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「え?株主!?」
ワタルは頭の中が真っ白になった。
そして、一瞬のうちに頭の中を疑問がぐるぐると回った。
(サガワさんはお金を貸してくれただけじゃないのか?
株主は、リュウジと俺の二人じゃないのか?
株主はそもそも何の権利があるんだ?)
サ「おいおい、目を丸くしてどうしたんだい?」
ワ「い、いや・・・」
焦るワタル。
しかし、サガワは優しく微笑んでこう言った。
サ「ワタル君、うすうす気づいていたよ。きっと君とリュウジ君は、私が“株主”とは思っていない、そして、株主である手続きをしていないってね。」
ワ「えっ、気づかれていたのですか…。すみません、私は全然知らなくて…」
サ「ワタル君、出資をしたということは、株主なんだよ。当然、株主としての権利ももらわない困るなぁ~」
穏やかだが、いつもより重圧感のある声で、サガワさんは言った。
思い起こせば、登記についてはリュウジに任せきりだった。
ワタルはあらためて後悔した。
そういえば、昔、独立起業研究会でタチバナ先生が言っていた。
「株主が2人で、その出資割合が同じだと、トラブルになる可能性がありますよ」と。
事業を進めるうえで、物事を決めるときに意見が割れた場合、二人が同じ出資割合だと、「過半数」という条件がクリアできないから、決めることが出来ないのだそうだ。
そうか。
自分には全然関係ないと思っていたが、いまは、ワタルとリュウジが株主で、出資割合も1:1になっているんだ。
ふとリュウジが言っていたボンクランのボールペンの事業のことを思い出した。
自分が反対したところで、事業はとめられないのか…。
ボンクランか、ボンクラかボウフラか知らないけれど、絶対にそんな違法はしたくない。
そもそも、「石原コーヒー」という名前なのに、ボールペンを扱うとは、まったくもって関係ないじゃないか。
コーヒー豆を使ったインクが入っているなら別だが…。
そんなわけない。
これは、サガワさんに入ってもらうしかない。
でも、どうしたらいいんだ?
・・・やっぱり、頼るは独立起業研究会だ。
弁護士のヨコテ先生に電話してみよう。
そういえば、ヨコテ先生は、東大阪の商売っ気たっぷりの家庭で育った、とも言ってたな。
きっと、事業のセンスもあるんだろう。
この際、事業についても相談してみようか。
そう、思いを巡らしているうちに、ワタルの携帯電話が鳴った。
ワタルの意思が通じたのか、なんとヨコテからの電話だった。
つづく