・ユーロ周辺国と日本の選択肢+Q&A;金正日総書記死去の影響は? | 矢口新の生き残りのディーリング

・ユーロ周辺国と日本の選択肢+Q&A;金正日総書記死去の影響は?

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☆★☆ あけましておめでとうございます。☆★☆

今年もよろしくお願いします。

今年は良い年であって欲しい、良い年にしたいものだ。



・良いところを見る

年が明けた。2011年は激動の年だったが、始まりの年でもあった。日本では大震災からの復興だけでなく、原発事故後の生き方が始まった。

世界的にも大災害が頻発したが、イスラム諸国や北朝鮮でカリスマ的な独裁者が死去したり退任し、それ以降の政治が始まった。ユーロ圏諸国でも個性的なリーダー政治家が次々と退任し、独仏を中心とした新しい時代が始まりつつある。

2012年はそういった新たな芽生えが、どちらの方向に向いて行くのかを見極める年となる。そして、米中露仏が首長の交代時期を迎える。


一方で、技術の進歩が地球を更に小さくする。グーグルやウィキリークスが先鞭をつけた、かっては権力が占有していた「情報の大衆化」という、人類の歴史始まって以来の時代の変化が、今後も進展するだろう。また、これも人類史上初めてだろうが、北極海の運航が可能になれば、北半球は一気に近くなる。世界中のすべての人が、そういった「変化」に対応していくことが必要となるのだ。


日本もそういった変化から逃れることはできない。雇用や社会保障費なども、時代の変化に対応させていかなければならない。財政再建も必要だ。その時、劇的な変化、構造的な変化に対応していくためには、今まで以上に「判断の軸」を確認する必要があるのではないか?

ここで難しいのはそういった軸は人の数ほどあることだ。「百家争鳴」と言われるほどに、価値観には多様性がある。そして、劇的な変化には凝り固まった1つの考え方よりも、多様性の方が適応できるのだ。そこでポイントとなるのは、悪いところを潰すのではなく、良いところを伸ばすことかと思う。変化に応じて悪いところを潰して行けば、遂には全部が潰れるからだ。

また、物事には両面があるという見方に立てば、潰す気になれば良いところでも、悪いと潰すこともできるのだ。人を育てるのは、良いところを伸ばせという。特に世界で通用する人材は、悪い所がないだけでは駄目だ。


日本にも良いところはたくさんある。様々な技術だけでなく、手先の器用さ、仕事に対する生真面目さ、またスポーツなどで見る、あえて「ONE FOR ALL,ALL FOR ONE(一人はみんなのために、みんなは一人のために)」などと言わなくても、チームプレーは日本人が得意とするところかと思う。同時に、悪いところがたくさんあることは、言うに及ばない。

経済的には、個人の金融資産や対外資産、累積の経常黒字額なども、他国から突出した部分だ。悪いところを潰す見方では、これらですら日本の弱点だとすることができるのだ。

その意味で、景気が悪い時期の財政再建は悪いところを潰す行為かと思う。エコポイントや割引セール、タイムセール、安売り競争で消費が伸びることは、消費税を上げれば、消費が落ち込むか、企業がその分を値下げして、利益を削ることを意味している。いずれにしても、景気悪化、雇用削減の要因だ。そして、景気悪化、雇用削減、可処分所得の減少こそが、これまでの税収減の主因であり、失業手当や生活保護費といった社会保障費増大の原因なのだ。

つまり、こういった負のスパイラルが続けば、いずれ日本はIMFの支援を受けるようになり、事実上、どこかの国の属国ともなりかねない。もっとも、すでに属国だからこそ、そういった負のスパイラルに導かれているという見方もできる。外圧を利用しての省益拡大がそれだとすれば、究極的には外国政府に仕える官庁となる。(外圧)利用だけなどさせては貰えない。もっとも、訳の分からない政治家に仕えるよりは、国際機関や外国政府の方が筋が通っており、自分たちの権限も増大するという考え方が理解できなくもないが、そのために国が貧しくなっては「判断の軸」を見失ったと言えるだろう。

話が飛躍していると思われる人が多いだろうが、ユーロ圏ではそれが現実となっている。おそらく、ほとんどの人が「良かれ」と思って判断したことが、結果的には国を貧しくし、同国人同士がいがみ合う事態となっているのだ。日本は例外どころか、同じ道を進んでいる。


