どもー。


昨日は広島・因島にて「第71回本因坊秀策囲碁まつり」に初参加しました。

プロアマオープン戦(アマがコミなし定先)で優勝賞金100万円ということでそれなりに気合を入れていたのですが、1回戦で関西棋院の新垣朱武九段に2目負け・・・。40分切れ負けというアマチュア寄りのルールなのですが、私が時間に追われてヨセで損をしてしまいました。いかんち。


というわけで、一力遼七段のインタビュー2回目でございます。

前回の記事はこちら


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AlphaGoとMaster(※1)の影響
 

村上:2016年3月の李世ドル九段戦後の囲碁界の動きで何か感じたことはありましたか。

 

一力:囲碁界全体としては、布石の流行が少し変化したように思います。中国流が増えたり、第5局の布石もしばらく打たれていましたね。私自身はそれほど打ち方が変わったということはありませんでした。また、棋士の存在意義についてこれまで以上に考える機会になったことは間違いありません。私自身はそれほど切迫した想いはなく、日々の棋士の務めを果たしていましたが、人によってはかなり悩まれているように見える人もいました。

 

村上:なるほど、局数自体は5局だけですから、大きな影響を与えるまでには至らなかったのかもしれませんね。それでは、少し時系列上は飛びますが、2016年末~17年始に現れた「Master」が打った60局についてはいかがでしたか。

 

一力:「Master」の碁はかぶりつきでずっと見ていました。国際戦で活躍している世界のトッププレイヤー達が軒並み負かされていて、しかも内容で圧倒していました。囲碁のテクニックという狭い意味合いで言えば、「Master」こそが衝撃だったと言えるかもしれません。他の棋士も、「Master」に影響を受けている人は多いと思います。

 

※1 ネットの囲碁対戦サイトに「Master」を名乗る打ち手が出現、世界のトップ棋士を相手に60戦60勝という驚異的な戦績を挙げて話題を集めた。その後、開発者のデミス・ハサビ氏はツイッターで、「Master」は「AlphaGo」の新バージョンであることを明かした。

第2回囲碁電王戦

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 (画像は第2回囲碁電王戦の公式サイトより)

 

村上:AlphaGoは2016年3月からしばらく表舞台から姿を消しました。一方で日本製囲碁プログラムである「ZEN」が「AlphaGo」に対抗すべく、株式会社ドワンゴと提携して「Deep ZEN Go」プロジェクトを同時期に立ち上げました。このプロジェクトが進み、相応の力量を備えたということで第2回囲碁電王戦が開催され、趙治勲名誉名人に挑みましたが、これはどのように見ていましたか。

一力:ニコニコ生放送で、第1局の解説をしました。序盤は「ZEN」が積極的な打ち回しを見せ、序盤の感覚は非常に参考になりました。立ち合いの張栩九段も、中盤の入り口あたりの時点では「僕より強いかも・・・」なんて言っていましたね(笑)。しかし、中盤以降で特に攻め合いに関する部分の折衝で大小いくつかのミスがあり、「AlphaGo」と比べるとそのあたりがまだ粗い部分があるのかなと感じました。それでも、日本囲碁界のレジェンドである趙治勲先生に1勝をあげることができたのは、大きな進歩と言えます。現在の「ZEN」は2016年3月時点の「AlphaGo」レベルになっている言って良いかもしれません。昨日行われた第3回夢百合杯で韓国の申旻埈五段との碁(※2)は見事な内容でした。

 

※2 本インタビュー(6月20日)の前日に「ZEN」と申旻埈五段の対局が行われ、中盤の折衝で優勢を築いた「ZEN」が韓国若手精鋭棋士の追撃を振り切り勝利した。

「Master」には勝てないと感じてしまった

村上:それでは、改めて「Master」の衝撃について話をお伺いさせてください。

 

