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2012-02-12 22:25:00

・ユーロ周辺国と日本の選択肢+リスク管理はどこまで想定?

テーマ:世界経済
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☆ギリシャ、アイルランド
「ユーロ周辺国と日本の選択肢」

この連載の元原稿を書き上げたのは2010年後半だが、ここで取り上げた事柄は正に今進行中で、ユーロ周辺国の債務問題も、アメリカの住宅市況も、円高も、日本の苦境も、ここに書かれた通りに進んでいる。逐次、数値はアップデートしていくが、数字に拘らずに、何が起きているか、そして日本がユーロ周辺国のような状況から抜け出すためにはどうすればいいかを読み取って頂きたい。

政策提案を含む内容なので、皆さんの友人知人にもすすめて広めて頂ければ幸いだ。日本が復活するには、これしかないと思う。


(第1回:「序章1;北風と太陽」、「序章2;先の見えない日本」

(第2回:「序章3;代官政治」、「序章4;ターニングポイント」

(第3回:「序章5;いまだに冷戦構造下の日本」)

(第4回:「序章6;自立している国々は元気だ」)

(第5回:「序章7;日本の選択肢」、「目次」

(第6回:「第一章 ユーロ問題」、「第1項;ユーロの誕生」

(第7回:「第2項;通貨とは情報の信用度、安全で機能的な流通システムがキー」)

(第8回:「第3項;変動相場制度と統一通貨」)

(第9回:「第4項;ユーロの金融政策・その1」)

(第10回:「第4項;ユーロの金融政策・その2

(第11回:「第4項;ユーロの金融政策・その3」)

(第12回:「第5項;アイルランドの憂鬱」)

(第13回:「第6項;The Inconsistent Trinity」)

(第14回:「第7項;広域通貨の可能性」)

(第15回:「第8項;通貨統合は必要か?」)




第16回:「第二章 サブプライム・ショック」

第一章では、ユーロを通じて統一通貨が持つ1つの為替レート、1つの金融政策の問題点を述べてきた。これはまた、国家の重要な政策を他国に任せると何が起きるかという事例でもあった。

自国の政府が自立心、自尊心を失い、金融政策、安全保障、外交などを他国に委ねると、当然のことながら他国に食い物にされてしまう。そして、国際機関や主要国からの支援を受ければ財政政策まで指示されてしまう。そうなると、もはや真の意味では独立国と呼べない。

アイルランドの苦境は他人事ではない。日本も現実を見ないままに債務超過国となり、「破綻」目前にまで来てしまった。1991年までの日本が、他国に従属しながらも繁栄を謳歌できたのは、冷戦構造という特殊な環境下にあったからなのだ。


では、プラザ合意以降ドル安円高誘導することで、ある意味、日本を踏み台にしているはずの米国が、どうして100年に1度と呼ばれるような金融、経済危機に至ったのだろうか?

こちらは、ほぼ純粋に米国内の問題から起きている。サブプライム・ショックや、それが誘発したリーマンショックが起きた要因を、黒い白鳥が生まれる確率は低くともゼロではない、といった「ブラックスワン」のリスクや、あるいは標準偏差の正規分布に従わない、低確率だが高インパクトの「テールエンドリスク」のリスク管理に失敗したとする見方があるが、それは当事者たちの言い訳にすぎない。サブプライム・ショックは起きるべきして起きたものなのだ。専門家は物事を難しく解説するが、事の本質は誰にでも分かる、極めて常識的なものだ。


次の数値が、何のものか分かるだろうか?

2,260,000件→ 798,000件→ 2,273,000件→ 477,000件→ 685,000件


これは、米国の住宅着工件数の過去30年間のピークと、ボトムの数値だ。最後の数値は2011年11月のものだ。

1984年2月、226万戸、ピーク
1991年1月、79万8,000戸、ボトム

2006年1月、227万3,000戸、ピーク
2009年4月、47万7,000戸、ボトム


米国で住宅着工件数が年率換算の数値で220万戸を超したのは、過去30年間で3月しかない。住宅着工件数の直近のピークは2006年1月の227万戸だ。そして、サブプライム・ショックが起きた2007年8月には、すでに133万戸にまで低下していた。つまり、サブプライム・ショックで住宅建築が落ち込んだのではなく、その1年半も前から建てられなくなっていたのだ。どうしてだろうか?

