色んな奇跡が積み重なり、ごんぼさんは元気になりました。
その最も大きな要因は「自宅での輸液療法」です。
今日はその事と、奇跡の水に関して書きたいと思います。
2016年5月19日
初めての強制給餌の翌日。
家の中をウロウロ歩き回るごんぼさん。
歩くスピードはさらに落ちてしまったけど、台所のその先へ行こうとするんです。
その先には勝手口があります。
元気がないのになぜ外へ出たがるのか?とても不思議でしたが、勝手口の方を向いて鳴くんです。
どうしようか迷ったのですが、何度も何度も台所へ行き鳴くので、リードをつけ外に出しました。
すると少しだけ小走りで金魚の水槽へ行き、水槽の水を飲もうとするんです。
ひしゃくに水を入れてごんぼさんの前へ置きました。
するとペロペロと水を飲んだんです
家の中にひしゃくを持ってきて、水を入れました。
でもそれは飲みません。
2016年5月20日
強制給餌の時の抵抗が激しくなりました。
水も相変わらず飲みません。
体重は3,1キロになってしまいました。
2016年5月21日
朝と夕方にリードをつけて少しだけ外に出します。
なぜか金魚の水槽の水に反応します。
外ではひしゃくの水をほんの少しだけ飲みます。
魚の匂いがするからなのか
カツオを煮た煮汁を冷まして与えてみましたが飲みません。
沸騰させた水を冷ましたものも飲みません。
蒸留水も作りました。それも飲みません。
今はなんとかキドナをお湯で溶かして与えているので水分補給は少しは出来ているし、病院で点滴をしているので少しは脱水症状は緩和出来ているかもしれません。
でもこのまま自分で水を飲むことが出来なければ、衰弱してしまうと思い、思いつく限りの事をしようと思いました。
2016年5月22日
金魚の水槽の水には反応し、飲みたいそぶりは見せるけど、飲まない。今日はひしゃくの水も飲まない・・・。
でも水に何かヒントがあるのかもと思い、主人と一緒に名水のある神社を回って、色んな水をペットボトルに入れて持って帰りました。
5種類ほどあったと思います。
でもどの水も飲むことが出来ませんでした。
知人から教えてもらった『H4O水素水』も試してみました。
ダメでした。
期待が大きかった分、とてもショックでした。
この日の夜。今まで聞いた事のない弱弱しい、悲しげな声でごんぼさんは鳴いていました。
部屋の隅に行きたがるので、そこへキャリーケースを置き、フリースを敷き、落ち着けるようにしています。そのキャリーケースには入らず、もっと隅っこの暗い寒い場所で小さく小さくなっているごんぼさん。
耳の皮膚病もひどくなり、両耳の毛が皮ごとずるとっ抜けてしまいました。きれいなビロードのような耳だったのに、両耳とも毛が全くなくりました。皮膚ごとズルっと毛が抜けてしまった耳は、痛々しいピンク色で、後ろからその姿を見た時に胸が締め付けられるような思いでした。
もうダメかもしれない・・・初めてそう思いました。
この日はどうしても畑仕事をしなくてはならず、オクラの種を播いていましたが、1分1秒でも早く家に戻らなければ・・・そう思い、全力を出して急いで種を播き、2時間後家に戻りました。
たった2時間だけど、家に戻ったら死んでしまっているかも・・・。そんな不安がよぎるくらい弱っていたんです。
2016年5月23日
朝からごんぼさんはヨロヨロしていて、歩くことも辛そうでした。
ほんの少しの高さの場所も登る事が出来ません。
もうダメかもしれない。。。そう思ったのですが、ココで私が諦めてはいけない、何か他に方法はないのだろうか?
