漢方医学の陰陽五行説 | 富士堂(漢方薬局・はり灸マッサージ治療院) ブログ

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中国南京中医薬大学出身の中医師・順天堂大学医学博士である代表の許志泉が創立した富士堂東洋医学研究所(富士堂漢方薬局飯田橋本店・渋谷店;富士堂針灸マッサージ治療院)のブログです。

 漢方医学の陰陽五行説
薬剤師 松本
**このレポートは富士堂漢方薬局で研修する薬剤師が研修会でまとめたものです。


 中医学は、古代中国の哲学理論である陰陽論と五行学説という二つの考え方を基本理論としています。

< 陰陽論 >
 宇宙の万物は全て陰と陽に分かれていて、お互いに対立しながらも同時に依存しあっている関係で、陰が極まればそれは陽に転じると考え、絶対的な関係ではなく相対的な関係にあると言います。

(消長と転化)

陰陽の運動変化は、上図のように季節の変化で説明されます。それは「陽気(天気)」と「陰気(地気)」の運動変化によって生じ、「消長・転化」という動きが見られます。

 「消長」は「陰陽」に見られる変化の形態の事です。冬至から夏至にかけて、「陰気」が衰え「陽気」が強くなっていき、「陰消陽長」と呼ばれます。夏至を過ぎると陰陽の変化が逆となり、夏至から冬至にかけて「陽気」が衰え「陰気」が強くなる「陽消陰長」と呼ばれる状態になります。

 「転化」は「陰陽」が一定条件下で対立する属性に変化することであす。転化が生じやすい条件とは、「物極まれば必ず反す」つまり「陰」「陽」いずれかが極まった時です。これも季節を例に取ると、夏至では「陽気」が極まり「陰気」が生じて冬に向かう。冬至ではその反対となり、「陽気」が生じて夏へと向かう。


 陰陽は相対的に調和されていてこそ(バランスを保つ)生理状態が維持できるのであり、調和が失われる(バランスが崩れる)と、病気が発生する原因となると考えられていました。陰が多すぎると陽を足す治療をして崩れたバランスを戻す=治す、と考えるのです。
 陰陽のバランスを取れた状態を「陰平陽秘(いんぺいようひ)」といいます。


< 五行説 >
 万物は、木、火、土、金、水(もく、か、ど、ごん、すい)という五つの基本物質で出来ているという考え方です。これを五行と称しました。 そして、この五つの物質で万物の相互の現象を説明します。
 これら五つの物質はいずれもどれかの生みの母であり同時に子である関係=相         
生関係 ともう一つ、お互いは奪いつつ奪われるという関係=相克関係にあると言うものです。          
 五行説とはこの五つの物質の存在と、これらの関係性(相生と相克)を説明したものです。   
 相生関係を例えれば「木が燃えれば火を生じ、火が尽きれば灰、つまり土を生じ、土の中からは金属を生じ、金属の表面には水を生じ、水は木を成長させる」という関係です。
相克関係とは土の中より養分を奪って育ち、土は水を吸収して貯め、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を割り砕く」という循環関係です。そして、五行の相生の中には相克が含まれていますし、相克の中には相生が含まれています。相生だけで相克がなければ平衡が保てず、相克があって相生がなければ万物は変化できない。
 人体の臓器も、木は肝、火は心、土は脾、金は肺、水は腎と当てはめてこれに陰陽論をミックスして五臓を陰と陽のバランスで捉えて健康状態を判断します。これが中国医学の診断の基準です。

 相生、相克関係を使った治療方法では、例えば空咳やアレルギー性の喘息などの患者さんに金(五臓では肺、つまり呼吸器系)を強くするために土(五臓では脾胃、つまり消化器系)を補う、これを培土生金法といって、土を肥やして金を生み出すという相生関係を利用した治療方法です。
また、相克関係では例えばストレスが溜まって(肝気が盛んになり過ぎた状態)胃腸の調子が悪いというとき、肝臓(木)の働きを抑えて脾臓(=胃、土)の働きを調える抑木扶土法という治療方法があります。


〈考察〉
 漢方治療において「バランス」という言葉がよく出てきますが、これはこの陰陽五行説を基本理論としているからだということが少しわかったような気がします。
 相生、相克関係は実際の治療で沢山使われているようでありますが、これが処方内容を見てわかるようになってきたら更に漢方治療の面白さ、奥深さがわかってくるのではないかと思います。