2012年はおそらく簡単な年ではない。あまりにも多くの事が動き始めている。それぞれの判断が大きな意味を持ち、先の結果を左右することになる。

政府の判断の軸は、国民が安心して暮らし、子育てできる社会にすることだ。雇用の拡大は財政再建のためにも必須事項だ。良い面を見ていくと、日本には切り札が何枚もある。今年は切り札を使う、勝負の年かと思う。具体的には、円安誘導政策が最も効果的かと思う。



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☆ギリシャ、アイルランド
「ユーロ周辺国と日本の選択肢」

この連載の元原稿を書き上げたのは2010年後半だが、ここで取り上げた事柄は正に今進行中で、ユーロ周辺国の債務問題も、アメリカの住宅市況も、円高も、日本の苦境も、ここに書かれた通りに進んでいる。逐次、数値はアップデートしていくが、数字に拘らずに、何が起きているか、そして日本がユーロ周辺国のような状況から抜け出すためにはどうすればいいかを読み取って頂きたい。

政策提案を含む内容なので、皆さんの友人知人にもすすめて広めて頂ければ幸いだ。日本が復活するには、これしかないと思う。


(第1回:「序章1;北風と太陽」、「序章2;先の見えない日本」

(第2回:「序章3;代官政治」、「序章4;ターニングポイント」

(第3回:「序章5;いまだに冷戦構造下の日本」)

(第4回:「序章6;自立している国々は元気だ」)

(第5回:「序章7;日本の選択肢」、「目次」

(第6回:「第一章 ユーロ問題」、「第1項;ユーロの誕生」

(第7回:「第2項;通貨とは情報の信用度、安全で機能的な流通システムがキー」)

(第8回:「第3項;変動相場制度と統一通貨」)

(第9回:「第4項;ユーロの金融政策・その1」)




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・第10回:「第4項;ユーロの金融政策・その2」


次に5カ国のインフレ率を見てみよう。


図表08 5カ国消費者物価(yoy)2000-2010年(資料:OECD)
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CPIに関しては、違いはコア2カ国と、周辺3カ国とに別れる。ECBの母体だといわれるドイツの中央銀行だったブンデス・バンクは、長らくインフレの番人と呼ばれてきたが、CPIの数値を見る限り、ユーロの政策金利は、コア2カ国のインフレ率の調整に最も役立っている。特にドイツのインフレ率を見ていると、何故ECBが政策金利を動かしているかの理由が一目瞭然だ。

一方、アイルランドなどはインフレ率が大きく上下に振れており、1つの為替レート、1つの政策金利による弊害が見て取れる。


次は市場での資金調達コストに影響する長期債の利回りだ。


図表09 5カ国長期金利(ytm)2000-2010年(資料:OECD)
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長期金利を決めるのは投資家だ。2008年まではユーロの信認が揺らいでいなかったこともあり、各国の長期金利は極めて安定している。特に2003年から2007年にかけての5年間は、各国の10年国債の利回り較差が20~30ベイシスポイント内に収まっている。

これが、ユーロ導入最大のメリットなのだろうが、ファンダメンタルズの数値の違いを鑑みる時、単に投資家が何も見ていなかった、いわゆるユーロフォリアでしかなかったといえるだろう。政策運営に、このような投資家の無知や怠慢、付和雷同を当てにすることはできない。

ちなみに、この時期はユーロ・ドルがパリティ(1:1)超えから1.46位にまで上昇する時期で、その後、2008年夏には1.60を超えてくる。

夢は覚めるものだ。2009年末のギリシャの財政赤字の数値発表に端を発したユーロ危機により、ドイツ、ギリシャの10年国債の利回り較差は、2008年には100ベイシスポイントを下回っていたものが、2011年6月には1400ベイシスポイントを超えた。


失業率はどうだろうか?