理由は極めて常識的だ。売れなければ建てられないのだ。

実は、住宅販売は2005年7月にピークをつけていた。売れないのに半年間は建築を増やし続け、在庫を積み上げていたのだ。

これらの数値を追いかけていれば、サブプライム・ショックは十分に事前に予測できたのだ。ここでは、サブプライム・ローン証券化商品問題(サブプライム・ショック)を通じて、バブルの形成と崩壊とを検証していく。
(次回に続く)




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☆リスク管理はどこまで想定?

私共が運営している「生き残りディーリング塾」の会員の方から、株式市場は4年以内に70%の確率で起きると言われている地震のリスクをどう見ているのかとのご質問があった。

逃げ場のない日本人はともかく、外国人があえて危険な日本株に投資する理由はなく、外国人が売れば、日本株は下げるからだ。


1月23日の新聞報道で、東京大学地震研究所平田直教授(観測地震学)らのチームが、「首都直下型などマグニチュード7級の地震が南関東で4年以内に発生する確率が70%」に高まった可能性があるとの試算を発表した。後に、サンプルとして使用する地震のデータを広げた結果、4年以内の確率は50%以下に落ちると修正されたが、いずれにせよ「南関東でのM7級の確率を30年以内に70%」としている政府の評価を大きく上回った。

そこで、ウェブで独立行政法人防災科学技術研究所の「地震ハザードステーション」をチェックすると、更新は2010年までだった。

また、地震調査研究推進本部地震調査委員会の「全国地震動予測地図」も、2010年までが更新されている。どちらも、東北地方太平洋沖地震前までだ。

更に調べていくと、今年の正月の時点の評価とされるものが見つかった。それで見ると、10年以内に40%以上の確率とされる地域は、「色丹島沖・択捉島沖(M7.1程度)60%程度」、「三陸沖北部(M7.1~7.6)50%程度」、「十勝沖・根室沖(M7.1前後)40%程度」の3地域とされている。

南関東のM7(6.7~7.2)程度の地震では、10年以内が30%程度、30年以内が70%程度、50年以内が90%程度となっている。

参照:海溝型地震の長期評価の概要(算定基準日 平成24年(2012年)1月1日)


また、政府の地震調査委員会は2月9日に、首都直下地震など南関東で懸念されるマグニチュード7クラスの地震について、長期評価の発生確率は従来と変わらず、今後10年以内で30%程度、30年以内で70%程度との見解を発表した。いずれにせよ、高率だ。

もっとも、上記「全国地震動予測地図」では、基準日平成22年(2010年)1月1日のもので、30年以内震度6弱以上の確率として、仙台4.0%、福島0.9%、盛岡0.7%としている。つまり、確率的には東北地方太平洋沖地震はほとんど起きないとされていたから、この確率そのものをどれだけ信頼して良いものかどうかは分からない。


以下のページからは、2011年に日本近辺(M3.0以上)と世界(M4.5以上)で起きた地震が時系列で見ることができる。ちなみに日本近辺では2011年にM5.0以上の地震が691回起きている。世界ではM4.5以上が9323回、M6.0以上が205回起きている。地震は少なくともある地域では想定外のリスクではなく、極めて日常的なものであることが分かる。

参照:時系列で見た「2011年の地震」:動画



では、1月23日の「4年以内の確率70%の地震のリスク」の報道が、市場価格にはどんな影響を与えただろうか?

M7級の地震で、多少なりとも影響を受けると思われるREIT(不動産投資信託)指数を調べてみたが、売られてはいない。

参照:株価指数ヒストリカルグラフー東証REIT指数ー


それどころか、国内で販売されているREITファンドの1月末純資産残高は前月末比1.7%増の約5兆1469億円と、微増ながら2カ月連続で増加した。もっとも、資金フローはマイナス約101億円と4カ月連続の流出超となったが、1月23日の報道の影響ではなさそうだ。

また、2012年1月末時点の東京都心5区のオフィス空室率は、前月末比0.22ポイント上昇の9.23%と、2011年3月末の9.19%以来、10カ月ぶりに過去最高を更新したが、調査発表を行ったオフィス仲介の三鬼商事によれば、「大型新築ビルの竣工が相次いでおり、6月ぐらいまで供給過剰が続く可能性がある」とのことで、地震予想の影響ではなさそうだ。


