・ユーロ周辺国と日本の選択肢+リスク管理はどこまで想定?
テーマ:世界経済◎エスチャートが可能にする、節目を捉える山越え&谷越えトレード
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02月05日 01月29日 01月09日
☆ギリシャ、アイルランド
「ユーロ周辺国と日本の選択肢」
この連載の元原稿を書き上げたのは2010年後半だが、ここで取り上げた事柄は正に今進行中で、ユーロ周辺国の債務問題も、アメリカの住宅市況も、円高も、日本の苦境も、ここに書かれた通りに進んでいる。逐次、数値はアップデートしていくが、数字に拘らずに、何が起きているか、そして日本がユーロ周辺国のような状況から抜け出すためにはどうすればいいかを読み取って頂きたい。
政策提案を含む内容なので、皆さんの友人知人にもすすめて広めて頂ければ幸いだ。日本が復活するには、これしかないと思う。
(第1回:「序章1;北風と太陽」、「序章2;先の見えない日本」)
(第2回:「序章3;代官政治」、「序章4;ターニングポイント」)
(第3回:「序章5;いまだに冷戦構造下の日本」)
(第4回:「序章6;自立している国々は元気だ」)
(第5回:「序章7;日本の選択肢」、「目次」)
(第6回:「第一章 ユーロ問題」、「第1項;ユーロの誕生」)
(第7回:「第2項;通貨とは情報の信用度、安全で機能的な流通システムがキー」)
(第8回:「第3項;変動相場制度と統一通貨」)
(第9回:「第4項;ユーロの金融政策・その1」)
(第10回:「第4項;ユーロの金融政策・その2」
(第11回:「第4項;ユーロの金融政策・その3」)
(第12回:「第5項;アイルランドの憂鬱」)
(第13回:「第6項;The Inconsistent Trinity」)
(第14回:「第7項;広域通貨の可能性」)
(第15回:「第8項;通貨統合は必要か?」)
第16回:「第二章 サブプライム・ショック」
第一章では、ユーロを通じて統一通貨が持つ1つの為替レート、1つの金融政策の問題点を述べてきた。これはまた、国家の重要な政策を他国に任せると何が起きるかという事例でもあった。
自国の政府が自立心、自尊心を失い、金融政策、安全保障、外交などを他国に委ねると、当然のことながら他国に食い物にされてしまう。そして、国際機関や主要国からの支援を受ければ財政政策まで指示されてしまう。そうなると、もはや真の意味では独立国と呼べない。
アイルランドの苦境は他人事ではない。日本も現実を見ないままに債務超過国となり、「破綻」目前にまで来てしまった。1991年までの日本が、他国に従属しながらも繁栄を謳歌できたのは、冷戦構造という特殊な環境下にあったからなのだ。
では、プラザ合意以降ドル安円高誘導することで、ある意味、日本を踏み台にしているはずの米国が、どうして100年に1度と呼ばれるような金融、経済危機に至ったのだろうか?
こちらは、ほぼ純粋に米国内の問題から起きている。サブプライム・ショックや、それが誘発したリーマンショックが起きた要因を、黒い白鳥が生まれる確率は低くともゼロではない、といった「ブラックスワン」のリスクや、あるいは標準偏差の正規分布に従わない、低確率だが高インパクトの「テールエンドリスク」のリスク管理に失敗したとする見方があるが、それは当事者たちの言い訳にすぎない。サブプライム・ショックは起きるべきして起きたものなのだ。専門家は物事を難しく解説するが、事の本質は誰にでも分かる、極めて常識的なものだ。
次の数値が、何のものか分かるだろうか?
2,260,000件→ 798,000件→ 2,273,000件→ 477,000件→ 685,000件
これは、米国の住宅着工件数の過去30年間のピークと、ボトムの数値だ。最後の数値は2011年11月のものだ。
1984年2月、226万戸、ピーク
1991年1月、79万8,000戸、ボトム
2006年1月、227万3,000戸、ピーク
2009年4月、47万7,000戸、ボトム
米国で住宅着工件数が年率換算の数値で220万戸を超したのは、過去30年間で3月しかない。住宅着工件数の直近のピークは2006年1月の227万戸だ。そして、サブプライム・ショックが起きた2007年8月には、すでに133万戸にまで低下していた。つまり、サブプライム・ショックで住宅建築が落ち込んだのではなく、その1年半も前から建てられなくなっていたのだ。どうしてだろうか?