一力:先ほどの繰り返しになりますが、まさに圧倒されました。特に序盤の打ち方で印象的な打ち方が多く、李世ドル九段戦の「AlphaGo」よりも内容的な密度ははるかに濃かったです。全60局の碁の内、最後の方で打たれた碁を見ていると、人間側から「ちょっと勝てない」というような雰囲気が立ちのぼってきたような気さえしました。

 

村上:碁を見ているだけで、揺れ動く感情のようなものを感じたのですね。序盤の印象的な打ち方ということで私が思ったのは、今までの常識からは考える候補にすら上がらなかったような手を「Master」は平然と打っていたように思え、今までの常識を捨ててもいいという免罪符にすら感じました。

 

一力:そういう意味はありますね。特に顕著なのは、序盤から星に直接三々に入る手法で、他の囲碁AIには見られず、「AlphaGo」のみが多用しています。「囲碁の未来サミット」では柯潔九段が「AlphaGo」のお株を奪う形で打たれていました。今までは図1のような進行が部分的な基本定石とされており、三々に侵入した白は実利を得る一方で黒は外勢を得る、という考え方でした。しかし、「Master」の打つ三々は、まず図1で言う所の白9、11のハネツギを打ちません。なぜかと言うと、黒10、12と受けられて黒の外勢を強化してしまうので、これを嫌っています。逆に、図2のように、状況によってはまだ外の黒石を攻めたてるような狙いを残して打ち進めます。

図1
                 

星の基本定石の1つ。白の実利、黒の外勢という単純な構図。

 

図2

全局的な視点での進行一例。右下の黒の外勢と思われていた勢力を、白11、13、15と周囲から攻めたてる展開を視野に入れている。

 

一力:同じ形を見ても、これまで人間が捉えていた認識と違う解釈を見せられたようで、そういう考え方もあるのかとハッとさせられました。そういう意味では自由度が増したと言えますが、やはり今までの常識や考え方というものも確かにあるので、囲碁AIの打つ手をすぐに理解するのはなかなか難しいです。三々入りはあくまでも一例で、60局の碁にこのような知見がいろいろとありました。李世ドル九段の時の「AlphaGo」はそこまでの知見はなかったですし、第4局を負けたりもしていたのでまだ人間にもチャンスはあると思っていましたが、私自身、「Master」にはちょっと勝てないかな・・・と感じてしまいました。

 

村上:改めて一力七段の口からそう聞くと、一ファンとしては少し寂しいですね(笑)。

 

一力:棋士としては、こうなったら囲碁AIのいいところを吸収していこうという感じですね。中韓の棋士はこのあたりは適応力が高いというのか、非常に割り切っている印象です。私はまだ三々入りは打ったことがないのですが・・・日本の棋士としては河野臨九段(※3)がやはり昨日の夢百合杯で良いタイミングで三々入りを打たれていました。

 

村上:一力七段は、AIが多用する手法はあまり打たれないのですか?

 

一力:三々入りに限った話ではないですが、自分で納得する前にただ真似をするというのはちょっと・・・。ただ、先ほど言ったとおり、今までにない概念が現れたので、可能性が広がったとは言えますね。

※3  1981年生まれ。日本棋院の囲碁棋士。2005年に七大タイトルの1つである「天元」を獲得し、以降は国内賞金ランキング10位以内を維持し続ける日本を代表する棋士の1人。

「AlphaGo」対「AlphaGo」の異様な応酬

村上:またまた話が飛ぶのですが、2017年5月に行われた「囲碁の未来サミット」の後に「AlphaGo」同士の自己対戦の棋譜50局が公開されました。これらの棋譜からはやはり知見を得られたのでしょうか。

 

一力:率直に言って、「AlphaGo」同士の棋譜は必然性が分からず、理解や解釈が追いついていません。実は、1局気になる碁がありまして、その碁を見た時に「AlphaGo」はどれだけ手を読めているのかわからなくなってしまったのです。36局目の棋譜で図3-1と白が逃げだした場面がありました。実戦は図3-2と進行し、白は相当な戦果をあげたのですがここに疑問があります。


図3-1

           

シチョウのような形を逃げだした。白は助かるのだろうか?


