ホメオパシーというのをご存知でしょうか?

ご存知ない方のために、ちょっとウィキペディアから引用しましょう。


ホメオパシー(Homoeopathey)は、ホリスティック医療に分類される、代替医療の一種である。同種療法・同毒療法・同病療法などと訳される。

(ウィキペディア フリー百科事典,http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%A1%E3%82%AA%E3%83%91%E3%82%B7%E3%83%BC ,2010年7月9日21:59アクセス)


犬のしつけに関係あるかないかというと、ちょっと関係あるようなないようなという感じですが、今日こんなニュースが流れました。


「ビタミンK与えず、自然療法の錠剤」乳児死亡で助産師を提訴…山口

 山口市の助産師(43)が、出産を担当した同市の女児に、厚生労働省が指針で与えるよう促しているビタミンKを与えず、代わりに「自然治癒力を促す」という錠剤を与え、この女児は生後2か月で死亡していたことが分かった。

 助産師は自然療法の普及に取り組む団体に所属しており、錠剤はこの団体が推奨するものだった。母親(33)は助産師を相手取り、約5640万円の損害賠償訴訟を山口地裁に起こした。

 母親らによると、女児は昨年8月3日に自宅で生まれ、母乳のみで育てたが、生後約1か月頃に嘔吐(おうと)し、山口県宇部市の病院でビタミンK欠乏性出血症と診断され、10月16日に呼吸不全で死亡した。

 新生児や乳児は血液凝固を補助するビタミンKを十分生成できないことがあるため、厚労省は出生直後と生後1週間、同1か月の計3回、ビタミンKを経口投与するよう指針で促し、特に母乳で育てる場合は発症の危険が高いため投与は必須としている。

 しかし、母親によると、助産師は最初の2回、ビタミンKを投与せずに錠剤を与え、母親にこれを伝えていなかった。3回目の時に「ビタミンKの代わりに(錠剤を)飲ませる」と説明したという。

 助産師が所属する団体は「自らの力で治癒に導く自然療法」をうたい、錠剤について「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」と説明している。日本助産師会(東京)によると、助産師はビタミンKを投与しなかったことを認めているという。助産師は読売新聞の取材に対し、「今回のことは何も話せない。今は助産師の活動を自粛している」としている。

 ビタミンK欠乏性出血症 血液凝固因子をつくるビタミンKが不足して頭蓋(ずがい)内や消化管に出血を起こす病気。母乳はビタミンKの含有量が少ない場合がある。

(読売新聞 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=27819  2010年7月9日22:23アクセス)


記事中には「ホメオパシー」のホの字も出てきませんが、記事中にある「植物や鉱物などを希釈した液体を小さな砂糖の玉にしみこませたもの。適合すれば自然治癒力が揺り動かされ、体が良い方向へと向かう」という文言から、これはホメオパシーであることがわかります。

ただし、このホメオパシー。
非常に問題があるとされる代替療法です。

以前このブログでもご紹介したことのある「代替医療のトリック 」という本に詳しいですが、ある程度簡単にまとめると以下のようになります。


・科学的根拠がないというか、科学と矛盾したメカニズム

ホメオパシーは、水に植物や鉱物などを溶かした液体を、砂糖の玉にしみ込ませて使用するのですが、その液体には有効成分はまったく含まれていないことがわかっています。
つまり、ただの水と変わりません。
このことに対して「水が成分のエネルギーを記憶している」とかいう反論があるようですが、水がエネルギーを記憶するなんてことはありえません。


・ホメオパシーには、プラセボ以上の効果はないという結論が出ている

プラセボとは、日本語では「偽薬効果」と呼ばれます。
風邪をひいている人に、「この薬はすごくよく効くんだよ」と、ただの小麦粉を飲ませると、途端に風邪が治る…そんな現象のことを「プラセボ(偽薬効果)」と呼びます。
そして、信頼できるいくつかの研究によって、ホメオパシーにはこの「プラセボ」以上の効果はないことが明らかになっています。
つまり、わざわざ手間ひまかけたホメオパシーの砂糖玉を使わなくても、ただの飴玉を「効果があるんだよ」と飲ませたのと、同じ効果しか得られないということです。


以上のように、ホメオパシー自体は毒にも薬にもなりませんから、害はありません(ただの水と成分は変わらないので)。
ただし、最後に大きな問題があります。


・通常医療を排除して、ホメオパシーだけを使おうとする人がいる

ホメオパシーは、「自然医療」をうたっています。
そして、中には通常医療を否定しようとする人がいたりします。
病気になっても薬を使わず、ホメオパシーを使う。
そんな人がいるわけです。
これは大問題です。
冒頭で紹介した記事の事件(あえて事件とよびますが)は、その問題が最悪の形で現れたものと言ってもよいでしょう。



こういった色々な問題が指摘され、そして実際に問題が起こっているホメオパシー、ペットの世界にも広がっています。
ためしに、「ペット ホメオパシー」で検索したら、かなりのサイトがヒットしました。
中には「犬の精神状態を落ち着かせることができる」といったことを主張しているものまでありました。

何度も書きますが、ホメオパシー自体は「ただの水」ですから、毒にも薬にもなりません。
ですので、人間が自分の判断で使用する分には、自己責任で問題はないとも言えます。
しかし、犬はものが言えません。
犬の健康を守ることができるのは、飼い主さんだけです。

今回の事件の赤ちゃんのようなことが、わんこの身に起こらないことを祈るばかりです。

どうぞ、怪しい代替医療に騙されないように、お気をつけください。