理由は極めて常識的だ。売れなければ建てられないのだ。
実は、住宅販売は2005年7月にピークをつけていた。売れないのに半年間は建築を増やし続け、在庫を積み上げていたのだ。
これらの数値を追いかけていれば、サブプライム・ショックは十分に事前に予測できたのだ。ここでは、サブプライム・ローン証券化商品問題(サブプライム・ショック)を通じて、バブルの形成と崩壊とを検証していく。
(次回に続く)
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☆リスク管理はどこまで想定?
私共が運営している「生き残りディーリング塾」の会員の方から、株式市場は4年以内に70%の確率で起きると言われている地震のリスクをどう見ているのかとのご質問があった。
逃げ場のない日本人はともかく、外国人があえて危険な日本株に投資する理由はなく、外国人が売れば、日本株は下げるからだ。
1月23日の新聞報道で、東京大学地震研究所平田直教授(観測地震学)らのチームが、「首都直下型などマグニチュード7級の地震が南関東で4年以内に発生する確率が70%」に高まった可能性があるとの試算を発表した。後に、サンプルとして使用する地震のデータを広げた結果、4年以内の確率は50%以下に落ちると修正されたが、いずれにせよ「南関東でのM7級の確率を30年以内に70%」としている政府の評価を大きく上回った。
そこで、ウェブで独立行政法人防災科学技術研究所の「地震ハザードステーション」をチェックすると、更新は2010年までだった。
また、地震調査研究推進本部地震調査委員会の「全国地震動予測地図」も、2010年までが更新されている。どちらも、東北地方太平洋沖地震前までだ。
更に調べていくと、今年の正月の時点の評価とされるものが見つかった。それで見ると、10年以内に40%以上の確率とされる地域は、「色丹島沖・択捉島沖(M7.1程度)60%程度」、「三陸沖北部(M7.1~7.6)50%程度」、「十勝沖・根室沖(M7.1前後)40%程度」の3地域とされている。
南関東のM7(6.7~7.2)程度の地震では、10年以内が30%程度、30年以内が70%程度、50年以内が90%程度となっている。
参照:海溝型地震の長期評価の概要(算定基準日 平成24年(2012年)1月1日)
また、政府の地震調査委員会は2月9日に、首都直下地震など南関東で懸念されるマグニチュード7クラスの地震について、長期評価の発生確率は従来と変わらず、今後10年以内で30%程度、30年以内で70%程度との見解を発表した。いずれにせよ、高率だ。
もっとも、上記「全国地震動予測地図」では、基準日平成22年(2010年)1月1日のもので、30年以内震度6弱以上の確率として、仙台4.0%、福島0.9%、盛岡0.7%としている。つまり、確率的には東北地方太平洋沖地震はほとんど起きないとされていたから、この確率そのものをどれだけ信頼して良いものかどうかは分からない。
以下のページからは、2011年に日本近辺(M3.0以上)と世界(M4.5以上)で起きた地震が時系列で見ることができる。ちなみに日本近辺では2011年にM5.0以上の地震が691回起きている。世界ではM4.5以上が9323回、M6.0以上が205回起きている。地震は少なくともある地域では想定外のリスクではなく、極めて日常的なものであることが分かる。
参照:時系列で見た「2011年の地震」:動画
では、1月23日の「4年以内の確率70%の地震のリスク」の報道が、市場価格にはどんな影響を与えただろうか?