図3-2

実戦の進行。白は上辺の黒3子を取り、無事脱出に成功した。


一力:図4のように実戦とは逆に黒2の方からアテて追いかければ、白をユルミシチョウの形で取ることができています。捨て石にできるような形でもなく、変化の余地もないので、白が困っているようにしか見えません。棋士にとってはそれほど難しい変化ではないので、このような例を見ると不可解に思えてしまいます。

図4

 読めていなかったのか、別の理由があるのか、謎は深まるばかり。

一力:他の自己対戦の碁でも、戦いの途中で遠く離れたところの利かしを打ったりしていて、手順に必然性が感じられないシーンがたびたびあります。一方が人間である「Master」の60局や「囲碁の未来サミット」で打たれた碁の方がずっと理解しやすいことは間違いありません。いずれにしても、自己対戦の碁を見た時に、強すぎてわからないと決めつけるのはちょっと危ないのかなと思います。

 

次回は「囲碁の未来サミット」の振り返りと、棋士:一力遼の今後の姿について取り上げます。

(次回:7月19日更新予定)

 

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皆様お久しぶりです。

最近、少々忙しかったり、ブログを書く気が湧かなかったり(←1番問題)で、ずいぶんと放置していました。


先日「スペースマンでGO!」の特別篇として、2017年5月の回にご出演頂いた一力遼七段にインタビューをしてきました。


日本社会人囲碁協会のホームページにも同じ記事を載せたのですが、いろいろと調べた結果、ホームページ作成ツールの機能的に、スマホ表示をうまくやることが難しいようですので、私のブログの方に取り急ぎ内容を移植して、スマホ環境の方はこちらで見てもらおうと思います。ご了承ください。。。


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「AlphaGo」によってもたらされた衝撃から1年半・・・日本囲碁界の次代を担う棋士とAIとの戦いを振り返る。また、これからの棋士の存在意義とは何か。

2017年5月、中国浙江省烏鎮で「囲碁の未来サミット」が開催され、当代世界最強棋士の一人である中国棋院棋士の柯潔九段(※1)を3-0で破り、これを機に「AlphaGo」は囲碁から引退すると発表された「AlphaGo」は囲碁を知る多くの人々の心を大きく揺さぶり、さらい、そして嵐のように去っていった。

 

2016年1月、学術誌NatureにMastering the Game of Go with Deep Neural Networks and Tree Searchという論文が掲載された。Google DeepMind社によって開発されたコンピューター囲碁プログラム「AlphaGo」は、他のプログラムに対して勝率99.8%を達成し、ヨーロッパチャンピオンであり、中国棋院棋士の樊麾(ファン・フェイ)二段を5-0で破ったと書かれていた。

 

それまでは日本棋院プロ棋士と囲碁プログラムとの公式定期戦である「電聖戦」での対局において、強豪囲碁プログラムであるZen、Crazy Stone、Dolbaramが4子局でプロ棋士を破っていたが、「AlphaGo」はそこから驚異的なブレイクスルーを果たしたことになる。

 

しかし、2016年3月にやはり世界最強棋士の一人である韓国棋院棋士の李世ドル九段(※2)と対決すると聞いたときには、ほとんどの人間は「まだ囲碁プログラムが世界トップクラスと対決するには早いだろう」と感じただろう。なんと言っても、李世ドル九段は2002年から2015年にかけて国際戦を18回も優勝している、真の世界第一人者であったのだから。

 

しかし、結果は「AlphaGo」が4-1で勝利した。その時の衝撃は筆舌に尽くし難く、その影響は囲碁界だけに留まらなかった。囲碁プログラムは囲碁AI(人工知能)と呼ばれるようになり、ディープラーニング(深層学習)の代表的な成功例と目されるようになった。2017年現在、AIに関する文字を新聞で見かけない日がないほどのAIブームとなっている。

