筋力と重さのトレードオフについて考える② | サッカーのための筋トレと栄養(since 2010)

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まず、次のグラフをご覧ください。


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この図は筋肉増に関わるトレードオフについて、大まかなイメージを単純にグラフ化にしたものです。(改善点はまだまだ多々あると思うので、「ここをこう直した方がいい」とかアドバイスありましたら是非アドバイスお願い致します)


グラフの意味を説明すると、

横軸に[トレーニングに伴う体重増、短距離スピード、パワー(瞬発力)・力]

縦軸に[トレーニングに影響される技術、身のこなし、素早さ]

を概念的に表しています。


①(開始~3ヶ月ぐらい)
ある程度の技術はあるものとして、本格トレーニング開始後の最初の3ヶ月ぐらいは、神経系の発達によって、筋肉が増えてるわけではないけど、全身の基礎筋力が上がります。それに伴い、技術・身のこなし・素早さなどにも好影響を与えるものと考えます。相手にプレッシャーも与えられますし。


②(~3年間ぐらい)
今の自分の脂肪が何kgあるか計算してみてください。男性で体重65kgで15%なら、65×0.15=9.75kgの脂肪が体内に存在します。脳も脂肪だし、体脂肪率0%にすることは不可能で不健康ですが、例えば体脂肪率9%とか8%とかなら可能でしょう。先述の体重65kg・体脂肪率15%の男性の場合、6%減で3.9kg、7%減で4.5kgの、体重増なしに筋肉を増やせる余裕が発生します。増量期・減量期の繰り返しにより、このような状態を作っていきます。いわゆる、低体脂肪率で筋肉質のアスリート体型です。

ちなみに人間の体において、体脂肪と筋肉は全く別の組織なので、体脂肪が筋肉に変質したり、筋肉が脂肪に変質することはありません。日本語だと贅肉・筋肉というように「肉」で括られるのですが、中身は全く別々の物質です。銅と金ぐらい違う。

なので「脂肪を筋肉に変える」のではなく、「脂肪と筋肉を入れ替える」というニュアンスが妥当です。同じ体重でも、脂肪で重いのと、筋肉で重いのは、できるプレーの幅が格段に違います。


③(~それ以降)
ここまでくると、筋肉が増えるということは、もともとの体重よりも重くなるということです。重りをつけることになりますので、あまりに重くなると、慣性の法則に基づいて、横や切り替えしなどの動きが少しずつぎこちなくなる場面も出てきます。C・ロナウドぐらいまではアリかと思いますが、ラグビーのFW選手みたいな筋肉までつけるメリットは小さいと思います。

ただしサッカーの体作りの最終目的は「負けずに、勝って勝ち続けること」なので、置かれている状況の中で、負けずに勝って勝ち続けるために、どこまでの技術・身のこなし・素早さなどのロスが許容範囲なのか、筋肉増によるスピード・パワー増とのトレードオフを考える必要が出てきます。

とはいえ①②の3年間で、フィジカルのほかに、新しい技術・テクニックや視野の広がり、プレースタイルのバリエーションも身につき、3年前と比べて何段階か上のプレーが実現できるようになっていることと思います。

また技術は、フリーキックとかトラップとかスルーパスとかダイレクトプレーとか、体の重い軽いはあまり関係ないタイプの技術も色々あります。先日の松田選手の追悼試合でも、太った城選手が絶妙のボールタッチ魅せてましたし、イタリアのミッコリとかゴツイのに何この技術って感じです。


ほかにも、またボールを持ったとき、当たりにこられても負けない余裕があるのと、当たられるのはとにかく嫌だと思っているのとでは、選べるプレーの選択肢の幅が違ってきます。同じ体重でも筋肉がある方が、いろんな意味で視野が広がります。

(もし中村憲剛選手がフィジカル強くしたら最強ではないかと。。。)

立場も状況も環境も、3年前と比べて同じではない可能性もありますし、自分のポテンシャルをもっとも引き出せる方向性に沿って、自分の体作りもプランニングしていくのが妥当。


なので「考えてサッカーをする」なら、その考えの中に「計画的な肉体改造」の項目も取り込んだ方がいいのは間違いないと思います。



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