M7級の地震で、多少なりとも影響を受けると思われるREIT(不動産投資信託)指数を調べてみたが、売られてはいない。
参照:株価指数ヒストリカルグラフー東証REIT指数ー
それどころか、国内で販売されているREITファンドの1月末純資産残高は前月末比1.7%増の約5兆1469億円と、微増ながら2カ月連続で増加した。もっとも、資金フローはマイナス約101億円と4カ月連続の流出超となったが、1月23日の報道の影響ではなさそうだ。
また、2012年1月末時点の東京都心5区のオフィス空室率は、前月末比0.22ポイント上昇の9.23%と、2011年3月末の9.19%以来、10カ月ぶりに過去最高を更新したが、調査発表を行ったオフィス仲介の三鬼商事によれば、「大型新築ビルの竣工が相次いでおり、6月ぐらいまで供給過剰が続く可能性がある」とのことで、地震予想の影響ではなさそうだ。
地震の被害保証で、収益に影響が出ると思われる損保の株価も、地震のリスクを無視した形となっている。
参照:8766東京海上ホールディングス(株)
そして、国内の3証券取引所(東京、大阪、名古屋)の2月第1週(1月30日~2月3日)の株式売買で、海外投資家の「買い」が「売り」を216億円上回り、6週連続の買い越しとなった。ここでも、地震のリスクは無視されている。
日経平均にも織り込む動きは見られないので、外国人を含めて投資家は地震のリスクに無頓着だと見なしていいだろう。
参照:日経平均株価
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市場価格はすべての期待とリスクとを織り込んでいる。1月23日の「4年以内の確率70%の地震のリスク」の報道に市場が無反応だったのは、すでに織り込み済みのリスクか、どう織り込めばいいのか分からないリスクだったかのどちらかだ。
私は、後者だと思う。
相場は多くの約束事で成り立っている。投資もリスク管理も、すべてそういった約束事が前提で行われる。通常、我々はルールの範囲内でしか物事を考えられない。そして、自分たちの日常のルールには敏感に反応できても、日常を超えたルール違反には、判断できない程、鈍感になってしまうのだ。
例えば、旧イラクのフセイン大統領は、無実の罪(大量破壊兵器は所有していなかった)で処刑され、オサマ・ビン・ラディン氏は裁判にもかけられず、無抵抗な状態だったにも関わらず、闇討ちで殺された(常識的に考えれば、有罪ではないか、もしくはその証拠がなかったのだ)が、そういったルール違反を公に責める人は少ない。ところが、近所の騒音には、子供の笑い声にさえ「こんな夜遅くに」などと敏感だ。
なぜなら、アメリカの大統領が海外で行うことを、日本人が判断しても始まらないが、近所の子供には一言言っておかないと、ためにならないと考えるからだ。
その意味では、地震のリスクは、外国人を含めた投資家の判断を超えたリスクだと考えるしかない。世間が無視していることを、自分だけが無視できないのならば、自分がやめるしかないのだ。
私自身は、相場はやめないが、米オバマ大統領への何らかの期待は止めた。また、夜中の何時であっても、小さな子供の声を責める気にはならない。
同じように自分が何もできないことには鈍感になることを、解剖学者の養老孟司氏と、建築家の隈研吾氏が対談しているので、抜粋してご紹介する。
参照:津波対策はノーマークだった日本の建築業界
(前略)
隈:その意味では一番の津波先進国のはずなのに、お膝元の日本建築学会が、津波は予測不能だから「ない」ことにしていた。
── 原発事故は絶対起こらない、ということにしておこう、というのと同じメンタリティーですね。
隈:人間の頭の構造、特に理科系の人の頭の構造というのは、僕自身も含めて、いかに自分のできることしか考えていないか、ということですね。
養老:前提条件があるうえで論理を使うのが理科系だから、前提をいじることを嫌うんですよ。それで、前提を変えた質問をすると、「専門外です」と言われちゃう。
(中略)
隈:時間に関しても驚くほど無神経なんですよ、これが。関東大震災クラスの地震は60~70年置きに起きるから、その地震に耐え得る設計の基準は決まっています。ただ、その基準で建てた建物が何十年かたって劣化してきた時に、同様の耐震性能があるかどうかということは、基本的に誰も考えていません。そういう意味で日本人って、やっぱり「その日暮らし」の人たちなんだな、と思います。
(後略)
参照:「土砂災害」も「原発事故」も、戦争のツケが招いた
(前略)
隈:液状化問題というのは、建築と土木という縦割りの世界の境界にあるものなんです。だから実は、土木の人も、建築の人も、液状化に関してはどっちも責任を感じていない。土木の人は、大きな橋を作るとか、土地を埋め立てるとか、そういう大きなところの絵を描く。
敷地に分割してからは建築の人の仕事です。建築の人は建築の図面は描くけど、それが立つ地面に関しては、実はよく分かっていない。土木の人も境界のことはよく分かっていない。ということで、津波と同じく、液状化の問題もノーマークでした。
── 津波といい、液状化といい、建築界にはノーマークのところが結構あるんですね。
隈:理科系的なんですね。
── 縦割りの境界部分がノーマークで放置されてきた、というのは日本の建築だけなんですか。
隈:それは日本だけじゃないです。言ってみれば、近代的なテクノロジーの宿命ですよ。
(後略)
相場だけではない。建築や土木だけではない。古今東西、生きている日常そのものが、決め事のなかでだけ安心できるもので、境界部分や外側はほとんどノーマークの危険極まりないものだ。そして、時々その部分に触れる人たちだけが、災難にあったとか、不運だと言われるのだ。
逆の見方をすれば、決め事のなかでだけでも安心できることは、実は貴重なことだと言える。我々はそれを大事に味わいたいものだ。
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