隼と兎

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             隼と兎-ファルコ

みなさんこんにちは、ファルコです(↑ファルコ↑)


このブログでは、主にFOAFと称して都市伝説を語っていこうかなと思っています

(FOAFシリーズは今のところmixiの過去の日記からの転載ですので、実際の時期と記事の内容がずれていることがあります)

現在の記事に対するコメントだけでなく過去の記事に対するコメントもお待ちしてます

また、時間が出来次第、「ファルコのピザ配達漫画&イラスト」やその他のイラストも載せていく予定です


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FOAF事件ファイルのまとめです。



FOAF事件ファイルNo--【FOAF都市伝説】

そのサイトの名は『FOAF都市伝説』





ファイルNo01【ベッドの下の男】

東京近郊で起こった女子大生連続殺人事件。それを調べに向かう自称私立探偵の早川隼と助手のルナ。彼等はまず、犯人に遭遇したという藤ヶ崎瑠花という女性にコンタクトを取る。友達の部屋で犯人を見たという彼女はその友達が危険に晒されているかもしれないと早川に訴える。しかし彼女の体験はにわかには信じられない内容だった。

消える男。増える被害者。犯人は誰なのか?
特に大した落ちも無いかも?都市伝説短編小説第一弾!


FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】序章『遭遇』

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第一章『聴取』

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第二章『張込』

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第三章『事後』

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第四章『現場』

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第五章『容疑』 前編

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第五章『容疑』 後編

FOAF事件ファイルNo01【ベッドの下の男】第六章『帰宅』

【登場人物】

『早川隼(ハヤカワ シュン)』
探偵事務所「F」を経営する25歳。
表向きは私立探偵だが、実際は警察などの手には負えない、警察などでは理解できない超常現象、怪奇事件、未解決事件などを調べている。
彼がこのような仕事をはじめたのには、過去体験したある事件が関わっているのだが、そのことをあまり人に話そうとはしない。

『ルナ』
探偵事務所「F」において早川の助手を務める少女。
見た目は中学生くらいだが、実年齢は不明。
数年前ある事件をきっかけに早川と出会い、以降コンビを組んでいる。
少女とは思えない驚異的な身体能力には秘密があるというが…

『藤ヶ崎瑠花』
都内に住む20歳の女子大学生。
明るく元気で少し天然な性格。
怖い話や都市伝説に興味があり、よく友達に話して聞かせている。
友人の霧島美恵子のうちに泊まりに来た日に怪奇現象を体験し、早川に助けを求めることになる

『霧島美恵子』
都内に住む20歳の女子大学生。
友人の藤ヶ崎瑠花とともに怪奇現象を体験することとなる。

『天堂』
早川に第三の被害者が出たことを知らせてきた人物。言葉のノリが軽く、事件自体を重く捉えてる節はない。情報を与える理由、その入手先は不明。

『伊勢真由美』
第一の被害者。女子大学生。

『一之瀬美穂』
第二の被害者。女子大学生。

『時田愛』
第三の被害者。女子大学生。

『美濃部剛一郎』
警視庁捜査一課課長。本事件の捜査本部の本部長。
ノンキャリアの叩き上げであり現場主義。所轄には厳しい。
やっかいな事件のたびに現れる早川を疑っており、過去に拘留したこともある。

『池浦譲』
誠心女子大学心理学部の准教授。
美恵子が通う大学にも講義をしに行っているということで早川に疑いの目を向けられる。
学生には人気があるが、その内に何か秘めていそうな雰囲気をもつ。

