2013年、特に12月は、日本の政治・外交において重要な時期だったと思う。そこで忘備録として現時点で考えていることを書いてみたい。
まず、防衛戦略についてだ。第一回の日本版NSCで国家安全保障戦略が今月決まった。これは、「国防の基本方針 について」(昭和32年5月)に替るものとされた。つまり56年ぶりの改定である。本文に、今後10年程度を念頭においていると書いてある。
今までの日本の防衛政策をまとめてみよう。
明治40年(1907年)の帝国国防方針では、東アジアに対しては攻勢にでるという、攻勢防御の方針になった。この方針自体はおかしなものでない。しかし これは、日露戦争に勝った結果、日英同盟が改訂され、秘密条項でインド防衛の義務が日本に課されたことが関与している可能性がある。そして方針自体が軍事 機密で総理大臣も最終決定から排除されていた。このため誰もわからんうちに、攻撃的な方針を受け継ぐということになってしまったように思える。
戦前は帝国国防方針が10年に一回ぐらいのペースで改定されていたが大きく変更されなかった。
1957年の国防の基本方針についてでは、専守防衛の方針となった。これもおかしなことではない。アメリカは海軍国、中ソは陸軍国である。そこで米英とし ては、ヨーロッパを主戦場として、極東では守勢をとる。島国である日本本土を戦場にして、海上封鎖で侵攻軍を痛めつけようという計画である。政府の政策は それに沿ったものである。国民にとってさんざんなもののはずだが、大好評であった。
ちょっと陰謀論を書いてみよう。
2013年の国家安全保障戦略は、積極的平和主義となったそうだ。なんだかよくわからないが、専守防衛は日本にとっては全然合理的でないのでこれは良かったといえる。しかし、これも中東かインド洋の防衛義務の密約が日米間にあるのではないか。
具体的な課題について知らされずに、原理原則が独り歩きする危険があると指摘しておく。
ところで、防衛戦略であるが、外国では長期の防衛戦略を持たない国がある。具体的には米英だ。戦略は毎年書きなおしている。敵が現れたらやっつけようとい うわけだ。未来に何が起こるかはわからない。だから方針を決めても仕方がないというのも、一つの立派な見識である。この場合、防衛力の整備には時間がかか るので、10年程度の計画を立てている。基盤的防衛力を整備し、10年後に戦争になりそうな国に対して準備するわけである。これも、軍事大国で、アメリカ に対して戦争したい国があまりないということもあるかもしれない。
国家安全保障戦略について:首相官邸
http://www.kantei.go.jp/…/afiel…/2013/12/17/20131217-1_1.pdf
(2015年8月23日に転載)