想像するちから
チンパンジーが教えてくれた人間の心 (単行本・ムック) / 松沢哲郎
¥1,995 楽天
昨日から、この本と周産期新生児学会での
講演を元に記事を書いています。
今日はチンパンジーの子育てについて書きます。
チンパンジーは寿命のある限り産み続けるそうです。
彼らの寿命は50-54歳。
5年空けての出産。人間にすると8年空けるのと同じくらい。
だからチンパンジーには年子がいないんです。
チンパンジーはワーキングシングルマザーであり、
母親だけが子供を育てます。
チンパンジーにお祖母さんはいない。お祖母さん
という役割、お母さんのお母さんとして、子供を産み
終えて孫の世話をするという役割、それを担った
年寄りの女性はいない。P34
一方、人間は伴侶、お祖母さんを発明しました。
チンパンジーのように7-8年ごとに産むとしたら一人の
人間の女性は4人程度しか子供を持てません。
長らく人間も乳幼児死亡率が高かったので、それでは
生存が危うくなってしまいます。
そのため人間は、手のかかる複数の子供を周囲の人達と
協力して育てるという方法を採用しました。
生理的なメカニズムは変えられない。妊娠期間を短くは
できない。子育てにかかる時間も短くはできない。
そうすると、早く離乳して生理周期を戻し、早く妊娠
して次の子どもをもつ。そのかわり、手のかかる子
を複数もつ、というように進化してきたのだろう。P41
なるほどー!
そしていろいろな事情で伴侶やお祖母さんが子育てに
参加できない場合は、コミュニティで育てるとか福祉制度
を利用するというように発達してきたんですね。
また、チンパンジーやオランウータンは仰向けにすると
しがみつこうとして母を探してもがきます。
彼らは生後三ヶ月は母から一時も離れません。
チンパンジーは夜泣きしないそうです。
いつも母が欲求を満たしてくれて必要がないから。
一方、人間は仰向けで安定しています。
これは松沢先生によれば手のかかる複数の子供を
同時に育てるから。
仰向け姿勢は対面コミュニケーション、声のやりとり、
手で物を操作するのに適しています。
仰向けで安定している人間の赤ちゃん。赤ちゃんは
すごく可愛い。人間を含めて子育てをする動物の
赤ちゃんはみんな、親からの支援を引き出すように
可愛い顔をしているのだけれども、人間の赤ちゃんは
異様に可愛くて、異様に愛想がよい。あんなにニコニコ
しなくてもいいのにと思うくらいニコニコする。
それはお母さんだけでなくて、お父さん、お祖父さん、
お祖母さん、おじさん、おばさん、みんなからの助けを
必要とするからだ。P53
ウーム、確かにそうですね。
NICUに長期入院している子はものすごく可愛いです。
体調が良い時はいつもニコニコしています。
すると通りがかっただけなのに、抱っこしたくなったり
話しかけたくなったり、仕事を差し置いて遊んで
あげたくなったりしちゃうんです。
人間の特性です。
子育ても進化していくものなんですね。
「想像するちから」
この本には伴侶の役割、
コミュニティの役割についても詳しく書いてあります。
ご興味のある方はぜひ、手にとってみてください。
結局、まだ講演の内容を全部、網羅しきれ
なかったのであともう一回、続きます。
ボルネオ島で見たオランウータンの赤ちゃんも
ずーっとお母さんにしがみついていて可愛かったです。