『磯山拓郎』
誠心大学教育学部の教授。
事件について早川に話を聞かれる。

『下山茂』
誠心大学教育学部の准教授。事件について早川に話を聞かれる。
池浦ほどではないが彼の授業も人気があるようだ。

ルナからの連絡を受けた俺はすぐに美恵子さんのマンションへと向かった。

マンションの前に車を止めマンションの入り口に行くと、入り口前の段差にルナが座っていた。

「ルナ、大丈夫か?」

そう聞いた俺に、ルナはイラついた様子で答える。

「また逃がした…」

二度も逃がしたことに対して相当イライラしているらしい。

足の裏でダンッと地面を蹴る、イラついた時の癖がでていることからもそれが伺える。

「部屋に入る前に気づいて追いかけたんだけど…」

「まぁ過ぎたことを言っても仕方がない、現時点では捕まえる方法がわからないからな」

「ああもう!」

また地面をダンッと蹴りながらルナが言った。

「ところで美恵子さんたちは?」

「まだ」

「そうか、連絡してみるからお前はいい加減機嫌直しとけ」

そう言って携帯を取り出し、聞いておいた美恵子さんの番号へ電話をかける。

数回のコールの後、向こう側から声がした。

「はい」

美恵子さんの声だ。

「もしもし、早川です」

「あ、はい。何かあったんですか?私たちも丁度今帰ろうかと思って連絡しようと思ってたんですけど」

「早川さんナイスタイミング!」

後ろから瑠花さんの声がする。

本当に今の状況をわかっているのだろうか…

「言いにくいのですが…今さっき、またあいつが出ました」

「えっ、どこに?……わ、わたしの部屋に!?ですか!?」

「はい、今回は部屋に入る前に…」

ルナがってのは言わない方がいいな。

「発見して、追いかけたんですけどまた逃げられてしまいました。すみません」

「いえ、煙ですし、それはしょうがない…ですよ…」

そうは言っているものの不安だということは電話口からも十分伝わってきた。

後ろの方で「またなの!?」っと瑠花さんも驚いた声を上げている。

「自分が不甲斐ないばかりに不安にさせてしまい…ほんとうにすみません」

「いえ…あの…」

「はい、なんですか?」

「今日は部屋に戻りたくない…です」

「そうですよね…」

確かに、襲われる危険がある部屋に戻りたい人なんていないだろう。

「自分がまた護衛をするつもりではいますが、もしそれでも怖いというのなら今晩は事務所に泊まりませんか?ホテル等でもいいとは思いますけど、お金もかかると思いますし、事務所はお二人が買い物に行っている所からそう遠くないですから」

「え?」

「あっ、嫌ならいいんです!ルナと一緒とはいえ男が住んでる所に入るってのも抵抗あると思いますし」

「いえ、そんな。私はそうしてくれるとありがたいというか、自分の部屋にいるよりは安心できます。本当に…いいんでしょうか?」

「はい、自分達としてもその方が安心できますし、美恵子さんさえよければ。もちろんホテル並に快適、とはいきませんけど」

「はい、ありがとうございます」

「いいえ、もちろん明日は学校まで送りますから」

「え、そこまでしていただかなくても」

「気にしないでください、その方が危険は少ないですしね」

「あ、でも明日は授業が一つだけなんで休もうかなって思ってたんです」

「え?そうなんですか?」

「はい、なんか友達も結構休むんで…。学校では明るくしててもみんなこの事件のことで内心怯えてるんです。大学側もそれを考慮して事件解決まで、本来学期末のあまりの時間を今の時期に持ってくるようにもするみたいで…」

そうか、大学としても自分のところの生徒ばかり犠牲になっているのはまずいからな。

注意を呼びかけこれ以上犠牲者を増やさないようにしたいんだろう。

「なるほど、それなら明日は一日護衛できますね。」

「はい、ほんとにすみません」

「いえいえ。ところで、着替えなどは一回取りに来ますよね?」

「はい…あんまり戻りたくないんですけど…着替えくらいは…」

「わかりました。それなら今から迎えに行きますね」

「はい、ありがとうございます」

美恵子さんから今いる場所を聞くと、俺達は車に乗って二人を迎えにいった。

そして合流した後、再び美恵子さんの着替えなどを取りに美恵子さんのマンションへ向かった。

美恵子さんも、あの瑠花さんでさえも今回のことでまた不安が大きくなったように見える。

自分の部屋なのに入るのをためらっている姿を見ると、早くこの事件を何とかしなければという思いにかられた。

それにしてもどうすれば…

恐らくヤツはまたここに来る。

他の事件では計画的だと思えたのだが、なぜかこの部屋では計画性の欠片もなく隠れる気すらあるのかもわからない。

美恵子さんには悪いが、ここをターゲットにしてくれるのは探し回らなくてもいい分好都合ともいえる。

だけど捕まえるにはどうすればいい?

