HとMとRがEZチルを作り上げる

イージーチルが Hello! Project と Movie と Ramen について綴った備忘録です。


テーマ:
シング・ストリート 未来へのうた

こちらの映画、Twitterで絶賛している方がチラホラ見られたので平日休みの日にフラッと見に行ったのですが、結果としてボロボロ落涙してズルズル鼻水を垂れ流すことになりましたとさ。

http://gaga.ne.jp/singstreet/


さっそくあらすじを追っていきます。

1985年、アイルランド・ダヴリンで暮らす主人公コナーは、不仲の両親、ニートな兄、生真面目な妹と暮らす平凡な高校生。

両親は子供達に対し「知っての通り我が家は経済的に苦しい」「検討の結果、教育面でコストカットすることにした」「コナー、プロテスタント系の高校へ転校してくれ」と言い出す。

「雄々しくあれ」を校訓に掲げたシング・ストリート高校へ行くはめになったコナーは、無秩序な生徒たち、崩壊した授業などを目にして愕然とする。

ヤンキーにケンカを売られて顔にアザを作ったコナーだったが、それをきっかけにクラスメイトの一人と仲良くなります。

下校途中、アパートの前で暇そうにしていた女子を見たコナーは積極的に話しかける。「君も学生?」「私はモデルよ」「僕のバンドのMVに出演してくれないか?」「あなたバンドやってるの?」「ああ。彼がプロデューサーさ」

口八丁で彼女の電話番号をゲットしたコナー。「よし、バンドを結成するぞ!」「What!?」

主人公がバンド結成を決意して物語が動き始めるまでのテンポがとても早く、様々なキャラクターの登場に無駄がない。

主人公がいかに不遇な状況に置かれているのかを不必要に強調していない。バンドで現状打破するぞ!みたいな悲壮感を出来るだけ描かないようにしているところが逆に新鮮でした。

惚れたあの子を振り向かせるため、バンドでMVを撮るという嘘を既成事実化しようと奔走するコナー。バンドメンバーが増えていく展開についても、かなりハイテンポで描いています。メンバーそれぞれの個性をしっかり掘り下げる事もせず、さして苦労もせずにバンドメンバーが集結するところは、ジャンルの定石からすると逆行してるかもしれない。

しかし切り詰めてテンポ良く描いていく中にも凝縮された笑いや楽しさがしっかり盛り込まれているので、決して味気ない映画にはなっていないんです。バンドあるあるを描きたい映画ではない。もっと普遍的な価値観を描いているんですよ。

いかにも80年代らしい黎明期然としたMusic Videoを撮影するコナー達。デヴィッド・ボウイに影響されまくりの派手なメイクを施した大人未満の高校生。ミュージカルにも近い音楽の使い方で、力強く前進する物語はすごく魅力的。音楽の力を信じているジョン・カーニー監督ならではのタッチなのです。

この映画からは「理想と現実のギャップ」というテーマを感じました。

コナーは学生としての自分、裕福とはいえない家庭の次男としての自分といった現実と向き合いながら、理想のバンドと理想のバンドサウンドを作り出すためにひたむきに生きようとしています。

TVの中でカリスマ性を放つあんなバンドやこんなバンド…彼らに比べたら自分たちは幼稚で未熟。敵うはずがない。

それでもやるんだよ!唄うんだよ!

金が無くてもMV撮るんだよ!

若者達のすごくシンプルな情熱が胸を打つのです。バンドマンとして生きる事で、しがらみばかりの現実がコナーの中から重みを失っていく。バンドマンとしての苦悩こそが彼にとっての現実に変わっていく。

バンド映画でありながら、音楽関係者に認められてスカウトされ…とか、評判が評判を呼んで人気者に…みたいな展開は皆無。

金もコネも名声も縁がなかったあの頃、つまり初期衝動だけで突っ走っていたわずかな期間を切り取った物語なのです。

仲間達とのかけがえのない一時、ヒロインとの距離感が少しずつ変化していく様。たったそれだけの事を軽快に描いているからこそ、この映画が素晴らしいのだといえます。

しかし本作はしっかりとしたクライマックスをいくつか用意していて(ズルい)、その名の通りに見ていた私を大号泣させてくれたわけですが、そのうちの1つが小さな港でのMV撮影シーン。

