もう、だいぶ前になってしまったのですが、
北海道には、周産期新生児学会
というのに参加するため行きました。
そこで一番、私が好きだし皆さんにも関心が持ってもらえそう
という内容をご紹介します。
演題名:「チンパンジーが教えてくれた人間の親子関係と子育て」
演 者:松沢 哲郎 (京都大学霊長類研究所 思考言語分野)
という講演です。
実は私、京都大学の霊長類研究所にはずっと憧れて
いたんです。
サルや霊長類を研究してみたいなあ、彼らはヒトと
どう相違点があるんだろう?
性格、性質ってどうしたらできるんだろう?
と高校生の時、思っていました。
結局、私が一番興味があったことは、小児科とか児童精神科
とか発達心理学とかという分野のほうが近いのでは?
と考えたので大学は附属の医学部に行きました。
京大を目指すという大それた事にはならなかったので
私には良かったかもしれません。
でもテレビでアイプロジェクトの話をやっていたり、
アユムくんが生まれたというニュースを見たりすると
憧れが湧いてくるのです。
だから、そんな私が学会のプログラムに松沢先生の
名前を見つけたら聞きに行かない訳がありません。
予想に違わず興味深い内容でした。
二回に分けてご紹介します。
今日はチンパンジーとヒトの共通点について。
チンパンジーとヒトのゲノムの違いは1.2%
人間とチンパンジーの遺伝子の数はほぼ同じで、
全ゲノムを比較した結果、DNAの塩基の並び方でいうと、
約1.2%の違いがあった。逆に言うと約98.8%は同じだった。
P12
という導入でした。その後、買ったご著書で更に確認。
ヒト科ホモ属とヒト科パン属という人とチンパンジー
はとても近い。
更に、イネとヒトのゲノムも40%同じなんですって。
命がある物はみな同じ仕組でできているんですね。
だから生命は模倣し合うんだなと思いました。
血管と葉脈なんてそっくりじゃないですか。
僕らはみんな生きているんです。
そして知っている人にとっては当然なのでしょうが、
結構、衝撃の事実。
人類っていつも複数いたんです。
前掲の表のように生存していた時期は重複します。
現在は人間はホモ・サピエンスだけですが、これは珍しいことで
歴史上、いつも人類は複数いたんですって。
だからこういう絵があるじゃないですか、
これは一直線に進化して行ってこうなっていったのではなく、
こんな風に猿人と原人は同時代を生きていたし、原人と旧人、
さらには旧人と新人も同時代を生きていたのだそうです。
そして今は、歴史上初めてヒト属は
私達しか残っていないんですね。
また、私は初めて知ったのですが、
チンパンジーはヒト科なんです。
動物分類上、ヒト科というのは4属あって、
ヒト科ヒト属(ホモ属)だけでなく、ヒト科チンパンジー(パン属)、
ヒト科ゴリラ属、ヒト科オランウータン属の4属である。P10
だからなのか松沢先生は公演中、チンパンジー達のことを
「一人、二人・・・」とか「この女性は・・・」と彼らを
人間のように呼んでいました。
確かにそういう言葉を使いたくなるくらい彼らはヒトです。
そして私達とチンパンジーには、
子供を抱くという共通点があります。
このようにワオキツネザル(原猿類)の親子を見ると、
子どもはお母さんにしがみついているが、母親は抱きしめて
いない。
ニホンザル(真猿類)は、抱きしめるという程でも
ないけれども、抱いている。
チンパンジー(真猿類で大型類人猿)
はしっかりと抱いている。P46
抱っこするのはヒト属の特徴だったんですね!
しかし仲間と触れ合う機会が少なかったチンパンジーの出産の
話が出たのですが、母は出産した途端、赤ちゃんからギャーと
言って逃げて育てなかったそうです。
育てたい気持ちがないわけではなく、抱けないけれど見ます。
そこで、ある時、赤ちゃんを母チンパンジーにくっつけると
赤ちゃんはしがみつきます。母は恐る恐る片手と片足で赤ちゃんを
抱いてそれ以来、離れなかったそうです。
なぜかそこでほっとする会場。
やっぱり赤ちゃんには母親がセットで存在していなといけません。
という訳で、次回はヒトとチンパンジーの違っている点について
お話しします。
この内容は講演の内容と共に
想像するちから
チンパンジーが教えてくれた人間の心 (単行本・ムック) / 松沢哲郎
¥1,995 楽天
松沢哲郎先生のこの本を元にしております。
面白いです!
学会会場の外に医学書と共に並んでいたのですが、
地味ーな装丁であの松沢先生の本でなければ手に取らなかったと思います。