百霊杯の朝は遅い。

試合は12時半開始だが昼食は会場では用意されておらず各自手配となる。

みな、ホテルの朝食ビュッフェを遅めに取って昼をしのぐ作戦に出たのだ。


9時半頃、ビュッフェ会場につくもすでに人影はまばら。

許家元くんがいたので同席した。


「ゆで卵剥くのって集中しちゃいますね(パリパリ)」

「あっ、今の顔すごくいい。男の顔って感じがする!」

「えっ、そうですか」

「うん、対局中の表情よりもいいかも。」




(遠くに韓国代表シンジンソおる)


ホテルのロビーに11時半頃集合、試合会場へ向かう。

なお、一番最後にやってきたのは虎丸君。そういうタイプか。


バスの中、独身組の雑談で好きな人がどーのこーの、という話になると、それまでだまーって音楽を聴いていた井山くんが唐突に割り込み「そんなん無理やりにでも行くしかないやんか」と、謎の強硬論を展開し始める。

あなたもこういうの好きね。


試合会場は中国棋院。

選手権戦とアマ戦は大広間のようなところで計32名が対局し、一方元老戦は小さめの部屋で8名が対局することになっていた。

やはり、ベテランの方々には静かな環境を用意したということだろう。


雑談している棋士たちもいれば(主に中国)、だまって目を閉じて集中している棋士もあり(主に虎丸君)、対局開始までの過ごし方は人それぞれ。

このあたりは、プロもアマも別に変わりはないね。



北米代表選手との対局は、序盤に相手が打ってきたダイレクト三々からの難解な折衝でちょっと形勢を損ねたようで苦しい立ち上がり。

相手の着手は早かったので、研究済みだったのだろう。

しかし、中盤以降の戦いで地力の差があったように感じ、どうにか勝ち。


アマ戦、元老戦は持ち時間1時間。

俺の対局終了は3時前といったところだったが、比較的早い方でまだ周囲は対局中。

ふと記録係の姿が目に入る・・・イヤホンをして食い入るようにスマホを見ている姿。

何をしているのかと覗き込んでみると、アニメ(黒子のバスケ)を見ていた。

そういえば、俺の対局の記録係の子も机に顎を乗せてたな・・・。

まあ、これも文化の違いってことだろう。

選手権戦は持ち時間2時間なので、まだまだ序盤から中盤にかけて・・・というところも多かった。


元老戦の方を見に行くと、すでにいくつか終局している。

依田先生が勝ったのみで1-3、苦しい立ち上がり。

元老戦は依田先生の双肩に託された格好となった。

アマ戦も次々と終局の報が入り、残念ながら井場ちゃん、豊田くんも敗退。


人がまばらになった元老戦の試合会場で井場ちゃんの碁を検討。

「ここ、ワリコんだらどう?」

「おほっ、そんなうまい手があるんですか」

「(べりべりべりべり・・・)」

『んっ?』




うわー、なんか壁が倒れてきたー


「ふかしさん大丈夫すか!」

「意外と軽いコレ!井場ちゃん、はやく写真とって!」

「余裕すね(パシャー)」


午後4時半を回る頃、徐々に選手権戦の試合が終わってくる。

山下先生、許くんの敗報が伝わってきた一方で、井山さん、虎丸君の碁は微細な形勢とのこと。


虎丸君の様子を見に行く。

虎丸君は相変わらずとぼけた表情をしていたが、相手の様子がおかしい。

ハフーハフーといった息遣いをしているし、なにやらしぐさがバタバタしている。

盤面はもう小ヨセ、目算してみるとかなり細かい。

ということは・・・半目か?

数分後、虎丸君半目勝ちが確認された。



対局後、中国の女の子に囲まれる虎丸君


井山さんの碁はもっとも長引いたが、小ヨセの時点で計算すると1目半ほど良さそう。

もう波乱はなさそう・・・ということで安心して見ていると、すぐに中押し勝ちとの連絡が入った。

検討もそこそこで、日本勢の検討に井山さんも合流。




さすがにみな疲れた顔をしている。


6時頃ホテルへ戻り、スーツを脱ぐなどして仕切り直した後、近くの火鍋屋へ。

通訳の人いわく「観光客用というような高級店ではなく、完全に庶民の店アルヨ」とのことだったが、そういうのが逆にいいよね、ということで元老組を除く若手のみんなで街へ。


・・・お店に入って早々、上半身裸のおっさんがお客さんとしている。ナンダコレワ。

しかし、食事を始めて早々に気が付いた。

やたらと暑いのである。

牛肉、羊肉、焼き鳥、ひたすら食べまくって汗が止まらない。




「あっ、3人が扇子であおぎまくってるのいい絵ですね!」

「そう?こんな感じ?」

「あのね許くん、山下先生の動きを見習って。手首の返しすごいでしょ。これよこれ。」

「こうですか?」


許くん、君の扇子サバキは止まって見えるよ。まだまだだね。




まゆ毛だけでは汗を止められないので、ティッシュの力を借りる俺。

虎丸君はあれかえ、こっそり変顔するタイプかえ?(たぶん偶然)


そんなわけで、対局は悲喜こもごもあったが、意外と楽しく夜は更けていった。


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