ヒロインがワンピースドレスを着たまま海に飛び込むカットを撮ろうとするところで、飛び込んだフリをしてカメラからフレームアウトするという段取りだったのですが、本番でヒロインは実際に海にダイブして主人公たちを慌てさせます。

それを見たコナーも衣装のままで海へダイブして彼女を引き上げ、その流れからキスするわけですが。

海へ飛び込んだ直後にヒロインは「中途半端はダメ。なんだって本気でやらなくちゃ!」と、年下の主人公を諭すのです。

飛び込まなきゃ始まらない事ってありますよね!それこそが初期衝動の意味ってもんでしょう!(泣) 本気になれることを探し続けて、それでも本気になれない我々を尻目に、100%の本気で何かに挑む人々を見た時、僕らは心を揺さぶられてきたじゃないですか!

リハーサルを行っている時点で「ヒロインが実際に飛び込んだら感動的だな」と自分の中に期待がふくらんだのですが、その期待に応えてくれただけでなく、さらに大きな感動を演出してくれる。もうこの段階で「この映画、最高すぎるだろ…」状態でした。

気持ちが冷える間もなくドキドキな展開が続き、続くクライマックス「3本目のMV撮影」がやってきます。シチュエーションとしては

もしかしたらこの撮影にヒロインが来ないかもしれない

という不安を抱えた状態。体育館を使い、エキストラも用意する気合いの入れよう。しかしコナーはそんな「現実」とも向き合うのです。理想に少しでも近づくために、唄う!唄う! しかし視線の先にある体育館のドアはいつまでも開かない…

そんな切なさ1000%のシーンを、「思い描いていた理想のMusic Video」と「スカスカの体育館で演奏する無名バンド」を交互に描く事でめっちゃめちゃ感動的な名場面にしているんですよ!!

この「理想のMV」がいかに泣けるものなのか、説明はしません。伏線を見事に回収する場面でもあります。

すでに鼻水はズルズルなのですが映画は物語上一番のクライマックスへ。バンドにとって初めてのギグ(ライブ)。舞台は高校の文化祭。学生アマチュアバンドの最初の一歩といえばこういう舞台でのライブデビューですが、そこが物語のラストになっている。やはり初期衝動に関する映画なのです。

このラストシーンでもカットバックをうまく使ってものすごくエモーショナルな場面にしているのですが、ここまで盛り上げたラストにしては下手な演出もチラホラ見られて、ご愛嬌。

いくつかのバンドオリジナル曲を演奏し、ライブは大成功。ノリノリだった観客がバラード曲でドン引き、という描写もバンド経験者なら共感できるところなのでしょうね。

遅れて辿り着いたヒロインと主人公が結ばれる。喧騒を抜けだした二人は手をつないで走り出す…

若さならではの勢いそのままに物語が結末を迎えるところもテーマ性にリンクしていて素晴らし
いです。

脇役の使い方がとても上手い映画でもあります。主人公の相方として作曲を担当する天才メガネ君は、コナーが迷ってる時にいつも背中を押してくれるナイスガイだし、ケンカしか能の無い馬鹿の使い方も意外でした。

しかしなんといっても、コナーの兄であるブレンダンが!!超最高!!

大学中退して家でマリファナ吸ってるだけのダメ人間なんですけど、バンドサウンドの知識は豊富でレコードもたっぷり持ってる。バンド経験もある。

コナーはブレンダンの事をちゃんとリスペクトしていて、オリジナル曲が出来れば兄の反応を窺い、助言を求める。それに対してブレンダンはストレートに意見し、弟を導こうとする。主人公にとってのメンター的存在なわけです。

そんなブレンダンが終盤になって変化を見せます。主人公はそれにまずい反応を見せ、ブレンダンの怒りを買うんですが…主人公以上よりもこのブレンダンに感情移入してしまうようなダメな大人としての自分は、このブレンダン激怒シーンでもボロボロ泣いてしまいました。

不倫したり仕事辞めたり勝手なことばかりしている両親の元で長男として生きてきて、挫折した人間の孤独感。ジョン・カーニー監督は具体的に誰かをイメージしてこのキャラを描いたのか? とにかく愛される要素たっぷりのブレンダンの事が大好きになってしまいました。この役を演じたジャック・レイナーにも注目したいですね。