1日中、インターネットで調べまくり、病院へ行く時に先生に尋ねる事でメモ帳が文字で埋め尽くされました。
この日も病院へ点滴に行き、先生に今の状態を報告し、聞けなかった事を聞きました。
「ごんぼさんは助からないのですか」
先生は「腎不全の末期です。自力で食べたり、水を飲んだりできないので、余命は1週間です」そう言われました。
危ない状態だという事は感じてはいたけれど、まさか余命が1週間とは・・・。
頭の先からザァ~っと血の気が引き、一瞬目の前が真っ暗になりました。
自分で食べることが出来ない。もう水を飲むことも出来ない。歩くのも辛そうで、夜も眠れていない。悪いことだらけ・・・。でもたった1つだけ、希望の光があったのです。
それはごんぼさんは「吐かない」
無理にエサを与えても、絶対に戻さない。
リンの値があれほど高いと吐き気がするはずなのに、一度も吐かない。だからごんぼさんは生きたいんだ、きっと食べられるようになる。そう信じていました。
先生も「吐かない」というのはリンの値からしても不思議だし、唯一の希望だとおっしゃっていました。
でもこのまま強制的にエサを与えて吐かなかったとしても、今後自分で食べたり飲んだりできるようになる可能性はほとんどないと言われました。
でもやはり諦められない。きっとごんぼさんも諦めていないはず。
だって一生懸命食べているから、水も飲まないけど飲もう飲もうとしているから。
インターネットで色々調べた事を先生に尋ねました。
まずは静脈から点滴をする方法について尋ねました。
静脈から点滴をすると脱水症状は緩和できるけど、数日入院しなくてはならず、ストレスが溜まり今の状態では命の危険がある事。そして注射をし続けなくてはいけない事。
コレはダメだ・・・。急性腎不全の場合は効果があるようだけど、ごんぼさんは慢性腎不全。
先生にごんぼさんは「急性腎不全ではないのですか?慢性なのですか?」と聞いても、症状がどんどん悪化しているし、期間が長いので慢性腎不全だとおっしゃいました。
私が調べた限り唯一の腎不全の薬である「セミントラ」とういう薬。これについても尋ねましたが、今のごんぼさんの状態では使用できないとの事。末期の猫には使えないそうです。
他にも色々聞きましたが、どれもごんぼさんの今の状態を改善するものは無かったです。
先生の方からも透析の話しもありましたが、猫にストレスがかかる上、続けていくことで延命が望めるだけとの事。(ごんぼさんの場合)
私の意思は、ごんぼさんを元気にしてあげたいけれど、ストレスをかけてまで、延命処置をすることは望まないという事でした。
それで最後の1つを聞いてみました。
『私が自宅で輸液をすれば体力は戻りますか自宅で輸液をする事は出来ますか
』
すると先生は驚いたようでしたが、『自宅で輸液をするのは猫にも通院のストレスもかからないし一番安心する自宅でする方がいいです。でも実際自宅でも輸液を勧めても怖い、出来ない理由で、断られることが多かった。なので最近はこちらから自宅輸液に関しての話はしていないのですが、本当にされますか?』
私は「はい、やります。ただ1つだけお聞きしたい事があります。自宅で輸液をするという事は、延命処置ですか?それとも治療ですか?」
先生は、ほんの少し考えられたようでしたが、はっきりとした口調で「治療です」とおっしゃってくれました。
その言葉で私の心は決まりました。
最後の選択。
輸液療法をして、ごんぼさんを元気にする。自宅で点滴をすることに関して怖さは全くありませんでした。ただこの方法しか今はないという事。これをしなければごんぼさんを失ってしまうという事だったから。
先生は輸液の方法を30分位かけ教えて下さり、先生の見ている前で一度だけ針を刺しました。
怖くないと思っていたけれど、手が震えました。
病院で輸液のセットを受け取りました。
輸液のセット。
左上から、輸液の液(ソルラクト)、ライン(輸液と針の間のチューブ)、針(毎回交換します)、ポンプ(空気圧を入れて液がスムーズに流れるようにするもの)、消毒綿、テープ(針を固定するもの)
ポンプだけは初回だけで、ずっとこれを使います。
輸液はごんぼさんの場合、1回100ml入れるので5回分。
ですので1か月分6セット受け取りました。
料金を見て驚いたのですが、病院で輸液をする10分の1の価格でした。1回あたり200円です。
これで、がんばってみよう。
腎不全で脱水症状をおこしているので、体からも水分を入れる必要があります。体に毒素が回っているので、輸液をすることで楽になるようです。
病院で輸液セットを受け取り、受付の方や看護師さんに「がんばって!」と励まされ、病院を後にしました。
帰りの車の中、助手席のごんぼさんにずっと話をしていました。「これで楽になれるよ。病院へ通わなくてもいいよ。自宅でゆっくりと治療しようね」
「輸液をして、たくさんご飯が食べられるといいね。ごんぼさんなら絶対に自分で食べられるようになるはず」
「一緒にがんばろう〜」
ごんぼさんは弱弱しい声で最初は鳴いていましたが、あと数分で家に着くという時に、聞いたことがない、本当に悲しい悲しい声で2回鳴きました。
それから何も言わなくなりました。
運転中なので車を止める場所もないので、心配で横目でチラッ見ても、うずくまっている様子。
寝てしまったのかな・・・でもさっきの変な鳴き声は何なんだろう?
