4月1日の思い出と言えば…。
子供の頃、こんな出来事がありました。
春休みにもかかわらず、部活で学校へ行った時の話です。
その日は朝から雨が降り続き、帰り際になっても雨は降り止まず。
そう。部活が終わり家へ帰る途中の出来事です。
学校を出た私は、止む気配のない雨を恨めしそうに見上げながら、
傘を手早く差すと、足早に正門を抜け家路を急ぎました。
時折頬を撫でる風は生温く、不快な気持ちは増すばかりです。
一刻も早く帰りたい。私の気持ちは決意にも似た頑強さに覆われ、
歩く速度を増していきました。
家路も半ばを過ぎたあたり…。
「ちょっと」
と私に向かって声をかけられた気がしましたが、
私は一刻も早く帰りたかったので、気のせいに違いないと決め込もうとしました。
するとまた…。
「ちょっと」
どうやら気のせいではないらしく、
私は嫌々ながら立ち止まりました。
声のした方に目をやると、大人と思われる男の人が立っていました。
私は男の顔を確認しようと見上げましたが、男はレインコートを着用しており、
フードを目深に被っていた為よく見えません。
私はこのまま無視して帰りたい衝動に駆られながらも、
それを何とか抑えることに成功し、返事をしました。
「なんですか?」
私の声が聞こえなかったのか、男は黙ったままです。
これで返事がなければ、無視して帰ろう。
私はもう一度聞きました。
「なんですか?」
すると男はようやく口を開きました。
「○○という家を探してるんだけど、知らない?」
男が口にした名前は、なんと私の名前です。
何の用だろう…と訝しく思う気持ちもありましたが、
子供だった私は、今日がエイプリルフールだったこともあり、
違う方向を指差し、「確かあっちの方だったと思う」
男に嘘を教えたのです。
男は軽く会釈し、
私が指差した方向へゆっくりと歩いていきました。
男の後ろ姿を確認するまでもなく、私はその場をあとにしました。
嘘を吐いたことなどなかったかのように…。
思わぬことで時間をロスした私は、更に速度を上げ家路を急ぎました。
「早く帰りたい」その一心です。
家までもう少しのところで、雨は更に激しさを増し、風も増してきました。
風雨に負けないよう、傘をしっかりと握りしめ、
少々前のめりになりながら歩いていたその時。
ドン!
不意に何かにぶつかったのです。
「なんだよ…」
そう思いながら傘を上げ、前を見た私は一瞬にして顔が引きつるのを自覚しました。
そこには、先ほど嘘の道を教えたあの男の姿が…。
私は咄嗟に危険を感じ、後ずさりしました。
男は小声で何か言っていたようですが、
風雨がそれを掻き消し、私の耳には届きません。
私は男から目を離せず、身体が硬直しているのが判ります。
その間に男がじわりじわり私との距離を縮めてきます。
近づくにつれ、私は男の右手に何か違和感を感じました。
その男の右手を見ると…。
小型の斧のようなものが握りしめられていたのです。
心に警告音が鳴り響きました。
と同時に、私は逃げようと踵を返しましたが、その刹那…。
男の斧は無惨にも振り下ろされたのです。
風雨は、激しさを増すばかり。
嘘も悲鳴も掻き消すかのように…。
4月1日の思い出と言えば、こんな感じですね。
勿論、今日も4月1日エイプリルフール。
この話も嘘ですけどね
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