Machete kills / マチェーテ・キルズ | 冷やしえいがゾンビ

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 2014/03/01、T・ジョイ大泉にて『マチェーテ・キルズ』を見ました。 (公式サイト) ロバート・ロドリゲス監督作品。脚本は別の人間なんですよねー。

 タランティーノとロドリゲスの二本立て映画『グラインドハウス』の合間に流す、ギャグとして創った予告編を本気で映画化した『マチェーテ』の続編です。元メキシカン・マフィアで鬼みたいな顔を持つダニー・トレホが主演。

[マチェーテ・キルズ予告編(海外仕様)]

 前作を見た時は「ひどいなあ。よくこれで撮る気になったな」と思いました。ギャグの多さはなかなか頑張ってると思いますがB級未満な感じ。

 今回はB級映画のレベルに達していると思います。牽引力(客の意識を物語に引きつける力)をキープしたままクライマックスに到達していました。

 牽引力をどうやってキープしているかというと、そこそこ存在感のあるキャラクターを次々と物語内で殺していくんですね。きれいどころのお姉ちゃんがほぼ死にます。この手法はなかなか面白いなと思いました。言い換えれば幼稚な手法ですけど。

 ある取引をつぶそうとしていたマチェーテだったが失敗し、警察に逮捕される。裁判もなく絞首刑にさせられるものの、マチェーテは縛り首では死なない。ぶらーんとなっているところにアメリカ大統領から直通電話が入って死刑を免れる。

 ホワイトハウスに行って大統領から「メキシコにいる麻薬王を殺してこい」と言われ、なんだかんだで引き受けるマチェーテ。

 すったもんだの末に麻薬王の拠点に連行されていくのですが麻薬王マッドマンは二重人格の持ち主で、アナーキーなキャラクターと真面目なキャラクターが交互に表れる厄介なやつ。アナーキーキャラが、自分が死ぬと同時にワシントン向けの核ミサイルが発射されるよう心臓に細工してしまったのでマチェーテはどうにかして止めようとします。

 このミサイル発射を阻止するのがこの映画の主題になってます。マッドマンは心臓に接続した安全ピンを抜いたので24時間後の発射が確定。マチェーテは殺すつもりだったマッドマンを護衛しながら、国境を越えてアメリカに入国して装置の解除ができる人間を探します。

 この目標は分かりやすいし、単純な牽引力につながっているのですが、マチェーテを演じるダニー・トレホのアクションにあまりバリエーションが無くて各シーンに新鮮さが感じられないのです。

 マチェーテを追う人々もクセのある連中ばかりで、娼館を取り仕切るガトリングブラジャー装備のオバハンとか、変装することに取り付かれた殺し屋とか。この殺し屋の変装パターンの1つがレディー・ガガ。

 終盤には黒幕であるメル・ギブソンが登場。彼のアホみたいな企みをマチェーテが阻止できるか、がクライマックスになってます。

 ギャグはけっこう面白いし、アクションシーンでのグロ描写もバリエーション豊かでもはやギャグの域に達しているのですが、マチェーテというキャラクターがもっと魅力的であるべきだと思います。

 『デスペラード』や『レジェンド・オブ・メキシコ』のマリアッチ(アントニオ・バンデラス)の方がアクションのアイディアも豊富だし、監督のロドリゲスさんはそういうセンスを持ってるのに発揮できてない感じ。

 身体能力が低い分、周りの状況を活かして相手の戦闘力を奪うパターンは多い。そういうおっさんならではの頑張りは認めるんですけど、主要キャラをぶっ倒してスカッとする描写がまったく無いんですごく残念です。娼館ババアもレディー・ガガもメルギブも取り逃がしちゃうんですよ! そんな展開で爽快感得られるかっつーの!

 というわけで続編『Machete kills again in SPACE』に含みを持たせて終わる最悪のオチでお茶を濁していた今作ですが、アクションスターになりきれないダニー・トレホと、誠意を欠くなめたシナリオはアメリカの観客にも見透かされ、興行的にコケたみたいですね。

 間違ってヒットすれば宇宙編での無茶も出来たかもしれませんがメキシコという独特の風土を生かしたシリーズを脱却しちゃうセンスもどうかと思うし。

 ロバート・ロドリゲス本人が脚本書いてないんだからこれくらいの半端な本気度に仕上がるのも仕方ないかなと思いました。