地方都市のひなびた町を歩いていると、その堆積した時間と歴史を
かざす様に立つ建造物が、突如現れることがある。
ここ三重県の中心地「津市」で、遅めのランチを食べようと、
ふと目に入った“大門商店街”へ立ち寄った。
商店に寂しく流れるBGMが、
やけに大きく不気味に聴こえるのは、
人が見当たらないからだろうか。
そんな寂れたアーケードを抜けると現れた
古めかしい建造物。頭上看板には飲食店街の文字…。
地元民に愛される美味しい定食があるのだろうと、
期待を胸にし入ったならば、そこは
人ひとりも見当たらない闇の巣窟と化していた。
スナック旅路、路…
所々破れたネオン看板から察するに、
旅への時間はここで絶たれてしまったようだ。
闇へ射しこむ出口の光が、
皮肉な道しるべの様に美しい。
どうやらここは浅草、大須に次ぐ日本三大観音の一つ
「津観音」があり、その門前町で栄えた場所だという。
しかしここでのその賑わいはとうの昔に断ち消えた様だ。
浅草寺や大須観音前のアーケードの賑わいを思い返す。
老若男女の参拝客で賑わい、その後でゆっくりと
お土産屋や飲食店がひしめく商店街を練り歩く、
その楽しみ。
移ろう歴史の中、浅草や大須が、万が一にでも
この様になる確立はゼロとは言い切れない。
ここ大門がかつて賑わった門前町だった様に。
そう感慨深くふけりながらも、
四方八方に拡がるさらなる深部へ。
…続く。