 

AIと人間との関わりを考えざるを得ない時代となってくることはもはや万人が認めることだろう。そこで私は囲碁に携わる人間として、AIと邂逅した囲碁がどのような未来を迎えるべきなのかを深く考えていきたいと思う。今回インタビューをするのは、次代の日本囲碁界を牽引する棋士・一力遼七段である。気鋭の若手棋士がどのような目で囲碁AIの動きを見、また自身が囲碁AIと対戦したのか。そしてこれからの棋士の存在意義はどこにあるのかを訊いた。

※1

1997年生まれ。中国囲棋協会囲碁棋士。20159中国棋士ランキング1となりすでに国際戦優勝5実績がある

※2

1983年生まれ。韓国棋院囲碁棋士。2002年~2015という期間国際戦優勝たしており、一時代いた

聞き手・文 村上深

​               

中韓との距離をどう埋めていくのか。

 

村上:本日はお時間を頂きありがとうございます。さて、今回はここ1年半ほどの囲碁AIに関して時系列に沿って話をお聞きするのですが、本題に入る前に一力七段の最近の取り組みについていくつかお聞きしたいと思っています。まず、本インタビュー直前には中国で行われている甲級リーグに参加されました。名門の重慶チームに登録されているとのことですが、なぜ甲級リーグに参加することになったのですか。

 

一力遼七段(以下、一力)

   :重慶チームの主将である古力九段にお声がけを頂きました。なぜ自分がお声がけを頂いたのかはわかりませんが・・・「力」つながりでしょうか?(笑)。いずれにしても非常に光栄なことで、その分責任も強く感じています。

 

村上:なるほど、「力」つながりですか(笑)。国際戦での中韓棋士の活躍と比較して、日本棋士との差について問われることは多いと思うのですが、ずばり課題はどこにあるのでしょうか。

 

一力:世界戦の経験値に大きな差があります。日本主催の国際戦は現在では若手棋戦のグロービス杯しかありません。他の世界戦は参加する人数自体が中韓に比べて少なく、予選突破も難しい。私自身も予選突破ができていません。


中韓の棋士は世界戦を中心にスケジュールも組んでいるようですが、日本の棋士は七大棋戦などの他、若手は若手棋戦も増えているので、自分も含め日程的な課題で国際戦に出場できないケースがあります。ただ、同じように国内タイトル戦の関係で国際戦への出場が難しかった井山裕太九段(※3)が最近は日程調整で出場できることが増えてきました。他の棋士も含めて、国際戦の日程を意識して国内戦の日程調整を行う、という機運が出てきたように感じます。やっぱり井山九段が活躍すれば自信につながるし、自分たちも頑張ろうと思えます。また、世界戦で活躍するための強化施策として囲碁ナショナルチームが2013年に発足し、つい最近では日本囲碁AIの「DeepZenGo」との強化対局ができるという施策も打ち出されました。このように日本囲碁界全体で環境を整える動きが進んでおり、いわゆる平成四天王と呼ばれる高尾紳路名人、山下敬吾九段、張栩九段、羽根直樹九段らを中心とした世代と若手世代が一緒に研究をする、という環境になれば、中韓との差を詰めることができるようになると思います。中韓がこれまで取り組んできた研究スタイルを踏襲するようですが、やはり集団研究で理解が深まる部分はあると考えています。

 

※3

1989年生まれ。日本棋院の囲碁棋士。2016年に囲碁界史上初の同時七冠を達成し、2017年6月現在も六冠を維持している。日本囲碁界の第一人者。

 

 

なぜ棋士でありながら早稲田大学へ進学したのか。

 