というわけで、予想以上に感動的だったSing Street。この監督の前作『Begin Again』は個人的にいまいちだったのですが(レビューはblogに残ってます)、今作はドツボ! まんまとやられました。親子でも、デートでも、孤独を感じてる男女でも! 万人にオススメできるさわやか感動作です。絶対に見るべし!!!
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衝動的に映画の感想をアップしてみます。サボりすぎでごめんなさい。

今回紹介するのは『名もなき復讐』。韓国映画です。

シネマート新宿が主催中の「反逆の韓国ノワール2016」(リンク)という、4作品のセレクション上映のうちの1本です。4作品すべて観賞した結果、この『名もなき復讐』がダントツで面白かったので記事を書きたくなりました。


主人公・ジウン(♀)は競技射撃の有望選手で、学生時代からオリンピック出場を期待されていた。家族で車に乗って移動中、若者達の乗ったバイクが煽ってきて車が横転。両親は死亡し、ジウンも言語障害が残ってしまった。

年月が過ぎ去り、ジウンは工場でアルバイト生活。共に働くのは、こすいおばちゃん、ゲスいおっさん、幼なじみ(♀)などなど。

幼なじみは上司のおっさんに狙われていて(エロスな意味で)、主人公はそんな上司のゲスさと、煮え切らない幼なじみの態度にイラついている。

アルバイト先の飲み会で上司から酒を飲まされ続ける幼なじみを見たジウンは彼女を飲み会から強引に連れ出すが、「余計な事しないで!」「正社員になるためには仕方ないの!」と、思わぬ形で拒絶される。

そんな傷心のジウンは突然路地裏で若い男3人に襲われ、レイプされる。

「なぜ主人公が標的にされたのか」については描き込みとしてかなり甘いし、演出が中途半端な部分はあります。「たとえ主人公が健常者であっても、この場所じゃ叫び声は届きそうにないな」みたいな絶望的な状況をもっと整備すべきだったと思う。

ジウンはそのまま警察署へ出向いて被害届を出すものの、対応した刑事がクズ野郎。序盤からこの男についてはイヤな奴であることが説明されていたのですが、ジウンの対応でキャラクターに対する嫌悪感が決定的なものに。「話すのが苦手でも叫び声はあげられたんじゃ?」「ジーンズを無理やり脱がせるのは難しいんだけどなー」などと、被害者への配慮ゼロな言動を繰り返します。

反逆の韓国ノワール2016ラインナップ作品を見ていて「心底腹が立つようなキャラ、胸糞悪くなるようなキャラが居ないなあ(残念)」と思っていたのですが、その点この作品は素晴らしい。嫌悪感を着実に上乗せしていきます。

クズ刑事に代わってジウンをフォローすることになったのは女刑事。準主人公的な深みのある描き方で物語を引っ張っていきます。

クズ刑事によるセカンドレイプの後で帰宅したジウンを待っていたのは3人組のうちの1人。ジウンの身分証に載っていた住所を見て自宅を突き止めたとか。

自宅が判っていたとはいえ、ジウンより先に家に上がり込んでるのは不可解ですが(ピッキングしたのかもね!)、恐怖演出の延長だと思うことにします。

「身分証届けに来たんだぜ。俺ってやさしいからさ」とか言いながら男はジウンをレイプしようとします。畳み掛けるような展開なので演出のバランス的に難しい。監督と編集がその点をうまくやりきってるとは言い難いのですが、見ている観客にストレスを与えて感情移入させているのは間違いないでしょう。

ジウンは枕元にあるガラスのトロフィーでレイプ魔3号を攻撃。結果的に殺害してしまうことに。呆然としたままシャワーを浴びているところに訪ねてくる女刑事…部屋には死体が放置されていて…

