処女航海:グレッグ・フィリゲインズ | かえるの音楽堂

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089-SIGNIFICANT GAINS













SIGNIFICANT GAIN:GREG PHILLINGANES
(1981年)
  キーボード奏者グレッグ・フィリゲインズのファーストアルバムです。この人は多くのミュージシャンのアルバムに参加しているわりに、今のところ彼自身のオリジナル・アルバムはこのファースト・アルバムと、3年後に発表したセカンド・アルバム“PULSE(パルス)”含め2枚しかありません。実際この人ほど名脇役という言葉が似合う人はいません。スタジオ・ミュージシャンでも、リチャード・ティーとかエリック・ゲイルなどのような超個性を持った人ではなく、主役を立てながらサポートに徹するといったタイプです。といって全然目立たないわけでもなく、クインシー・ジョーンズの日本公演にも参加していますが(ミュージカル・ディレクターを務めていました)、ショルダー・シンセをがんがん弾いて個性も発揮していました。アクは強くないけれど実力もあり、どんなことにも順応できる器用なミュージシャンです。だからこそ多くのミュージシャンから声がかかるのでしょう。これまでサポートしたミュージシャンは、クインシー・ジョーンズ、スティービー・ワンダー、マイケル・ジャクソン、エリック・クランプトン、ポール・サイモン、ジョージ・ベンソン、マイケル・マクドナルド、ドナルド・フェイゲン、ホイットニー・ヒューストン、ライオネル・リッチー、リー・リトナー他、超大物達から真っ先に声が掛かります。大物と言われる人であれば、一度はグレッグをセッションに呼んでいるとも言われています。また後にロック・バンド“TOTO”の正式メンバーとしても活躍しました。さてこのアルバムですが日本語タイトルが「処女航海」となっていますが、ハービー・ハンコックの曲とは関係ありません。アルバムはブラコンっぽいAORかフュージョンかといった感じで、自身のヴォーカルも披露しています。もちろん、ピアノやシンセのセンスも良いです。参加ミュージシャンは交流関係の広さを表し大変豪華です。ジョージ・ベンソン、パトリース・ラッシェン、ハービー・ハンコック、マイケル・センベロ、ロニー・フォスター、ネイザン・ワッツ、ポール・ジャクソン,Jr.、ポウリーニョ・ダ・コスタ、そして我らが渡辺貞夫が参加しています。他に横倉裕もアレンジで参加しています。

1. ガール・トーク(GIRL TALK)
2. ベイビー、アイ・ドゥ・ラヴ・ユー(BABY ,I DO LOVE YOU)
3. テイキン・イット・アップ・オール・ナイト(TAKIN’IT UP ALL NIGHT)
4. フォーエヴァー・ナウ(FOREVER NOW)
5. ビッグ・マン(BIG MAN)
6. アイ・ドント・ウォント・トゥ・ビー・ザ・ワン(I DON’T WANT TO BE THE ONE)
7. マックスト・アウト(MAXXED OUT)
8. ドゥ・イット・オール・フォー・ラヴ(DO IT ALL FOR LOVE)
9. ザ・コール(THE CALL)

 1曲目「GIRL TALK」は自身のヴォーカル入りのポップな曲です。バック・ヴォーカルは、ジョージ・ベンソン、パトリース・ラッシェンなどです。そしてアルト・ソロは渡辺貞夫、ストリングス&ホーン・アレンジは横倉裕です。ギターのカッティングから始まる2曲目「BABY ,I DO LOVE YOU」もポップなミディアム・ナンバーです。途中のシンセ・ソロも好きですね。この曲はシングル・カットされ、ビルボードR&Bチャートで72位まで達しました。3曲目「TAKIN’IT UP ALL NIGHT」はホーンの使い方とかギターのカッティングとか、アースっぽくもあり。ギターはマイケル・センベロです。4曲目「FOREVER NOW」はシンセと生のストリングスが印象的なAOR的なバラードです。5曲目「BIG MAN」は一変してファンクな曲です。ギターとバック・ヴォーカルはマイケル・センベロです。6曲目「I DON’T WANT TO BE THE ONE」もAOR的なミディアム曲です。7曲目「MAXXED OUT」はグレッグとハーヴィー・ハンコックの共作で、ハーヴィーがクラヴィネットで参加しています。またロニー・フォスターがヴォコーダーを演奏しています。8曲目「DO IT ALL FOR LOVE」はコンテンポラリーなスタイルのポップな曲です。ギターはマイケル・センベロとポール・ジャクソン,Jr.(ソロ)です。9曲目「THE CALL」はポウリーニョ・ダ・コスタとのデュオで、アフリカン・サウンドの実験的な曲です。とにかく器用な人ですから最初はアルバムのイメージもごちゃまぜっぽく感じますが、改めてアルバムを通して聴いてみると、それほど散漫とした感じでもありませんでした。キーボード・プレーヤーの中には色々とソロでテクニックを見せようとする人がいますが、グレッグの場合はむしろ演奏は控えめで、サウンド・メーカーとして純粋にひとつの作品を作り上げている感じです。才能豊かな人ですし、もっと沢山のオリジナル作品を出して欲しいですね。