図表10 5カ国失業率(%)2000-2010年(資料:OECD)
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他のファンダメンタルズの数値を見る限り、どう見ても、この5カ国のすべてに適合する金融政策を行っているとは思えないのだが、失業率は2007年に4カ国が8%台で近接する。アイルランドだけが、飛び抜けて低失業率なのだが、翌2008年には急上昇し、他の3カ国が7%台に低下することで、図らずも収斂することになる。

とはいえ、2009年には失業率の格差が広がり、ドイツが7%台に留まっていたのに対し、アイルランドは2月に、ギリシャは11月に、ポルトガルは第4四半期に10%を超えてくる。また、ここには挙げていないが、スペインの失業率は2010年3月に20%を超えた。


最後に、ギリシャ危機から、ユーロ問題が顕在化することになった、財政収支と、政府の債務残高を続いて見てみよう。(次回に続く)




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☆Q&A:金正日総書記死去が、2012年の日本株市場に与える影響は?


Q;
2012年相場見通し!債券バブル、円高トレンドはいつ終わる」セミナーDVDを拝見しました。良く理解できた部分と、私には難しい部分とがございます。ところで、日米独の国債バブルが終わると、日本株なども買われるようになるとのことですが、金正日総書記死去の影響をどうお考えですか?


A;
非常に答え難いご質問だ。何故なら、金正日総書記の死去という大事件を、19日の北朝鮮による特別放送まで米CIAも把握できておらず、韓国の李明博大統領などは、当日に自身の誕生日パーティーを開催していたという程、情報を取り難い国だからだ。

私も死去後に多くの解説を目にしたが、金正日体制誕生時のエピソードなど、これまで全く知らずに驚くような「事実」を書いているものもあって、裏を取らずにご紹介できるものではない。そして、その裏が、米韓の中枢ですら取り難いのだ。

とはいえ、相場に対する影響という面では、私も当事者で、自分なりの考えを纏めて対応していくしかない。こういった事情で、ご参考になるかどうかは分からないが、相場を通して見た、私の考えを答えの代わりとさせて頂く。


結論から述べると、金融市場に与える影響は非常に軽微だと考える。

様々な情報が交錯しているとはいえ、間違いない事実だと思われるのは、北朝鮮が極貧であることだ。そして、旧式の装備だとはいえ、国の規模、人口と比較すれば巨大な軍隊を持つ軍事国家だということだ。この2つだけで、この国が存続の危機にあることが分かる。つまり、軍隊は生産しないばかりか、軍隊を維持するにはカネがかかる。戦争するにもカネがかかる。その資金がどこにもないのだ。もはや、自力で体制を維持する力はほとんど残っていないかと思う。

まともに国を思う人なら誰でも、冷戦時代の遺物のような体制を変える必要があると考えるだろう。産業を育成し、軍人を労働者に変える必要がある。独裁者向けの特殊な技術に競争力があるという解説も読んだが、国を支える産業としては市場が小さ過ぎる。やはり、大きな国際市場向けの産業で競争力をつけていくしかないだろう。

体制を変えるという意味では、金正恩新体制は、「新」体制というだけで、多少は期待値が増えたのではないか。分かっているけど止められない部分を、旧体制は持っていたかと思う。


中国や韓国が併合するという可能性も、合理的な観点から見れば考え難い。

中国はこれ以上多民族(しかも軍人ばかりで貧困な)を取り込む余裕がないだけでなく、わざわざ38度線で在韓米軍と直接対峙する必要もない。

韓国も海域ですら中国との接触はストレスの塊なのに、中国と陸上での国境線を共有するのは時期尚早だと思ってもおかしくはない。また、東ドイツを併合した西ドイツの教訓から、膨大な経済的負担を覚悟する必要がある。いずれは統一国家になるとしても、救済合併のようなものなので、武力行使など、無理矢理に併合するとは思えない。


北朝鮮は、ある意味、韓中ロ米の微妙な位置バランスの中に存在してきたので、今後もその地位をできるだけ利用(時には脅しをかけ)して、時間をかけて改革していくのではないか?

戦争は事実上できないし、他国へのテロや、自国内でのクーデターも、実利が読めない状態かと思う。実際のところ、既得権や不満分子への配慮や弾圧を巧妙に行いながら、徐々に国を開いていくしかないのではないか?

それがうまく行かなくてクーデターや反乱が起きても、方向は同じで、国を開くスピードの問題だけだろう。

いずれにしても経済小国なので、日本株への影響もほとんどないかと思う。




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