忘れないうちに、百霊杯のことを赤裸々に書き留めておこうと思います。
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6月下旬、俺に電話が入った。日本棋院からだ。
「急な話ですが、7月下旬に中国で行われる国際大会に出ませんか?賞金もあります。」
「(5万や10万くらいのお小遣い程度かな?)もろもろ仕事も調整しないといけないので、検討のためにとりあえず詳細をください。」
2時間後
「なになに・・・世界から16名選抜、優勝賞金は・・・20万元!?(約340万円)」
トゥルルルル、トゥルルルル
「もしもし。出ます、絶対出ます。」
この時、俺の脳裏に浮かんでいたのは、自宅トイレに鎮座する温水便座であった。
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7月23日月曜日、午前4時。
今日は8時50分の飛行機で北京へ向かう。
さすがに今日ばかりは「0回戦敗退」は人として問題があろう。
脳が少し緊張していたのだろうか、4時間半睡眠だが目覚めは悪くない。
5時の始発に余裕をもって乗り込み、羽田へ。
6時半、羽田に到着。
まもなくロビーで井場ちゃん(井場悠史・・・都代表常連)に遭遇。
ただ、俺は事前にオンラインチェックインを済ませていたので、列に並ばずさっさとチケットをゲットし、颯爽と進む。
諸々の検査を終え、免税店エリアに着いたのは7時前。
8時50分の飛行機までにはあまりにも早すぎた。
起きてから3時間経っているので、小腹がすいてきた。
空港価格に辟易しつつも、フードコートで熟考する。
こってりしたものが食べたくなり、つけ麺を注文。
日本のラーメンは中華料理ではないからね・・・とひとりごちる。
時間をつぶしていると、やがて続々と見知った顔が集まってきた。
羽田から向かう棋士は、元老戦出場メンバーである大竹英雄先生、武宮正樹先生、小林光一先生、依田紀基先生と、選手権戦に出場する山下敬吾先生、許家元くん、芝野虎丸くんの計7名。
それにアマ戦に参加する井場ちゃん、豊田くん(豊田裕仁・・・学生王座)に俺。
他、同行スタッフも入れると12名程の所帯だ。
みな、わりとバラバラと好き勝手に飛行機に乗り込んでいく。
ああ、みんな個人事業主なんだなぁ。
飛行機内では暇を持て余すことを見越して、スマホに入れてきたからくりサーカスを熟読する。
今度アニメ化もされるしね、勉強に余念なくね。
ほんとに、からくりサーカスは良いよ。
フライト3時間なので機内食が出ないと思いこんでいたのだが、ちゃんと出てきた。
つけ麺をわりとがっつり食べていたのだけど、せっかくなので完食する。
アテンダントが「フィッシュ オア オオムラァイスゥ?」と言ったような気がしたのだが、オムライスなんて出てくんのか?なんだなんだ俺のヒアリング能力を試してるのか?とパニックになった。
その結果「I'm fish(私は魚です)」と応酬。
毎回、飛行機に乗るときは死を覚悟しているが、なんとか無事に北京空港へ到着。
最近導入されたらしい、指紋をチェックする機械がどどんと鎮座しており、初めてみた一行は「どーすればいいんだ?」と若干慌てる(特に依田先生)。
なんとか難関をクリアした我々を出迎えたのは、日本のエース井山裕太さん。
関空から個別に来て、ここで合流。
ホテルに向かう道すがら、近くに座った虎丸君と雑談。
「君のお兄さんが高知に行った時の写真がTwitterに載ってたけど、ことごとく真顔なんだよね。なぜだろう。」
「うーん、よくわかりません。」
「笑顔っていうのはこうやるんだ!っていう感じで1枚もらえませんか?」
「ええ・・・やってます・・・」
この時俺は「あっ、わりと押せばやってくれるんだな」と思いましたとさ。
2時過ぎにホテルへ到着。
次は前夜祭までフリーで、小腹がすいている人たちは軽く麺を啜りに外へ。
俺はもうダメですダメです状態だったので、安静にする。
いったん仕切り直し、ということでシャワーを浴びる。
・・・・・!?!?
なんだこれは、お湯が出てこない・・・?
いや、違う。
水圧と水温調節が一緒なんだ!!
高級ホテルと思しき今回のホテルでも、こんなことが起きるのか・・・これが中国の洗礼か・・・
と滝に打たれるほどの水圧を頭上に浴びながら、雑念を振り払えずにいた。
なお、後日武宮先生と話をしていたら「トイレが流れなくてまいっちゃったよ~はっはっは」と言っていたので、これはもう当然のことなのね、と。
前夜祭、会場に向かうとすでに多くの人が待機していた。
日本選手のテーブルで井山さんの隣が空いていたので、せっかくだから座る。
この瞬間、自らに課したミッションは「毛穴を写真に収める」に設定した。
「井山さん、1枚!」
「あっ、いいですよ」
「毛穴の1つ1つが見えるくらいの感じで至近で撮りたいんですが」
「えっ・・・いいですよ」
「(ええんか)」
けっこうほくろあるよね。
抽選の結果、俺は北米代表と。
アジア圏以外でも総じてトップ層は強いとはいえ、やはり中国・韓国を避けることができたのはくじ運がいい。
井場ちゃん、豊田くんはそれぞれ中韓の世界アマ経験者とあたったのをみて「(俺がカタキを取るからな)」とつぶやいた。
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