袋で包めば大丈夫か?

それとも札なら……

現れるために何か試してもいいが、試せるのは一回につき一つの方法だけだろう。

たぶん一度失敗すればすぐに煙になって逃げられる。

もしその失敗でここがターゲットから外れるとなると厄介だ。

次に見つけたときになんとしてでも捕まえたい……

どうすれば…

「探偵さん、美恵子の準備終わったよ」

そんなことを考えているうちにどうやら準備が終わっていたようだ。

瑠花さんが話しかけながら後ろからツンツンと背中を突いてきた。

「え?ああ、すみませんでした。それじゃあ事務所に向かいましょうか」

さっそく二人を車に乗せ事務所へと向かう。

元気とまでは行かないが、二人とも移動中に少しは落ち着いてきたようだ。

しばらくして事務所の前の駐車場に着いたものの、そこまで来て先に瑠花さんを送ったほうがよかったのではないかということに気づいた。

「あの、美恵子さん」

「はい、なんですか?」

「ここまで来てなんなんですけど、事務所に美恵子さんだけを残していくのもどうかと思うんで、先に瑠花さんを送ろうかと思うんですけど」

「いや、私は別にいいんですけど…と言うか…ねぇ…瑠花?」

美恵子さんが瑠花さんの方を見ながら困ったような顔をする。

「え?瑠花さんどうかしたんですか?」

「送らなくてもいいですよ。私も今日ここに泊まるつもりですから」

「……え?」

ポカーンとする俺に瑠花さんが続ける。

「美恵子が心配なんで私も泊まらせてもらいます!」

こ、この顔は…瑠花さんはどうやら本気のようだ。

「えっと、着替えとかは…」

「美恵子の家に置いていたやつを持ってきましたから大丈夫です!」

「授業は…」

「休むから大丈夫です!」

はぁ……もうどんなこと言ってもダメだろうな……

「じゃあ…行きましょうか…」

「はい!」

駐車場から移動する途中に美恵子さんが小声で話しかけて来た。

「早川さんすみません。私は大丈夫だって言ったんですけど…」

ん?美恵子さんは知ってた?

そうか、着替えを取りに行ったときに話してたのか。

まぁ、いいや…瑠花さんに危険がないともいえないからその方がよかった…のか?

「美恵子さんは気にしないでください。瑠花さんならこうすることくらい予想するべきでした」

と俺も小声で返す。

「あ、確かに」

美恵子さんがクスクスと笑う。

「えーどうしたの?二人でコソコソ話をしなーい!」

のけ者にされたとでも思ったのだろう、そう言いながら瑠花さんが美恵子さんのわき腹をつつく。

「ひゃっ」といいながら美恵子さんが飛び上がった。

二人ともだいぶ元気になったかな?

そうだとしたらこんな会話をするのも悪くないかもしれないな。

そんなことを思ってる俺に対し、ルナがため息を吐き呆れたような表情で、俺だけに聞こえるか聞こえないかという声で言う。

「よかったね。女の子いっぱいで」

はぁ、コイツは…

「おい、妬くなって」

軽く笑いながらそう言った俺の足をルナが踏みつけた。

「いってぇ!」

「どうしたんですか?」

瑠花さんと美恵子さんが不思議そうにこちらを向いてくる。

「いえ、段差に足をぶつけただけです」

「そ、そうですか?そこに段差あります?」

「まぁまぁいいじゃないですか。ささ、入りましょう」





都内にある一見普通のビル。

新築というわけでもなく特別古いというわけでもないどこにでもある至って普通の五階建てのビル。

しかし、そこには他の事務所などは入っていない。

入っているのは俺の事務所だけで、他のフロアも俺たちが自由に使える。

とは言ってもほとんど事務所のある二階のフロアと居住スペースとして使っている三階のフロアだけしか使っていないのが現状だ。

ワンフロアはそこそこ広い方で、事務所や居住スペースとしては十分な広さだと言える。

外には『探偵事務所『F』』という事務所の看板と、その他にも他の事務所の看板が「一応は」でてはいるが、もちろん他の事務所の看板はフェイクだ。





建物の中へと入り通路の電気をつけ、階段へと向かう

階段を上り始めた俺に瑠花さんが話かけてくる。

「本当に探偵さんなんですね」

え、今更?

