専門じゃないって書いてて欲しかった! | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

昨日のブログで書いた、痔の薬の影響を心配して中絶した女性患者さん、

遠方から長時間かけて大阪肛門科診療所に来られたんですが、

実は薬で治らないくらいひどい脱肛肛門ポリープ随伴裂肛で結局、手術治療したんです。

スッキリ完治してとってもお元気になられましたが、肛門科の医療について色々とご意見を書いて下さいました。

うちの診療所では50年前から患者さんが手術治療体験記を書いて下さっています。

実名で何ページにも渡り詳しく書いてある手記や、イラスト入りで漫画になっている手記や、本当に皆さん、天才コピーライターか!って思うような内容です^_^;

私のこのブログも患者さんの言葉がたくさん入っています(*^_^*)

話がそれましたが、昨日のブログの女性患者さんも今までの経緯から肛門科医療の問題点まで色々と書いて下さったんです。

その女性患者さんは肛門科を受診するに当たり女医さんを探したそうです。

ネットや雑誌・書籍などで色々と調べて私の存在も知っておられました。

でも・・・遠い!

受診したいけど通うのも無理だし・・・


ということで少しでも近い距離の肛門科で、女医さんがやっているところを探し当て受診されたそうです。

そこは確かに肛門科も標榜しています。

でも専門じゃなかった。

でも、患者さんには専門かどうかは分からない。

看板に、病院やクリニックの名前に「肛門科」って入ってたら専門だって思ってしまうようです。

その女性患者さんの手記より引用します。

「3年間、ずっと通い続けました。でも、肛門の診察をしてもらったのは初めて行ったときの1回だけで、そのあとは話だけ聞いて『じゃあ薬出しときます』と薬をもらうだけ。病気についても、治療についても、いつ治るのかの説明もなく、1分くらいの診察で先生に質問も出来ませんでした。ホームページには肛門専門外来って書いてあったので、専門の先生だと信じて通院してました。でも、何ヶ月たっても、何年たっても良くならない、それどころかどんどん痛みはひどくなっていくし、排便の後に出てきたモノを戻すのに30分以上かかるようになり、薬で治るわけがないと思い、大阪まで受診しようと決心しました。」

クリニックのホームページには医師の経歴を掲載している先生もおられます。

調べてみるその患者さんがかかっていた先生は肛門科の医師ではなく乳腺外科を専門にしている医師でした。

私たちからすれば専門外だということは経歴を見ればすぐに分かるのですが、患者さんにとったら「看板に書いてあるということはちゃんと勉強して自信があるんだ」と捉えるようです。

しかも「肛門専門外来」と書いてあると、確かに専門の先生が診てくれるのだろうと思ってしまいますよね^_^;

でも・・・

肛門の診察をしない肛門科医はいないと思います。

私たちは毎回、必ず肛門の診察をしています。

初診の患者さんも再診の患者さんも肛門の診察をします。

でないと、なんで肛門科に来たの?ってなりますよね^_^;

オシリ見せない肛門科って肛門科じゃないと思います^_^;

また肛門科の専門医肛門を専業としている医師は全国でも少ないため、同業者は大体、把握しています。

特に女性医師は少なく、私が専門医を取得したときは全国で20名もいませんでした。

特に関西では当時、肛門領域の専門医は私一人だったので、患者さんが言うところの「肛門科の女医さん」は、私たち専門医にしたら「他の科の先生が肛門科もやっている」という事情であることはすぐに分かりました。

その女性患者さんだけではありませんでした。

皆さん、「女医さんに診て欲しい」のではなく「専門の女医さんに診て欲しい」のです。

「専門じゃないんだったら、ちゃんとそう書いてて欲しかった!」

と手記に大きな字で書いておられました^_^;

blog161

診療所のセラピードッグ「ラブ」
犬のようちえんは「犬専門」です
ネコはいません^_^;
どれがラブか分かりますか?



医師選びをする際に、専門家(スペシャリスト)に診て欲しいのか、総合診療医(ジェネラリスト)に診て欲しいのか、患者さんによって好みも分かれるでしょう。

でも日本では「自由標榜制」と言って、医師がクリニックを開業するとき自由に診療科を掲げることが出来ます。

昔は「〇〇内科」とか「〇〇小児科」とか一つの標榜科を掲げる施設が多かったですが、最近では「〇〇外科・内科・胃腸科・肛門科・放射線科」など、複数の診療科を掲げるケースが多いです。

でも大抵、医師の専門は一つです。

看板に書いてあるうちのどれか一つが専門です。

どれが専門なのかは分かりませんよね^_^;

つまり、「医師免許さえ持っていれば誰でも肛門科を掲げられる」ということなんです。

だからいくら患者さんが「騙された-!」と怒ったところで違法じゃないんです(-_-;)

多くの患者さんから専門が分かりにくいというご意見を頂いています。

「一つの診療科だけを掲げるようにする、それが無理なら、専門の診療科を大きく書くとか赤字で書くなど、患者に分かりやすい看板にして欲しい」

というご意見が多かったです。

「先生のところの看板は分かりやすいわ~。肛門科しか書いてないもんな~。でも、入りにくいわ~。」

ってよく言われます。

そうですよね^_^;

肛門しか書いてない^_^;

他の科が書いてある方が入りやすいかもしれません^_^;

だって何の病気か分かりませんからね^_^;

大阪肛門科診療所だと「肛門科の患者さん」って分かっちゃいますからね^_^;

でも施設の名称は私たちの誇りです。

「大阪肛門病院」から「大阪肛門科診療所」に名称変更するときも、「佐々木クリニック」にしようかという意見もあったのですが、100年続いている肛門科として、肛門科という名称を捨てることは出来ませんでした^_^;

だから患者さんには「恥ずかしくて入りにくい」という不便をかけますが、この名称を貫きたいと思います^_^;

でも・・・

建物の看板は目立ちません。

ちょっと見ただけでは病院って分からないですよ^_^;

たくさんの患者さんから「思ってたよりも入りやすかったです」って言ってもらってます(*^_^*)



あなたは肛門専門の先生にかかっていますか?

看板に「肛門科」って書いてあっても専門とは限りません。

専門の先生に診て欲しいのなら、ちゃんと調べましょうね。