なんだか不安になりました。
家に着くと、すぐにごんぼさんが入っているキャリーケースを見ると、寝ている様子。ゆすっても動かない。
「ごんちゃん ごんちゃん
どうしたの
」
お腹の上に手を当てても動きがない。寝ているなら少しは上下するのに、動いていない。
「ごんちゃん ごんちゃん
」
家の前に車を止めたまま、私が気が動転していました。
家の中から主人が出てきて、私がごんぼさんの様子が変だと言っても、なぜか無言で家の中にキャリーケースを運びました。
私も家の中へ入ると、ごんぼさんは少し目を開けていました
あ・・・よかった・・・。最後のチャンスを与えないまま、お月さんになってしまったのか・・・そう思った。今から考えても、あの変な鳴き声と、家の前で全く動かなくなった理由はわかりません。
その日はずっと眠っていました。
2016年5月24日
朝4時半から小走りをしているごんぼさん。
ごはんもシリンジで5回に分け与える。ほとんど「キドナ」だけど、ドライフードをミルで粉状にしてお湯を加えペースト状にしたものも与えました。
水は色んな容器(バケツ、洗面器、ひしゃく、スープカップ、コップ)に入れて複数設置したけれど、飲めない。
水に興味があり、飲みたいという気持ちは伝わってくる。でも飲めない。容器を変えてもダメだった。
初めての自宅での輸液はやはり手が震えた。インターネットで輸液療法の動画を探し、頭の中で何度もシュミレーションをしたけど、手が震える。
お母さん猫は子猫の首を噛んで移動させる。それほど猫の皮膚は分厚い。だから大丈夫、大丈夫と言い聞かせ、針を刺す。
主人がごんぼさんが動かない様に体を押さえている。
100ml入れなくてはいけないけど、80mlしか入らなかった。
でも初めての点滴が終わり、少しほっとしました。
体重は減り続け、2.8キロになりました。
腰が細くなり、背骨が浮き出て、真上から見るとげっそり痩せているのがわかります。
この日も部屋の隅っこに設置したキャリーケースの中で寝てばかりのごんぼさんでした。
2016年5月25日
とうとう体重が2,7キロになってしまいました。
朝から元気がなく、か弱い声で鳴きます。足取りも弱弱しく、倒れてしまいそうです。
キャリーケースの中でゆっくり寝ている方が状態がまだ良い方で、弱弱しく歩いている方が悪い感じです。
気分が悪すぎてじっとしていられない感じでした。
輸液をする時間を早めました。
昼過ぎに輸液をすると、そのあとぐっすり寝ていました。
13時に輸液をし、17時までぐっすりと。
体が楽になるのかな?本当に久しぶりにぐっすり寝ているごんぼさんを見ました。
19時くらいから、少しだけ元気そうに歩いています。
ごんぼさんを抱き上げると嫌がりません。
ずっと抱っこは出来なかったけど、嫌がらずじっとしていたので、嬉しかった。
体重は今までで一番少なくなってしまったけど、「抱っこしても嫌がらない」という小さな1つの変化がありました。
2016年5月26日
朝の4時半からガリガリと爪を研いでます
久々に見た、爪を研ぐごんぼさん。
とても嬉しかったけど、でもこの日のごんぼさんは元気がなかった。
ヨタヨタと家の中を歩き回り、か弱い声で鳴く。
この悲しい声を聞くと、恐怖を感じてしまう。部屋の隅っこの暗い場所へ行ってしまうとさらに怖くなる。猫って死ぬ前は隠れてしまうので、怖かった。
食事はシリンジで与えているけど、自分で食べることが出来ない。水も飲めない。
先生がおっしゃった通り、このまま輸液を続けて、シリンジで強制的にエサを与えて、それでごんぼさんが生き延びたとして、それが幸せなのか・・・
強い決心で輸液療法をし始めてまだ、間もないのに、どんどん弱っていくごんぼさんを見て、私の心も弱くなっていました。
この日は輸液をしてもぐっすり眠りません。
ウロウロ、ウロウロしています。
夜になり、雨が降りました。
久しぶりの雨です。
ごんぼさんが窓の近くに行き、珍しく大きな声で鳴きました。
雨を見て興奮しているのか、色んな窓へ行き、外を見て鳴いています。
その時、ふと、『雨。雨・・・雨かも
』
そして外へ行き、ひしゃくで雨水を汲み、ごんぼさんの前に持って行きました。
ひしゃくに入った雨水。
その時のごんぼさんの様子は今でも鮮明に覚えています。
ごんぼさんは目を細め、じっと雨水を見て、口を付けた。
ずっと雨水に口をつけたまま。
目は水面を見ている。どこか懐かしい物を見ているかのように。
私は背中を撫でた。「頑張れ飲めるはず。飲みたいんでしょ。」
ごんぼさんはペロペロペロっと少しだけ雨水を舐めた。
体が一瞬ピクッとした。
また雨水に口を付けたまま、目を細めてじっとしている。
そして顔を上げて、意を決したように一歩前に出て、雨水を飲み始めました。
その姿を見て、大泣きしました。
「飲んだ自分で飲んだ。水を飲んだ
生きたかったんだね、望みを捨てていなかったんだね、私の方が諦めかけていた。ごめんね、ごめんね」
その後、洗面器に雨水を入れ、居間に置くと、何度も水を自分で飲み、安心したかのように、ぐっすり寝ていました。
金魚の水槽の水は水道水も入っているけど、雨水も入っています。煮沸した水も、蒸留水も、水素水も、神社の湧き水も、魚の煮汁も飲めなかったごんぼさん。
なのに、雨水が飲めた。
恵みの雨。
ごんぼさんにとっては命の雨が降りました。
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