先日、「ペットとホメオパシー 」というエントリを書きました。

個人的に「ホメオパシー」なる代替療法が、ペット業界をターゲットにしつつある(いやもう既にしている?)と感じることがあったので取り上げたわけですが、今日ちょっとぞっとする話を聞きました。

通常、ドッグランや他の犬達が集まる場所などに、自分の犬を連れて行こうとしたら「ワクチンの証明書の提示」を求められます。
これは「ワクチンを打っていることを証明することで、『うちの犬は、伝染病を媒介していないことを証明する』ためのもの」です。
つまり、「ワクチンを打っているその犬の健康を保障するためのもの」ではなく、「ワクチンを打ってますので、他の犬に伝染病がうつることはないですよということを、保障するためのもの」であるわけです。

ところが、ここからがぞっとする話。
今日、先日のブログに書いた「ホメオパシーと新生児死亡」の話を、セミナー の冒頭で触れたんですね。
そうしましたら、参加者の方から「うちのところに、ホメオパシーの証明書を持ってこられた飼い主さんがいました」と。

はい?

話を聞いてみますと、その飼い主さん曰く「アレルギー体質のために、フィラリアの薬とワクチンの両方を体内に入れることができないわんこ」であると。
つまり、「ワクチン接種証明書」は、ないわけです。
しかし、飼い主さんは「ホメオパシー証明書」を持ってこられたんですね。

 「フィラリアの薬と、ワクチンの代わりになる
 ホメオパシーレメディを処方した証明書」


そして、僕が非常に「ぞっとした」のは、その証明書を獣医師が書いていたということです。

先日のエントリにも書いたように、ホメオパシー自体は毒にも薬にもなりませんから、特段問題があるわけではありません。
ただしそれは、「通常医療を排除しない限りにおいて」です。

たとえば、あなたが重い病気になったとして、何らかの治療を受けているとしましょう。
でも、その治療だけでは不安であると。
何かその不安を和らげるために、一種のお守りのような感覚で、ホメオパシーを利用することは問題ありません。
しかし、「ホメオパシー療法を受けているから、お医者さんの治療は必要ない」となると大問題です。
有効成分が一切入っていないことが確認された」「『良くなるかもしれないという思い込み』の効果(プラセボ効果)しかない」ただの砂糖玉(もしくは液体)を飲むだけで、医者から処方された薬を飲まない、治療を拒否するというのは、自分から健康を悪化させる行為と考えられます。

しかし、それでもなお「自分自身が納得して、自分のためにそういう選択をする」というのは、いわゆる「自己責任」としては是とする考え方もあるかもしれません。

ところが、あなたが「他者に感染したら、高確率で死に至るかもしれない感染症にかかっている」としたらどうでしょう。
しかも、その状況で人ごみの中に出かける。
ワクチンさえ打っていれば、その病気は100%予防できます。
しかし、そのワクチンを打たずに「ワクチンと同等の効果があるとされる、実は何の効果もない砂糖玉を飲んだだけ」という状態で、人ごみに出かけるのは、やってはいけないことですよね。
新型インフルエンザにかかった状態で、マスクもせず、薬も飲まずに、人ごみにでかけるようなものです。

僕がぞっとしたのは、このことを獣医師がわかっていないことなんですよね。
「アレルギーがあるので、フィラリアの薬やワクチン接種ができない」というのは、これはもう仕方のないことです。
なんとかそういった病気にかからないよう、様々な対策を打つべきです。
しかしその対策が、「まるで効果がないことがすでにわかっているホメオパシー」というのは、看過できません。
あまつさえ「フィラリアの薬やワクチン接種をしたのと同じですよ証明書」を、発行しているわけです。

もしもそのわんこが、他の犬からパルボをもらったらどうするのか。
あるいは、そのわんこが何らかの伝染病キャリアで、他のわんこにうつったらどうするのか。

そして何故、獣医師がこんなことに気づかないのか。
何故飼い主に一言、「ホメオパシーは気休めです」と言わないのか。

これは、非常に大きな問題だと思います。

僕が行動分析を「よいものだな」と思うのは、こうした「トンデモ療法」や「トンデモ理論」を見分けるのにも、非常に役立つからというのもあります。

皆さんも、どうか、どうかお気をつけください。
思っていた以上に、ホメオパシーはペット業界を「金儲け」のターゲットにしています。