お世話になったA先生から聞いた、故 隅越幸男先生のお話です。
隅越先生は、日本が誇る痔瘻の分類を提唱した先生です。
現在も隅越分類として広く治療に活用されています。
私が若い頃勉強した施設で、当時大御所のような存在の方でした。
当然、肛門科の面々は隅越先生の直の弟子と、孫弟子で構成されておりました。
幸いなことに私も直接教えていただきました。
本当に末の席におりました。
A先生は隅越先生の直のお弟子さんでした。
確か、隅越先生は当時還暦過ぎくらい。
まだ若かったA先生に、隅越先生がおっしゃったそうです。
「A君、僕はようやくお尻のことが少し分かってきたよ。」
A先生はその言葉にひっくり返って驚いたそうです。
そりゃそうです。
当時、名実ともに日本の肛門科医の第一人者であった隅越先生の言葉です。
その頃のA先生は、隅越先生に弟子入りして何年も修練を重ね、肛門科診療に関してはかなりの自信が付いてきたと感じていた時期だったそうです。
「こりゃあ、とんでもない世界に入っちまったな・・」と思ったそうです。
隅越先生ですらそうだったのですね。
(隅越先生だからこそ、そうだったのだとも思いますが。)
この言葉を思い出しては、襟を正すのです。
謙虚な気持ちを忘れずにいなければ、と思います。