村上:早稲田ウィークリーというメディアのインタビュー記事を拝見しました。その記事の中で”多様性を学ぶ”というキーワードが出てきました。ステレオタイプのイメージかもしれませんが、10代で棋士となった人はそのまま囲碁の修行に専念し、大学はおろか高校へ進学することもない・・・という事が多かったと思います。ましてや一力七段ほどの実績をすでに残している棋士が学業と言う二足の草鞋を履くことに対して、周囲の方々からのご意見はあったのだろうと思います。一力七段が自らに必要と考えられた”多様性”とはどのようなものなのでしょうか。

 

一力:確かに、囲碁に専念してほしいという声はたくさん聞きましたし、私自身も葛藤はありました。しかし、大学に行くことで棋士としての自分に対してマイナスになることはない判断しました。対局等の棋士の務めと学業の両輪となりますが、時間が限られるからこそ集中できるということもありますし。特にAIの登場以降は顕著になったことですが、既存の「棋士としての在り方」というものが変わったような気がします。今までの棋士は棋力と言うものさしが非常に大きなウェートを占めていたのですが、AIが登場してからはそのように単純な図式では考えることができなくなると思います。

 

村上:棋力が絶対的な指標になりえない時代になってきた、というのはよくわかります。それでは、一力七段が考える「棋士が備えるべき能力」というのは何かありますか。

 

一力:非常に近しい世界として、将棋界というのは良いモデルだと思っています。将棋棋士の方々はとてもメディアに出る方が多いように感じます。また、abemaTV(※4)と提携して対局中継を行ったりもしていますし、普及活動を具体的な施策に落とし込んでいるように思います。将棋も将棋プログラムの「ponanza」が佐藤天彦名人に勝利した、という状況は囲碁とよく似ていますから、将棋界がどのようにメディア露出をしているのか、という点は囲碁棋士も参考にして、よりファンの皆様に近しい存在になれるように知恵を絞る必要があると思います。将棋の羽生善治先生は実力もさることながら表現力が非常に豊かで、例えがわかりやすいです。逆に考えると、そのような表現力の高さが将棋の強さを補完しているような気もしていて、2つの能力が相乗効果を生み出しているように感じられます。私もそのようなマルチプレイヤーになりたい、という思いは強いです。

 

※4

サイバーエージェントとテレビ朝日の出資により設立されたインターネットテレビ局。2017年2月1日に将棋チャンネルが開設され、積極的にメディア展開を行っている。

 

AlphaGo VS 李世ドル

囲碁界へ放たれたファーストインパクト

 

村上:それでは、だいぶ前置きが長くなりましたので、そろそろ本題の「AlphaGo」に関する出来事を振り返っていきたいと思います。一力七段が囲碁AIを意識したのはいつ頃でしょうか。

 

一力:2012年に蘇耀国九段、大橋拓文六段と一緒にZENと9路盤対決をしたのが最初です。しかし、その時は19路盤で負ける日がこんなに早く来ると思っていなかったので、やはり「AlphaGo」の論文がNatureに載った2016年1月頃でしょうか。樊麾二段との対局内容を見た時は、急激な進歩に驚きましたが、とはいえ3月に李世ドル九段と対決するというのは正直に言えば早すぎると思いましたし、周囲の棋士たちも同様だったと記憶しています。

 

村上:しかし、ふたを開けてみると・・・衝撃的な内容でしたね。

 

一力:まさに衝撃的でした。特に第2局目の序盤の打ち方が印象的で、今までの人間の常識ではない打ち方で圧倒していました。しかし、冷静に見てみると、非常に理にかなっているという印象を受けます。例えば図2のような進行は、左下の応酬を決めてから、黒13と適切な位置にヒラくというのは柔軟な発想で、大いにうなずける打ち方です。右下の形は、黒の立場ではカケツギを打ったらすぐに下辺へヒラく、という固定観念がありましたが、その点コンピューターはそのような意識がないので、目を洗われるような思いでした。

 