「も、もしかしてまだ信じてませんでした?」

「うーん、そういうわけではないんですけど、実感が沸いたというかなんというか」

「そんなに探偵っぽく見えませんかね?」

「はい」

ああ、即答ですかそうですか。

「こらっ!瑠花!失礼じゃない!」

「でも美恵子も言ってなかったけ?」

「そ、そんなことないよ!」

もういいよ…

「ほんと…気にしなくて、いいですから…」

まぁ探偵っぽく見えないのは自分でもよくわかってるけどね

実際面と向かって言われるのは落ち込むな…

と、そんなことを考えているうちに居住スペースのある三階に着いた。

「ここです。事務所は二階なんですけど、三階を居住スペースとして使っているので、今日はここに泊まってもらうことになります」

「へぇ、フロア2つ使ってるなんて意外ととお金持ちですか?」

意外とは…余計だよ。

でも、実際ここの金出してるのは俺じゃないから金持ちに見えないのも無理はない。

「いえ、ここの家賃が安いだけですよ」

「むしろ貧乏」

ボソッとルナも呟く。

「そうなんですかー」

「また瑠花はー」

「まぁまぁ、そんな話はともかく中に入りましょう」

鍵を開け中に入り、入口脇の玄関の電気をつける。

見慣れた室内が蛍光灯で照らし出された。

玄関を入ると目の前に短い廊下、その廊下の側面には風呂とトイレへのドアがあり、正面はリビングへとつながるドアがある。

すぐさま、ルナが「ただいま」と呟くとリビングへのドアを開け中に入って行った。

奥でリビングの明かりが点く。

「ささ、上がってください」

続いて俺が靴を脱ぎ中に入り、外の廊下にいる美恵子さんと瑠花さんを招き入れる。

「はい、おじゃまします」

「おじゃましまーす!」

ルナが開けっ放したままのドアを抜け、二人とともにリビングへ行く。

「おお、広い!」

リビングに入ると、瑠花さんが驚きの声を上げた。

確かにここは二人暮らしにしてはそこそこ広い。

リビングにはテレビやソファ、食事用のテーブル等が置いてあり、そのテーブルの脇がキッチンになっている。

ドアの正面奥は窓、その奥はベランダだ。

ドアから見て右側面の壁には俺の部屋と収納に使っている空き部屋のドアがあり、左にはルナの部屋のドアと、特に何にも使っていない空き部屋のドアがある。

ルナの姿が見えないので、ルナはすでに自分の部屋に入ったようだ。

こうやって見回してみると、読みかけの本などが所々に置かれていた。

散らかってるとまでは言わないが、片付いているとも言えないな。

人を呼ぶんだったら片付けておけばよかったか…

「ぜんぜん片付いてなくてすみません」

そう言った俺に対し「そんなことないですよ」と美恵子さんが言う。

そしてなぜか瑠花さんは「そうそう、私の部屋のほうが汚いです!」とむしろ誇らしげにフォローしてくれた。

「ははは、ありがとうございます。左手前の部屋が空き部屋になっているので、今日はそちらに泊まっていただくことになります。鍵もかけられますので、かけていただいてもかまわないのですが、何かあったときのために出来ればかけないようにしてください。もちろん用がないときに入ったりはしませんので」

「本当に、ありがとうございます」

「探偵さんありがとうございます」

二人が頭を下げながら言った。

「いえいえ、じゃあ、とりあえず荷物をおきましょうか」

そう言って部屋へ案内する。

部屋の電気をつけると少し棚などが置いてあるだけの、殺風景な部屋が照らし出された。

「すみません、普段あまり使ってないので少し埃っぽいかもしれません」

「いえ、そんなことないです」

「おお、ここも結構広い!」

「ベッドはないですけど、布団があるのですぐに用意しますね」

「はい」

「あ、探偵さん。お風呂は借りれますか?」

「あ、はい、大丈夫ですよ。お風呂とトイレは玄関入ってすぐのところですから自由に使ってください。でも入るときは言ってくださいね。知らなくて入っちゃうとまずいんで…。それか、使用中かどうかがわかる札がドアにかかっているので、それを使用中にしておいていただければ大丈夫です。それとタオル等が必要なら言ってくださいね」