この「ああ殺してしまった。どうにかしなければ」展開は、チルが親しみ、愛してきたノワールの典型であるため、「よしよし乗ってきたぞ」みたいな感覚を味わえました。

人を殺してしまった罪悪感で人格が崩壊していくジウン、そんなジウンを他人事とは思えずに気遣う女刑事。

交わりそうで交わらない、2人の時間軸が物語を力強くリードしていきます。

ジウンの心理が不確定な時間帯を越えてから、この作品は特定のジャンル映画に変貌します。そのジャンルとは、

ヴィジランテもの。

正義感に目覚めた人物が、自らの力で悪を成敗しようと試みるタイプの物語。決してその正義はスーパーヒーローのような圧倒的な能力によって行使されるわけではなく、市政の人物だからこその弱さを兼ね備えていがち。

しかしこの作品の主人公ジウンは、工場のアルバイトからは想像できない圧倒的能力を持っています。

オリンピック候補になるほどの射撃技術。

しかも女性で、なおかつ社会的弱者と見なされていた主人公が射撃の名手であるという設定が見事。多少リアリティに欠けるとしてもヴィジランテものとしては最高のお膳立てなんですよ!!つまりこれは「なめてた相手が実は殺人マシンでした映画」の一種でもあるのです。

同じく韓国映画の最高峰『アジョシ』では「なめてた質屋が実は特殊工作員でした」という設定で我々の溜飲を下げてくれましたが、この作品がアジョシと違うのは

主人公がムカつく奴らを全員殺してくれる

のです!!!某作の名キャッチコピー「街のダニども、全員死刑に処す」が頭に浮かびました!そして同時に映画館で身悶えしました!

この映画のあらすじを読んだ時にレイプ野郎への復讐ものであるという認識はあったものの、「その範囲」で収まっていたらそれはそれで物足りないだろうなぁ…なんて感じていました。

収まらなかったのです。

ジウンが風呂場で湯船に全身を沈めながら目を開き、天井の照明を見つめるというシーンがあります。意図が見えづらい表現ではある。しかし私は、この描写を見た瞬間に自分の中で「これはもしかして、ジウンが覚醒する前触れなのでは!?」と、一気に期待感が膨らみました。覚醒してくれ!と強く願いました。

そしてその期待にジウンはしっかり応えてくれました!クズ刑事が持っていた拳銃で、街に蔓延るゴミ男たちを次々と殺していくのです。『イコライザー』でデンゼル・ワシントンが覚醒した瞬間にも似た快感を味わえました。

一線を越えてからのジウンは躊躇しません。相手に懺悔を求める事もせず、無言のままで銃を構え、この上なく的確に撃つ。

復讐のための殺人だけではなく、害悪というべき存在の抹消にも踏み込んでくれたからこそ痛快なカタルシスが生まれるのです。

ジウンによる連続殺人は警察の知るところとなり、女性刑事を中心に捜査が進められるわけですが、ジウンが容疑者として捜査線上に上がるまでにタイムラグを生じさせることで映画としてのスケール感に繋がっています。

被害者たちの共通点がなく、同一犯によるものという確信が得られない。動機が見えない。

少しずつ結び付く状況証拠と、レイプ被害者としてのジウンが持つ過去の傷。それらから導き出される犯行動機…追跡者=警察側の思考をちゃんと描くことでサスペンスドラマとしての骨子がしっかり形成されていく。

なおかつミスリードからの意外な展開にも事欠かず、設定だけの出落ちシナリオにならなかった見事な仕上がりを見せつけられた形。

テーマ的にもなかなかに深みのある作品だと思います。他人の罪を許す事の意義もちゃんと描いているのに感動。

オーラスの展開はジョー・カーナハン監督のあの映画へのオマージュだと思うのですが、そこにチャレンジしておきながらも真意が分からないような行動を描いていて、とても味わい深かったです。

名もなき復讐、今年見た韓国映画ではナンバーワンのお気に入り作品となりました。映画館で上映されるのは東京・大阪ぐらいかもしれませんが、ソフト化の際には是非見ていだきたい1本です!!

この作品に関する余談ですが、主人公ジウンを演じているシン・ヒョンビンさん。初めて見かける女優さんだったのですが…

アップアップガールズ(仮)の佐保明梨さんにめちゃめちゃそっくり!!!

