松下特許保有数世界でもトップ級に | 福岡若手弁護士のblog

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福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

景気のいい話である。


http://news.braina.com/2006/0515/enter_20060515_001____.html


松下電器産業が、2007年度にも保有特許数10万件を超え、世界でもトップクラスの特許保有数になるようだ。


先日来、特許権からみの記事をいくつか投稿してきたが、私は知的財産権の保護に消極的な訳ではない。


私が、疑問に思っているのは、特許権保護法制が、前近代的で柔軟性に欠ける法制になってしまっているのではないかということである。最終的には、立法によって解決されるべき問題であるが、ebay訴訟などでは解釈論としても、裁判所はもうちょっと突っ込んでもいいんじゃないか、ということが言いたかった訳である。


どういうことかというと、特許権についていえば、誤解をおそれずにいえば、例えば、電話の特許については、グラハム・ベルが特許権を保有する、というような近代的な事例ではそう問題は大きくない。1つの製品に1つの特許のような形で、特許権の絶対的な保護が及んでもムチャクチャな問題は生じない。


ところが、現在では、携帯電話一つとっても、関連特許は数百を超えるというような時代である。技術の進歩により、基礎技術の関連分野というのは相当に広範囲にわたるような事態になっておる。


そのような中で、極めて基礎的な技術についての特許にて、超先端技術製品について特許権を侵害するサブマリン特許の問題や、パテントトロールの問題が生じておる。


パテントトロール(テロル?)の問題は聞き慣れないかもしれないが、欧米(もしかしたら日本もかも)では、パテントポートフォリオの管理のみを目的とする会社も多数存在し、あくどいところになると、現在出回っているプログラムの中で、パテントを取得していないプロトコルを見つけ出して、自分たちで特許を取得するようなところもあるようだ。技術者の間では、誰もが知っている当然のプロトコルについても、特許審査官が特許を認めてしまうということも多々あるようで、当然後に新規性等の問題で争うことができるにしても(だから特許権侵害訴訟において、特許の有効性の審判が問題になることが多々ある)、まがりなりにも特許登録されてしまっておる場合には、大変な事態になってしまう。そして、関連技術というのは極めて広範囲に渡るので、開発時点で、パテント関係の確認を少しでも怠ってしまうと、多額の損害賠償のみではなく、製品の製造、販売が差し止められてしまい、とんでもない事態になるのである。困ったものである。


ebay訴訟の弁護人は、そういうところを問題提起したが、どうもアメリカの最高裁は、聞く耳を持たないようだ。


私は、こういう状況の中で、知的所有権の保護についても、現代的な保護を考えていかなければならないのではないか、と考えておるが、立法で解決されない限り、しばらくはこの状況が続くと思われる。そりゃそうだわな。アメリカなんかでは知的財産権の保護はある意味国策でもあるわけで、他国からの収益を収奪できなくなる可能性がある方向での改正とか、解釈の確立とかには大きな期待を寄せることはできない。で、アメリカでそうなら、日本の裁判所、国会も独自に知的所有権保護の現代化等という方向に議論が進むはずもない。ヤダね。


そんな現状では、開発者、メーカーとしては、自らが特許権者になる、という方向性を立てざるを得ないであろう。松下電器産業の方向性は正しい。


そんで、日本企業やアジア企業、南米、アフリカの企業などが、自社特許を侵害された、と主張して、ガンガンアメリカ企業をいじめる時代がくれば、アメリカの特許保護政策も変容していくであろう。


いや、ことがそんなに単純な問題ではないのは分かっておるが、気持ち的には、ガンバレ、非欧米諸国なのである。


M弁護士