「へへー探偵さん覗かないでくださいね」

「ええっ?の、覗きませんって!」

「もう、瑠花!」

「冗談ですよ~。それじゃありがたくすぐに使わせてもらいますね」

やれやれ、からかうのはやめてもらいたいもんだ。

まぁだいぶリラックスできてるみたいだし、ガチガチに緊張されるよりはこっちとしてもありがたいか。

「じゃあ、布団とって来ます」

「はい」

「はーい」

「あっ、夕食は食べましたか?」

「はい、大丈夫です。買い物ついでに外で食べてきました」

「うん、大丈夫。お寿司食べました~。」

「はは、いいですね。でも、もしお腹が空いた時は言ってくださいね」

「はい」

「言ったら探偵さんの手料理が?」

瑠花さんが目を輝かしている。

「いやいや、男の手料理に期待しないでください。ともかく、何かあったら気軽に言ってください。ではとってきます」

部屋を出た俺は、収納に使っている部屋から二人分の布団を取り、二人が待つ部屋へ。

「はい、お待たせしました」

ドサッと布団を置く。

「ありがとうございます」

「ところでどうして布団がこんなにあるんですか?」

「え?ああ、もちろんこういうことを想定してですよ。依頼人の身柄を匿う必要があることもありますので」

「ほほ~」

瑠花さんが感心した様子で頷く。

さて、これでひとまずは大丈夫か。

「では、自分はこの部屋から見て正面左側の部屋に居ますんで、何かあったらノックしてください」

「はい、ほんとうにありがとうございます」

「はい、探偵さんおやすみなさい。ってまだはやいかな?」

「はは、おやすみなさい」

そう言いながらドアを閉めると、俺は自室に入った。

ピピピピピピ!

タイミングよく電話が鳴る。

こんな時間にだれだ?

画面には「着信 鳳光寺」の文字。

おっ、じーさんか。

ピッ

「あ、じーさん?電話かけたのにどこ行ってたんだよ。でさ、ちょっとききたいことがあ―」

と、俺が話を言い終わらないうちに、電話の向こうから鼓膜を破りそうなほどの怒鳴り声が聞こえてきた。

「和尚か師匠と呼べと言っとるだろうが馬鹿もん!しかも久しぶりにかけてきたと思ったら、元気か?くらい言えんのか!」

うん、いつものじーさんだな。

「あーあー、悪かったよ。ちょっと急な用事でそれどころじゃなくてさ。殺人事件が絡んでるから焦ってるんだ。勘弁してくれよ」

「…ふむ、なにやらまた難しい事件に首をつっこんどるようじゃな。で?わしに何のようじゃ?」

「ああ、実はさ……」

俺は今回の事件の一部始終をじーさんに話した。

「なるほどのぉ。煙に変わる人間…か」

「でさ、何か心当たりはないかな?」

「そうじゃのぉ……」

しばらくの沈黙の後じーさんが続ける。

「すまん、そんな話はわしも聞いたことがないわ」

「そっか…」

じーさんも知らないか…まいったな。

「じゃがのぉ」

「ん?」

「わしは知らんが、事件が起こっているところの近くの興燕寺という寺の和尚が古くからのわしの知り合いでな。もしかするとその和尚なら何か知っておるかもしれんな。もし話を聞きに行くのなら連絡をしておいてやるから、明日にでも聞きに行ってみんか?」

「おぉ、助かるよ!」

「まぁその和尚が知っているかはわからんのだが、何も手がかりがないよりはマシじゃろうて」

「ありがとう、さすがじーさ…師匠だな」

「なぁに、それほどでもないわい」

「じゃあ連絡よろしく」

「ほいほい」

「じゃあ切るわ」

「隼!」

「ん?何か思い出した?」

「いや、そういうわけではないんじゃが。……気をつけろよ。それと、たまには顔を見せに帰って来い」

「……ああ、わかったよ。ありがとう。…それじゃ」

ピッ

そうだな、最近帰ってなかったし、時間が出来たら顔見せにでも行くか……

それに……あいつのとこにも行ってやんなきゃな。

さて、そのためにはさっさとこの事件を解決しなければ。

興燕寺の和尚から何か聞ければいいんだが……

コンコンッ

ん?

