「鎌倉三代記」は、執権・北条時政と対立した前将軍の息子・頼家公が戦争していて、「坂本城」は落城寸前、最強武将・佐々木忠綱も戦死して首を取られたと伝えれれる。
なんだそりゃ、歴史的にメチャクチャな設定だな、と思ってはいけないんだよな、歌舞伎では。「忠臣蔵」と同じで、これは実は、何か別の時代の、はっきり言うとヤバイ話を「暗号」にして描いているんだよね。
城方の三浦之介と婚約している時政の娘、時姫は、父の使いに連れ戻されそうになるが、「連れ戻した男に、妻として与える」と言われたと知って大ショック・・・。
ああそうか、これは、千媛だ。頼家は秀頼のこと、時政は実は徳川家康のことなんだ。つまり、これは鎌倉時代のフリをした「大坂夏の陣」の芝居なんだわ。こりゃあ、ヤバイよ。江戸時代に!
時姫を連れ戻しにきた男(幸四郎)は、世を忍ぶ仮の姿で、実は佐々木高綱が生きていたのだ! 引き抜きで衣装が変わると、そこには銭をちらばした模様が。つまり「六文銭」、こいつは、実は真田幸村なんだわ。うああ、江戸時代によくぞ、こんな芝居を作ったもんだな。やばい。
しかし逆にいえば、江戸幕府は、庶民が真田幸村を持ち上げることを、暗に公認していた、とも言えるんじゃないか。「家康を追い詰めた武将」を、敵ながらアッパレと言っておけば、結果的に徳川の株も上がるって。幕府はけっこう上手くガス抜きしていたのかも知れない。
と、いうことで、歴史マニア的には、歌舞伎座はいつも、けっこう楽しい。