図1 


左下の折衝で黒は左下隅の地を得る一方で、白は外勢を得た。

この白の外勢に一定の距離を保つ黒13が適切な一手。

 



一力:また、図2の黒1のようなカタツキは、このシリーズにおいて「AlphaGo」の構想力を象徴する一手と言えます。やはり最初は驚きましたが、今はこのような手にも違和感はなくなり、冷静になってみると全局のバランスを踏まえた非常に合理的な打ち方に思えます。

 

図2


     

これまでの固定観念では、相手に4線の地を作らせるのは良くないと考えられていた。

しかし、黒1のカタツキは右辺を白地にしても地合いのバランスが取れていると主張している。

 

村上:確かに、固定観念に縛られずに碁を打てるというのは、ある意味ではうらやましいとも言えるかもしれません。このシリーズを通して「AlphaGo」の構想力は素晴らしく、第4局で李世ドル九段が放ったワリコミ※5による逆転劇以外は「AlphaGo」の完勝と言っても良かったと思います。一力七段はどのような目でこの結果を見ていたのでしょうか。

 

一力:やはり李世ドル九段が敗北したこと自体の衝撃はありました。しかし、一方で「AlphaGo」が囲碁の可能性を掘り起こしてくれた、という気持ちも強いです。棋士もそれぞれの捉え方をしていますが、大筋では前向きに捉えている人が多いように思います。

※5

人間が唯一「AlphaGo」に勝利する呼び水となった一手で、のちに「神の一手」と称された。 「AlphaGo」はこのワリコミが打たれる可能性は10万分の7と想定しており、予想外の局面に持ち込まれたことで、その後の着手が乱れたと言われている。

 

(次回:7月10日更新予定)

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どーもこんばんは。


僕も名実ともにおじさんの仲間入りをしました。

そう、ぎっくり腰です。

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4/13、運命の日・・・。その前日は少し夜更かしをしてしまった。

目が覚めて時計を見たら、9時過ぎ。完全に寝坊である。

僕は慌てて仕事先へ遅刻の連絡をし、急いで着替え始める。

ぷりんとした桃尻を出したその瞬間、腰にイナズマのような衝撃が走った!!


「アオーッ!!」


立てない。痛くて立てないのだ。

どうにか布団へ体を横たえる。

現代にスマホがあってよかった。なんとか、人に連絡は取れる。


でも、寝返り一つうつことも簡単ではないのだ。

左手が、右手が邪魔で動けない。手を動かすだけで激痛が走る。

身じろぎして、布団のシーツがずれる。床ずれが不快だ。

でも、それすらも直せない。

僕はせつなくなった。


いつの間にかまどろんでいた。

13時、おなかもすいているが・・・この予兆は「ダムの決壊」が近い。

そうだ、朝起きてトイレに行く前にぎっくり腰になってしまったのだった。


布団からずり落ちるのに5分。

匍匐前進よりもおそく、畳の上をはいずる。

たっぷり30分以上かけて、トイレへ。

尊厳だけは、守った。


同じだけの時間をかけて布団へ戻る。

疲労困憊の体が、空腹を告げる。

プリンターの上に置いてあるバナナ。でも届かない。

僕はまた悲しくなって、あきらめて眼を閉じた。

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というわけで2日間ほどはほとんど立ち上がることすらできませんでしたが、

3日目には家の中を動けるようになり、4日目には外出できるほどに回復しました。

しかし、多少なりとも仕事ができるようになるまで1週間を要して、このぎっくり腰ってのは伊達じゃないな!ってことを実感。


悲しみの分だけ優しくなれるよね、いやほんと。


もう10年以上も家では座椅子暮らしをしていたんですが、腰に負荷をかけているのは重々承知していたので、これを機に椅子生活に変えようかと思います。

ニトリで高機能チェアも買ったので、これからは一層引きこもりに磨きをかけるぞ~。

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遡ること4/11に中国の一流棋士、常昊九段と対局をしました。