シン・ヒョンビンさん↓




佐保明梨さん↓




カットが変わるたびに「えっ?佐保ちゃんだよね?」「佐保ちゃんに似てないところが見当たらないよね?」「どう見ても瓜二つだよね?」と、別のところで大興奮しながら見る事が出来ました。

佐保ちゃんそっくりシン・ヒョンビンさんをこれからも応援していこうと思います。

佐保ちゃんは現役バリバリのアイドルでありながら、蹴りで木製バットを折るほどの空手女子でもあります。お見知りおきを。


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バットマン vs スーパーマン
ジャスティスの誕生

見てきました。

バットマンとスーパーマン、2人のスーパーヒーローがなぜ戦うのか? どういった経緯で2人が拳を交える事になるのか=動機を観客の多くが観に来ている。 

しかしこの作品で提示される動機は物凄くあやふやで曖昧である。

バットマンがスーパーマンを憎む理由は、冒頭で描かれる「『マン・オブ・スティール』の裏側(別視点)」で全て説明されている。製作陣はそう思い込んでいるが、説得力がまったく感じられない。

オープニング以降、バットマン(ブルース・ウェイン)がスーパーマンに対してヘイトを抱く理由が描かれないにも関わらず、バットマンはスーパーマンとの対決に向けて自動的に進んでいく。

スーパーマンの活躍に嫉妬するバットマン、こういう構図ならまだマシだったとさえ思う。 
 
そもそもこの映画、どのキャラクターも「何がしたいのか分からない」。バットマンはどこに向かっていたのか? どのような世の中を望んでいたのか? そのためにどんなアプローチをしていたのか? 描こうとしていない。理解できない。

スーパーマン(クラーク・ケント)もしかり。超人として人命救助しているだけでは飽き足らず、新聞記者の身分を利用して積極的に世論を操作しようとする。そこに存在するべきイデオロギーが見えてこない(描こうとしていない)ので、記者クラーク・ケントの意思に反する立場の編集長との軋轢の構図が理解できないし、そこから発生するべきスーパーマンへの感情移入も不可能。

この作品で唯一明快なのは、レックス・ルーサーという悪役キャラの方向性。彼はクリプトン星の技術を悪用してカオスを生み出そうとしている。方法は違えどジョーカーのような動機を持ったキャラクターである。

レックスが悲願の成就に向かって邁進していくのに対し 、バットマンとスーパーマンの目的は設定されず、両者はヒーロー同士の激突という「目的になるはずのないゴール」に向かって進んでいく。そういった展開のお粗末さに途中からやきもきし、イライラしてくる。

レックスの方向性が明快とは書いたが、あくまでも相対的な見方であって、彼の狙いの全貌が明らかになるまで膨大な時間を要する上、明らかになった途端に「おまえそんな小物だったのかよ」と落胆させられる。(そのレックスが迎える末路、なんだありゃ?) 

ひたすらにカオスを望むだけの悪役なら、カオスに対する抑止力としてのスーパーマン(あるいはバットマン)に向けてヘイト(憎しみ)を貯め込んでいく展開が必須だが、大金持ちの道楽の延長線上で終始楽しげに目的を遂行する姿には『ダークナイト』のジョーカーのようなカリスマ性は感じられず、非常に矮小化された悪役に成り下がっている。

動機が見えないのはクラーク・ケントの恋人であり新聞記者でもあるロイスも同様。中東のテロリストに捕まっているシーンから登場するが、どういう経緯で捕まったのかを省略するのはまだしも、ただの新聞記者が何のためにリスクを冒したのかが分からない。

理解できない展開の中でロイスがスーパーマンに助けられたところで何の感動もない。中東なのにレックスコープ製の銃弾が使われた謎が提示されるものの、果たしてその「謎」に興味を持てる観客がどれくらいいるのだろうか? キャラとキャラをつなげる接点の作り方が大雑把すぎる。

一番理解できないのがワンダーウーマンというキャラ。『ダークナイト・ライジング』におけるキャットウーマンのような立ち位置で度々登場するが、彼女の動機も圧倒的に描写不足だし理解できたところで同情しようがない。クライマックスで颯爽と登場して美味しいところをかっさらうのは結構だが、彼女をメインキャラの一人として感情移入させる努力をするべきだった。


レックス・ルーサーが目的を達し、カオスが生じたところでようやくスーパーヒーローとして覚醒するワンダーウーマン。お預けを食らっていたマゾ奴隷は喜んだかもしれませんが、そこに至る手順の稚拙さで完全に冷めてました。(でもワンダーウーマンのテーマ曲はマッドマックスに通ずるジャンキーXLテイストで良かった!) 