不意にドアが叩かれた。

「探偵さーん」

ドアの外で声がする。

「はい」

ドアを開けると瑠花さんが立っていた。

「どうかしましたか?」

「あのー、シャンプーとか勝手に使っちゃったんですけどよかったですか?使っていいか聞いてないことを体濡らしてから気づいちゃって…。そのまま聞かずに使っちゃいました」

「え?ああ、かまいませんよ」

「そっかぁ、それならよかったです。そうそう、お風呂も広いんですね。シャワー浴びてだいぶリラックスできました。」

「それはよかった」

それにしても…

依頼主とはいえ、ほとんど何も知らないこの世代の女の子の湯上りを見てもいいのだろうか…

いつも使っているシャンプーの香りも女の子から漂ってくるとこうも違うものだとは…

ゴクリ、と生唾が音を立てて喉を流れていく。

「どうかしましたか?」

って何を考えているんだ俺は!

「え?え?いえいえいえ、何も考えてませんよ。そ、そ、そうそう、できれば明日の早い時間に話を聞きに行くところがあってですね。安全のため、お二人も着いてきてもらう事になると思いますので、不安で眠れないかもしれませんが、なるべく早く寝ておいてください」

「は、はい…。そっか、探偵さんがそんなに興奮しているところを見ると有力な情報が聞けるかもしれないってことですね!」

「あ、はい。そ、そうかもしれませんね」

「それじゃ、早く寝ます!探偵さんおやすみなさい!」

「はい、おやすみなさい!」

「あ、美恵子が今からお風呂だから、美恵子にもシャンプーのこと言っとかなきゃ」

「そうですね。お願いします。じゃあその後ルナを入れて自分も入ります」

「美恵子がかわいいからって覗いちゃダメですよ?」

「だ、だから覗かないですってばっ!」

「ふーん、そういうことにしておいてあげます。おやすみなさーい」

「お、おやすみなさい」

バタン

ドアを閉めると同時にため息がでる。

はぁ…こんな生活じゃあまったく気が休まらない。

なんとしても、一刻も早く事件を解決しなければ。

こうして、俺が事件を解決したい理由に、殺人を止めこれ以上被害者を出したくないということとは別の理由も加わることになったのだった…。
「じゃっ、ということで監視は終わりますよー」

「わかった」

天堂からの電話を切った俺は、再び誠心女子大学の構内へと入った。

幸い守衛は昼間と変わっていなかったため、今度は昼間よりすんなり入ることが出来た。

天堂が言うには、どうやらあの後、池浦准教授はここから少し遠い場所の大学関係者のところに行っており、車もそこから移動していなく特に怪しいところはなかったとのことだった。

そしてついさっき大学へ戻ってきたらしい。

確かに車は正門傍の駐車場に停めてある。

彼がいない間の俺はというと、昼間のうちは情報を集め、暗くなる前に一旦ルナを監視役として美恵子さんのマンションに送ってきていた。

瑠花さんと美恵子さんに連絡を取ったところ、今日は二人で買い物に出かけるので帰りが遅くなるとのこと。

帰りが遅くなるのは危険な気もするが、安全なはずの家の方が危険に晒されやすい今の状況では外出していた方がいいのかもしれない。

こんな状況で家にいるより、買い物で少しでも気分転換ができれば…。

それに帰宅する時間には連絡を入れてもらい迎えにことにしているから問題は無いだろう。

それに家に二人がいないことでルナも自由に動きやすい。

これでひとまず俺はこちらに集中できそうだ。

昼間聞いた情報でわかったのは、やはり池浦准教授は人気があるということだった。

話を聞いた学生などには、彼を疑っていると見えないように聞いたけれど、疑っているかのように聞いたとしても、恐らくそのことに対する反論や彼への擁護の意見しか出ないだろう