内容は・・・自分としてはそこそこ粘ったつもりでしたが、秒読みに入ってから乱れてしまい、石が取られて短手数で投了。

やはり、僕は読みの力が弱点なので、秒読みになるととたんにツライですねえ・・・。


でもまぁ、一応途中までは形になっていたので、それはそれで自信になった、ともいえるかも。

互先で打つ相手としては、4月にしておそらく今年度最強の相手となるはず(そもそも世界で常昊九段より強い人が何人もいないし)なので、ある意味もう怖い相手はいないかな!

きちんと棋譜付きで振り返りますので、今しばらくお待ちを。

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さらに遡ること4/10には、Zenと対局をしました。(前回の記事 ご参照ください)

持ち時間は、「1手30秒+追加30秒の考慮時間が10回」ということで、

ほぼNHK杯に近いですね。


開発チーム代表の加藤英樹さんから記録をもらったので、それを分析しました。


黒:Zen   白:俺



棋譜再生


179手完 黒中押し勝ち


まず、こちらをご覧いただきましょう。



これはZenから見た時の推定勝率(縦軸)と手数(横軸)のグラフです。

見方としては「グンッとZenの勝率が上がっている時」が僕が悪手を打った時ということですね。


他にも、考慮時間やメイン読み筋などの記録をもらいました。

それらは僕がかみ砕いて、変化図として載せます。


Zenは1手目から当然読んでいます。人間なら、この時点で読むという行為はナンセンスですけどね。

記録上は、なんと黒7までの進行が、Zenが黒1と打った時点の読み筋とピタリ。

喜んでいいんですかね、僕は?


図1(最近の流行形の1つ)



右下の変化はMasterが白の立場で打ちだした手法の1つで、現在流行しています。

私としては、Zenがどのように対処するのか興味があったのですが、黒14,16という打ち方は初めて見ました。


図2-1(白、敗着?を打つ)



白38手目で図の白1と打ちました。この手でZenの勝率が3%ほど上昇しました。

実戦のデギリで強襲を仕掛けるという構想だったのですが、これは無理でした。


図2-2(Zenの読み筋)



Zenはこの進行を予想していました。

白は低位ですが、下辺、右辺ともしっかり生きています。

黒地も大きくなりそうな場所はパッと目につかないないので、これで一局ということでしょう。


図3-1(反撃の糸口を失う)



白60で図の白1~白3と下辺を受けたのですが、これが非常に小さかったです。

黒4と守られ、反撃の糸口を失いました。

この碁は、これ以降は粘ったものの、勝つチャンスはなくなりました。

Zenの勝率はこの瞬間にさらに5%ほど上昇。


図3-2(Zenの読み筋)



Zenの読み筋は、右辺を切ってから中央を動き出し、戦線を拡大するというもの。

たしかに、白9と中央を叩けるのであれば、このほうがずっと難しいですね。


この後は、僕は必死にマギレを求めるものの、まったく手厚く黒に受けられてなす術なし。

どこも白は生きるだけ、という形に追い込まれ、地合いで引き離されてしまいました。


部分、部分では「正しく打たれたらツブされるのでは?」という程度の無茶を仕掛けたのですが、あまりに差が開いていたせいか、バッサリと切られることもなく命だけはお恵みを頂いた・・・という感じで投了時点では盤面20目ほど黒が優勢でした。

なので、本局では「攻め合いや読み合いなどでAI特有の弱点を抱えているのか?」という点は表出せず。

打った直後の感想としては「やはり、Zenは強い・・・!」という実感を得るにとどまりました。


気を取り直して、黒白を入れ替えてすぐに2局目に臨みました。

結果は、既報の通り私が奇跡的に勝利したのですが・・・

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今日も遅くなったのでここまで。

また近々、Zenの2局目と、常昊さんの碁を取り上げますー。

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