公衆衛生には下記の段階があります。
1 問題が特定される
2 問題があると多くに認識される
3 解決策が特定される
4 問題は解決すべきだと多くに認識される
5 問題に対して解決策が施行される
6 効果的な解決策か検証される(指標などを用いて)
7 検証結果により解決策が維持されたり改善されたりする
1は疫学などの出番ですし、3や6はRCTの出番だったりします。
これらは公衆衛生専門家のお仕事。
しかし、それ以外は、報道やスキャンダルや政権イメージや国際的規範設定などいろんな要素が絡みます。
例えば、MDGやSDGの項目の一つとなれば、それまで2にも至らなかった課題が1-7を一気に行うべき課題になることもあります。
オリンピック開催目前のブラジルにとってはジカウィルス感染症対策は1-7を一気に行うべき課題であり、さらにちゃんと取り組んでいることを世界に宣伝すべき課題です。
しかし、多くの公衆衛生上の問題は、国家レベルや国際レベルの関心ごとにはならず対策は遅くなることが多いです。1から3まで及び6や7は、公衆衛生専門家だけで進められたとしても、それ以外の段階は政策決定者が「なるほど!それだ!やろう!」とならないと進みません。
そうなるために最低限必要なのは、公衆衛生専門家から政策決定者への意見が単純明快であることであり、政策決定者にも旨みがあることです。
この複雑な公衆衛生の内容を単純明快にすることの難しさ!
エビデンスをギュッとして、俳句並みにしないといけません。 こちら
こちら
こちら
例えば、「エイズ」は国家、国際社会が大きく動いた課題です。
また、「SARS」「新型インフルエンザ」「エボラ」も国家、国際社会が大きく動いた課題です。
両者は課題としての性質も異なり、世界の動き方も異なりましたが、詳細は上記リンク先を。
エイズ対策は「エイズ感染予防のためにコンドームを使用する」という単純明快な解決策で1-7が進みましたし、保健機関ではなく国連が動き、保健を超えた社会の問題として取り組みが進みました。
「SARS」「新型インフルエンザ」「エボラ」は、「各国でIHR実施」という解決策となっていますが、IHRに含まれるものは項目が多くコンドーム推進より複雑で、時間がかかりそうです。
4や5のあたりで、「解決が必要なことは分かったよ。でもどうやって?本当にそんな理屈どおりに行くの?」っていう疑問に応えるには、ケーススタディなどの成功例は有効と考えます。
WHOのこんなシリーズも一案くれると思います。
公衆衛生の問題は、公衆衛生・保健関係者は認識しますが保健に特段興味のない人には見えないことが多いです。
逆に、社会のあらゆる問題(例えば、不平等な処遇、大気汚染など)は、結果として病気や怪我として保健の問題になることが多いです。
公衆衛生・保健関係者はそんな上から下からくる保健問題を、保健だけを取り扱っているわけではない政策決定者たちに分かりやすく伝えていかなくてはいけません。
これまでの見聞及び経験からすると、その「分かりやすく」「単純明快に」の目安は、上記にも記載した俳句もしくは箇条書きで4つ以内くらいかと思います。
よく言うエレベータートーク(エレベータにたまたま乗り合わせた相手に目的階に着く前に要点を伝えてその気にさせる)くらいの長さでさらっと伝えられるくらいが目安でしょうね。
これを徹底的に感じたという意味においても、現職を経験して良かったです。
よりによって精神保健とか人権とか込み入った課題に取り組んじゃっている私は、自ら難題を背負っている気がしますが、「私がやらずに他に誰がやる!」とも思います。
5年、10年前に比べたら、国際精神保健の関係者はずっと増えましたが、それでもまだまだ少ない。
他に込み入っているといえば、産業界とかからチャチャが入りながらも上手に前進しているタバコ対策のFCTCでしょうね。
どこかに軸を置きつつも俳句スタイルも併せ持って1-7のいろんなところに出没するようになりたいです。