それくらい彼は人気があった。

もちろん心理学部だけでなく、他の学部の生徒や教授達でさえ、彼にはいい反応を示す。

それほどいい人なのだろうか……。

まぁいい、今から本人と話すのだ。

それによって他にもなにかわかることがあるかもしれない。

そんなことを考えているうちに、彼の研究室の前に着いた。

場所は昼間情報を集めるついでに聞いておいたので間違いは無いと思うのだが……。

電気がついていない

もうあたりは暗くなっているので、部屋にいるのなら電気はついているはずだ。

コンコン

念のためノックをしてみる。

反応は無い。

車もあることだし大学に入るはず、やはり聞かれたらまずいことがあるので隠れているのか?

ともかく探してみなければ、まずはもう一度車を確認しに行こう。

走って正門前の駐車場に行ってみるとさっきと同じ場所に車はあった。

やはり、まだ構内にいる。

探さなくては!

そう思った俺に対し誰かが声をかけてきた。

「早川さん?」

振り返ると誰かがそこにいた。

しかしこちらは電灯の真下にいるのにたいし声の主は少し遠い暗がりにいたためよく見えない。

目を凝らす俺に対し、その声の主が近づきながら話しかける。

「すみません、僕です。下山です。昼間お話した」

彼が自分の名前を言ったことと、近づき電灯の明かりの下にきたことで、昼間話をした下山准教授だということがわかった。

「あ、昼間はどうもありがとうございました。まだお仕事ですか?」

「はい、ちょうど今帰ろうとしていたところなんですよ」

「大学の教授の方はこんな遅くまで大変ですね」

「いえいえ、僕はまだまだ未熟なんでいろいろと時間がかかるんですよ。早く帰る人は早く帰りますから」

彼は情けないといったような感じで、ははっと笑った。

「ところで早川さんはどうしてここに?こんな時間までまだ調査ですか?」

「はい、昼間に池浦さんに話を聞きそびれたので、この時間に予約を入れておいたのですが、どうも研究室にいないようなので」

「帰ったのでは?でも予約を入れたのなら帰らないか」

「はい、車があるのでまだ帰ってはいないようなんです」

「うーん、なら心理学部2棟の3階の部屋にいるかもしれませんね」

「え?」

「いや、そこも最近彼が使っているようなので」

「……なるほど」

「どうかしましたか?」

「いえ、ありがとうございます。すぐにそちらに行ってみます!」

「いやいや、お礼を言われるほどのことではないですよ」

「では、本当にありがとうございました!」

そう言って会釈をすると教えてもらった建物へと急いだ。




「くそ、鍵がかかってる。しかたない…」

俺はジャケットのポケットから道具を取り出すと鍵穴に突っ込んで、回した。

ガチャン、と鍵の外れる音がする。

よし!

そのドアからこっそり忍び込むと電気も点けずに一番近くの階段をつかい三階へと駆け上がる。

まだいてくれればいいんだが……

そう思いながら二階と三階の間の踊り場でターンをしたとき

ドンッ!

何かにぶつかってしまった。

とっさに謝る。

「す、すみません!」

「いえ、こちらこそ」

声の主は冷静だ。

暗がりだったが距離が近いため相手の顔が確認できた。

池浦准教授!

「あれ、君は昼間の」

「はい、お話を聞く約束をしていた者です。研究室にいなかったので探していました」

「それはもうしわけない。今ちょうど戻るところだったんですよ。ん?それにしても私の研究室はともかくこの棟はすでに施錠されていませんでしたか?」

「そうなんですか?ドアが開いていたので入ってきたのですがまずかったでしょうか?」

「ああ、ドアが開いていましたか……」

彼はフッと少し笑い、話を続けた。

「いえ、それならしょうがないですね。もし何か言われたら私からも説明はしておきましょう」

「…ありがとうございます」

「ところで、話というのは?研究室に帰って話した方がいいですか?といっても私が話せる内容はたいしたこと無いので、どちらかといえばこの場で早く済ませてもらったほうがいいですね」