バットマンがスーパーマンを憎む理由は凄く曖昧。じゃあスーパーマンがバットマンを憎む理由は? これも曖昧というか、こじつけるにもひどすぎ。「バットマンは自分の街の一部しか守らない」と非難じみたセリフを言わされているスーパーマンですが、ヘイトの動機として描かれていると言うには程遠くて。

結局は「レックスに育ての親を人質に取られて脅迫されたからバットマンと戦う」という馬鹿馬鹿しい理由で対決に向かうのです。スーパーヒーローとして最も高貴なはずの男が、テロリストの脅迫にあっけなく屈する。その発想は無かったわ!(怒) 彼女がさらわれた時はどんな場所でもすぐ助けに来るのに、母親への暴力には無力なのも雑。

クライマックスの戦い自体はテンションも高くてデザインも悪くない。だからこそ、ここに至るまでの展開が雑すぎた事に腹が立って仕方なかったです。各キャラクターが情報を入手する経路がどれもピントずれてて理解できない。脚本も編集もおかしい。

前半から中盤にかけてのアクションシーンはどれもこれも駄目! 中東っぽい砂漠地帯でバットマンが傭兵と格闘した末に捕獲されるシーンはダークナイトトリロジーの時より退化している。キレも無いし説得力も無い。おまけにバットマンがスーパーマンによって覆面を脱がされるのも含めて全部バットマンの夢だったというオチ。予告編で使っておきながら「夢でしたー」って客を舐めてるとしか思えない。ひどすぎる。

バットモービルを駆使してのカーアクションも低調すぎてビックリ。ダークナイトの実写にこだわったがゆえの重厚感とスピード感に比べて、CGっぽさが隠し切れない今作はフレッシュな描写も少なく、見ていてどんどん酸っぱい顔になっていきました。(フレアを発射して着弾回避するのは良かったけど) 最後にバットケープに入るところが一番カッコ良いという皮肉。

クライマックスはクライマックスで、ドゥームズデイが現れた時の「うわ、カッコ悪」という印象は否めず。もっとデザインどうにかならなかったのか。攻撃してもそのエネルギーを吸収するという理屈は分かるけど、自分中心に爆風(衝撃波)を轟かせる唯一の技らしきものを乱発するのも馬鹿馬鹿しい。無駄なインフレ感。

ドゥームズデイを倒す唯一の武器、クリプトナイトで作った槍をめぐる展開もドタバタしすぎ。ロイスが槍を水中に捨てる行動、なにあれ? 意味が分からない。スーパーマンに害をなすクリプトナイトを廃棄しようとしたの? クリプトナイトがスーパーマンにとって天敵である事を知る描写はありましたか? (あったかもしれない) 行動原理が理解できないロイスが槍を再び引き揚げようとして溺れそうになってても「馬鹿かよ」としか思えない。

・・・とまあ、色々書いてきましたけど。

バットマンとスーパーマンが戦う映画を見に来たとはいえ、両雄のうちのどちらかが勝利するという結末にならない事は容易に想像できるわけで。両雄の激突と、両雄が立ち向かうべきラスボスの登場に向けて、いかにして期待感を高めていくのか、それに向けてどう工夫しているのかを2時間半の上映時間で見せつけて欲しかった。

しかし結果として出てきたのは「ストーリー展開なんてどうでもいいよね? ポイント(主にアクション)だけ適度に頑張って、残りは編集でどうにかしまーす」みたいな醜悪な意識の集合体。

製作費として2.5億ドルもつぎこんだ超大作アクション映画のシナリオがこれほどまでに歪である事に愕然としたし、怒りさえ覚えました。なぜ腹が立つかって、DCコミックス系のヒーロー大集合シリーズ『ジャスティス・リーグ』の布石でしか無かったという点。ゴールを設定して、そこに到達さえすれば観客の期待に応える事が出来ていると勘違いしている製作陣の意識の低さ。クリストファー・ノーランも関わってるのになんでこうなるのかな…

以上、2016年ワースト映画『バットマンvsスーパーマン』についてのレビューでした!
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