県の事業仕分け 本紙調査で3割『来年やらないで』
2010年9月7日(中日新聞)
担当する部局幹部“悲鳴”
県の第2回事業仕分けは4、5日の2日間行われ、審査対象となった110件のうち16件を不要と判定するなどして終了した。川勝平太知事は来年度以降も開催する意向を示しているが、仕分け対象事業を担当する部局幹部70人に本紙がアンケートしたところ、3割近くが来年は事業仕分けをやらないでほしいと考えていることが分かった。事業概要の説明時間が短いなどと、改善を求める幹部も目立った。 (佐野周平)
アンケートは6日、仕分け対象事業を担当する計83部局のうち、70部局の幹部職員(局長・課長級)各一人に対し、匿名を条件に実施した。
「事業仕分けを来年もやりたいか」という問いでは、「やりたい」と答えた幹部職員はわずか6人。「どちらとも言えない」とする回答が最多の46人を占め、18人が「やりたくない」と答えた。
事業仕分けでは、冒頭に5分間、県担当者が事業概要を説明した後、質疑応答に入る。事業概要の説明時間について、30人が「短い」と回答。そのうち、27人が「10~20分は必要」と答え、2人は「30分は必要」だった。
こうした意識を反映してか、「仕分け人に説明が十分に理解してもらえなかった」と不満を持つ幹部職員が22人いた。一方、「理解してもらえた」と答えたのは15人だった。仕分け結果に納得しているかという問いでは、14人が「納得できない」と回答した。
改善すべき点を挙げてもらったところ、「先入観が強い」「事業内容への理解が足りない」などと、仕分け人に対する注文や、仕分け時間(30分)の延長を望む声が目立った。
仕分け人の質問に対し、県担当者が答えに窮する場面が多かったが、「質問内容や論点を事前に示してほしい」と求める声もあった。
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20100907/CK2010090702000168.html
●資料がわかりにくい
県の各事業部から提供される資料がわかりにくいという指摘も多いです。
確かに小生もだいぶ難儀しました。
全体的に思ったことは事業の意義、位置づけが今ひとつわかりにくいこと。
社会情勢の変化やそれに合わせた事業の実績、効果を裏付ける資料が不足していること。
そして専門用語が定義づけなしにいきなり使われていることなどがわかりにくくしている原因のように思います。
一応は準備していきますが、「ふたを開けてみたら思ったのと少し違った」なんてものも少数ですがありました。
論点を明らかにして欲しいという点については、おそらく仕分け人からも同じことを言われるのではないかと思います。私もそうでしたし、他の人も「どこが論点なのか掴めない」としきりに言ってましたから。
むしろ、論点問題点を自ら示し、そこに「このような解決策を用意している」という処方箋をセットにしてプレゼンを行えば、「工夫ができているから強力に推進して欲しい」と仕分け人も思うはずです。
もっとも、事業自体が現状にそぐわないようなものについてはその限りではないと思いますが。
●説明の持ち時間が短い
確かに少し短いように思いますが、しかし時間を長くすればいいかというとそうでもないような気がします。
これは傍聴した事業でしたが、確かに手の込んだ説明書でぎっちり内容が詰まっていたのですが、ちょっとわかりにくいなぁと思って読んでいたら、やっぱりその点を仕分け人に指摘されていました。
簡潔、明瞭でないと逆にわかりにくくなったりします。
10分程度欲しいというならともかく、30分欲しいというのは少々問題です。
30分蕩々と説明されて集中力を切らさず聞ける人ってどれだけいるのかというのも問題だし、仕分け作業だってコストはかかっています。行政改革班のスタッフ、暑い盛りだから冷房費もかかる、我々は弁当も提供されているし。倍の時間をかけてやったらだいぶ高くつきます。
そもそも説明に30分をかけるというのは、枝葉末節まで説明しようとしているんではないでしょうか。
枝葉のことを仕分け人に説明しても大勢に影響はないと思います。
「簡潔に説明できないのは理解が浅い証拠」と大学時代に講義で聞きました。
要約は文章に対する理解がないと適切にできないのと同じことです。
厳しいですが簡潔に説明できる能力がないと難しいと思います。
●報道の問題
事業仕分けは議論のプロセスが大事であると我が班のコーディネーターがしきりに強調していました。
新聞やテレビを見ていますと結果だけが大きく報道されて、その結論にいたるプロセスがなかなか見えてきません。新聞であれば紙面、テレビであれば放映時間が有限であるのですから、これは仕方がありません。
もう少し議論の中身がわかりやすくするような制度設計も必要でしょう。
また、用語の定義もこだわって欲しいものです。
当日夜のNHKニュースでは「不要」が「廃止」に翻訳されていました。
前のエントリにも書いてあるとおり「不要」は「廃止して終了」と「廃止して再構築」という意味があります。
「不要」事業の予算額を機械的に積み上げ、廃止して終了した事業の額と比較して「効果がない」という論調は一考をお願いしたいものです。
●仕分けの効果の検証ができていない
経済学的に言うと純粋公共財は・非競合性・非排除性という特性を持っています。
すべての消費主体が等量消費可能であり、対価を払わずに消費しようとする経済主体を排除できないのです。
逆を言えばサービスを提供しても収益が上がりにくいものですから、貨幣額(つまり利益)で成果を把握するのは困難です。
その中で、目標を設定することは至難の業ですし、行政の仕事の経済効果というのは測りにくいものです。
だからといって仕事をやりさえすればよいという発想で、その仕事が誰の役にも立ないようでは問題があります。
効果が測りにくいことをいいことに無駄が垂れ流しになってしまうことを阻止するのが仕分け作業と言えるでしょう。
仕分けの効果を検証するということ。
ある意味ここは事業について少しは真剣に捉えたことがあり、かつ第三者的な視点を持つ県民委員の出番なのかもしれません。
意見を出したのは我々ですし、それを見守る義務もあります。
ただ、仕分け自体も即効性があるわけではなく、何年か続けて何度も反芻してよりよいものになるよう、腰を据えて取り組まないと効果は出ないと思います。
1日目に傍聴したグランシップの管理費の件にしても、まだ現場のスタッフには昨年の仕分け人のメッセージが浸透していなかったように思います。
できれば、昨年仕分けを担当した方達のご意見も聞いてみたいものです。
<続く >