血に効果的:当帰、川きゅう; 紅花、葛根など
 気虚に効果的:黄耆、ビャクジュツなど
 陰虚に効果的:地黄、山薬、山茱萸、茯苓、沢瀉、牡丹皮など
 陽虚に効果的:附子、八味丸など

 *西洋薬での高脂血症治療といえばどういう患者さんであろうとまず、コレステロール生成を抑制したり、腸管への取り込みを阻害したり、排泄を促進したりという抗コレステロール薬の服用となる。漢方治療ではその患者さんのコレステロール値の上昇がどういう体質や状態からおこっているかという観点からの治療を行う。これによっても西洋薬が対症療法であり、漢方薬が原因療法であることがわかる。