「そうですか、それならばこんな場所ですが早速質問させていただきます。まず、被害者について何か知っていることがあれば教えてください」

「私の授業を受けていましたから名前は知っています。ですがうちの研究室に所属しているわけではないので、交友関係など、それ以上のことは知りません」

「何か思いあることは少しもありませんか?」

「ありませんね。彼女達がなくなったのは本当に残念ですし協力は惜しみませんが、思い当たることが無いので協力は難しいかと」

「そうですか、では別のことをいいですか?」

「どうぞ」

「あなたは人気のある教師と伺っています。学生達の中にはあなたを好きになる娘もいたのでは?たとえば被害者の女性達など」

「ははは、確かに女子大生は若くて綺麗だ。そういう疑いをかけられても仕方ないかもしれませんね。しかし、私は生徒に手を出したりはしませんよ。それに人気なんてあなたが思うほど無いとは思いますよ」

彼はそういうと少し間をおいて続けた。

「それにしても、あなたは仮にも探偵、プロなら人を疑うにはもう少し慎重にならなければ。こうも疑っていますよとわかる聞き方は望ましくないのでは?捜査への必死さが伝わってくるので、私は不快には感じませんけどね。昼の時点では疑っているのを隠そうとしていたようですけど、どういった心境の変化ですか?」

「確かに、普通ならそうかもしれません。ですがあなたは昼の時点でそれをすでに見通していた。そんな方に無理やり嘘をつく必要も無いでしょう。いや、隠しても無駄だと感じてしまったんですよ。見通されているからこそこんな時間にこんな場所でも聞こうと思えるんです。疑っているとわかってもいいので時間などを配慮する必要もなさそうですし。さすがは心理学者と言うべきか、あなたは嘘をつくのも見破るのも得意でしょう?」

「はは、そうですか。いやいや、私を買いかぶりすぎています。疑ってるのを知ったのはついさっきですよ。昼の時点では疑っているのかと聞きはしたものの騙されていましたよ。心理学なんてそんなに万能ではないですから。それにあなたも嘘がうまそうだ。本気で騙そうと思えば私なんかいくらでも騙せてしまいますよ」

「いいえ、自分はしがない探偵です。正直者なんで嘘なんか言えません」

「なるほどなるほど、まぁこんなふうにお互いを「褒めあって」いてもなにもはじまりませんね。ともかく私は彼女達と大学以外での関係はありませんし殺してもいません。彼女達の殺された時間までは知りませんが、最近は大学関係者の方との食事が多かったのでもしかするとそれでアリバイがあるでしょうね。よければ調べてみてください」

たいした自信だ。

何かを隠しているようではあるが、それは殺人ではないような気もする……

しかし、ひとまずは話が出来たことが収穫だ。

事件に関する情報はたいしたこと無いが、池浦と言う人物が切れ者だということは十分感じ取ることが出来た。

今日のところはこれで…

……

ピピピピ!

静寂をかき消すようにうす暗い階段に電子音が鳴り響いた。

「すみません」といいながら携帯を取り出す。

画面には「ルナ」の文字。

まさか!

とっさに電話をとる。

「どうした!?」

「あいつがでた!窓から入ろうとしたから捕まえようとしたけど……また煙になって消えちゃった……」

「お前は大丈夫なのか!?」

「うん、ごめん」

「謝らなくていい!今そっちに行く!」

くそっ!池浦准教授が犯人ではないのか!?

さすがに目の前にいる人物が美恵子さんのマンションにいるはずが無い。

白髪交じりと黒髪と特徴も違っていた。

違うのか!?ではだれだ!?

ピッ

電話を切った俺に池浦准教授が不思議そうに聞いてくる。

「どうかしましたか?まさか、また事件?」

「いえ、まだわかりません。ですが今日はこのくらいで、すみません。なにかあったらまたお話を伺いにきますので」

「はい、私のことはいいから早く行ってあげてください。そして早く犯人を捕まえてください。そしたら、次は私を疑っていない状態で会いたいですね」

「…そうですね。では!」

そう言うと俺は階段を急いで降りた。

去り際に見た池浦准教授の顔は暗闇の中で笑っているように見えた。