中国の弾圧に抗議して焼身自殺をはかった21歳のチベット僧息を引き取る
中国四川省で中国のチベット統治に異を唱えて焼身自殺をはかったチベット人2人のうちの1人が息を引き取った。
死亡が確認されたのは、チメ・パルデン(21)。3月30日にバルカムで焼身自殺をはかった2人のチベット僧(⇒詳細はこちら )が運ばれた病院に詰めかけたチベット人100人に悲報がもたらされた。
当初、中国当局はチベット人の抗議活動参加者の要請を拒み、人々を拘束・殴打したという。しかし、状況が緊迫してくると、強硬な姿勢を緩めたという。ダライ・ラマも住むインドのダラムサラの僧侶カンヤク・ツェリンからの情報だ。
ツェリンによると、中国当局は、チベット人に対し、チメがすでに火葬されたこと、共に焼身自殺をはかったテンパ・タルギャルが重態であることを伝えたという。
「タルギャルの容態は悪く、命を取り留める可能性は非常に低いそうです。」
タルギャルの容態を見るために病院内へ入ることを許されたチベット人の声を、ツェリンは伝えた。
「そのときに、中国当局が、チメ・パルデンの死亡と、すでに火葬が終わったことを伝えたのです。」
2009年以降、チベット本土で焼身自殺をはかったチベット人は33人に達した。彼らは、中国のチベット統治に異を唱え、ダライ・ラマのチベットへの帰還を求めていた。
死
チメ・パルデンの死をもって、焼身自殺をはかったチベット人のうちの24人が死亡したことになる。
パルデンの亡骸は、31日、バルカムのギャルロン・ツォドゥン・キルティ僧院に引き渡された。30日に焼身自殺をはかった2人はともにこの僧院の僧侶だ。
31日、パルデンに祈りを捧げるため、人々は僧院に集った。中国治安部隊が僧院へ差し向けられたが、抗議の声をあげたチベット人の大群衆により、行く手を阻まれた。
チベット人の大規模な抗議活動を防ぐため、宗教部門の役人が妥協をしたこともあり、緊張は緩和されている。治安部隊も兵舎に戻っていた。
「両者が合意に達し、状況は一時的に落ち着いています。もし中国治安部隊が僧院を急襲すれば、チベット人は抗議を行い、状況は緊迫するでしょう。」
とツェリンは語った。
2人の僧侶が自らの体に火を放ったのは30日。バルカムの中心であった。中国治安部隊は、消火活動を行い、2人を車両に乗せて病院へ運んだ。
チベット人のいつ止むともしれぬ焼身自殺が続く中、中国当局は、チベット自治区、四川省、青海省、甘粛省で監視を強めている。
僧院からは僧侶数百人が連行され、多くのチベット人作家、芸術家、歌手、教師がチベット人のアイデンティティや人権を主張したとして投獄されている。
届かぬ願い
チベット人の指導者やコミュニティのリーダーが焼身自殺を思いとどまるよう諭してはいるものの、焼身自殺は止まらない。
中国政府は、ダライ・ラマがチベットを中国から分離独立させるため焼身自殺を扇動しているとして繰り返し非難している。
先週、胡錦濤中国国家主席がニューデリーを訪れた際、チベット難民ジャンペル・イエシが焼身自殺を遂げた。この件でも、中国政府はダライ・ラマを非難している。
ジャンペル・イエシは燃料を体にかけた後、自らの体に火を放ち、通りを駆け抜けた。その後、病院へ運び込まれたが、体の90%以上に火傷を負っており、死亡した。
ジャンペル・イエシはインドで焼身自殺を遂げた2人目のチベット難民となった。1人目は、1998年のツプテン・ンドドゥプだ。
ダラムサラのチベット亡命政権首相ロブサン・センゲは、この半世紀にわたり中国政府が「チベット人とその文化を根絶やしにしようとしてきた」として非難している。
【亀田浩史訳】
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