地震の被害保証で、収益に影響が出ると思われる損保の株価も、地震のリスクを無視した形となっている。

参照:8766東京海上ホールディングス(株)



そして、国内の3証券取引所(東京、大阪、名古屋)の2月第1週(1月30日~2月3日)の株式売買で、海外投資家の「買い」が「売り」を216億円上回り、6週連続の買い越しとなった。ここでも、地震のリスクは無視されている。

日経平均にも織り込む動きは見られないので、外国人を含めて投資家は地震のリスクに無頓着だと見なしていいだろう。

参照:日経平均株価





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市場価格はすべての期待とリスクとを織り込んでいる。1月23日の「4年以内の確率70%の地震のリスク」の報道に市場が無反応だったのは、すでに織り込み済みのリスクか、どう織り込めばいいのか分からないリスクだったかのどちらかだ。

私は、後者だと思う。

相場は多くの約束事で成り立っている。投資もリスク管理も、すべてそういった約束事が前提で行われる。通常、我々はルールの範囲内でしか物事を考えられない。そして、自分たちの日常のルールには敏感に反応できても、日常を超えたルール違反には、判断できない程、鈍感になってしまうのだ。

例えば、旧イラクのフセイン大統領は、無実の罪(大量破壊兵器は所有していなかった)で処刑され、オサマ・ビン・ラディン氏は裁判にもかけられず、無抵抗な状態だったにも関わらず、闇討ちで殺された(常識的に考えれば、有罪ではないか、もしくはその証拠がなかったのだ)が、そういったルール違反を公に責める人は少ない。ところが、近所の騒音には、子供の笑い声にさえ「こんな夜遅くに」などと敏感だ。

なぜなら、アメリカの大統領が海外で行うことを、日本人が判断しても始まらないが、近所の子供には一言言っておかないと、ためにならないと考えるからだ。

その意味では、地震のリスクは、外国人を含めた投資家の判断を超えたリスクだと考えるしかない。世間が無視していることを、自分だけが無視できないのならば、自分がやめるしかないのだ。

私自身は、相場はやめないが、米オバマ大統領への何らかの期待は止めた。また、夜中の何時であっても、小さな子供の声を責める気にはならない。


同じように自分が何もできないことには鈍感になることを、解剖学者の養老孟司氏と、建築家の隈研吾氏が対談しているので、抜粋してご紹介する。

参照:津波対策はノーマークだった日本の建築業界


(前略)
隈:その意味では一番の津波先進国のはずなのに、お膝元の日本建築学会が、津波は予測不能だから「ない」ことにしていた。

── 原発事故は絶対起こらない、ということにしておこう、というのと同じメンタリティーですね。

隈:人間の頭の構造、特に理科系の人の頭の構造というのは、僕自身も含めて、いかに自分のできることしか考えていないか、ということですね。

養老:前提条件があるうえで論理を使うのが理科系だから、前提をいじることを嫌うんですよ。それで、前提を変えた質問をすると、「専門外です」と言われちゃう。
(中略)

隈:時間に関しても驚くほど無神経なんですよ、これが。関東大震災クラスの地震は60~70年置きに起きるから、その地震に耐え得る設計の基準は決まっています。ただ、その基準で建てた建物が何十年かたって劣化してきた時に、同様の耐震性能があるかどうかということは、基本的に誰も考えていません。そういう意味で日本人って、やっぱり「その日暮らし」の人たちなんだな、と思います。
(後略)


参照:「土砂災害」も「原発事故」も、戦争のツケが招いた


(前略)
隈:液状化問題というのは、建築と土木という縦割りの世界の境界にあるものなんです。だから実は、土木の人も、建築の人も、液状化に関してはどっちも責任を感じていない。土木の人は、大きな橋を作るとか、土地を埋め立てるとか、そういう大きなところの絵を描く。

敷地に分割してからは建築の人の仕事です。建築の人は建築の図面は描くけど、それが立つ地面に関しては、実はよく分かっていない。土木の人も境界のことはよく分かっていない。ということで、津波と同じく、液状化の問題もノーマークでした。

── 津波といい、液状化といい、建築界にはノーマークのところが結構あるんですね。

隈:理科系的なんですね。

── 縦割りの境界部分がノーマークで放置されてきた、というのは日本の建築だけなんですか。

隈:それは日本だけじゃないです。言ってみれば、近代的なテクノロジーの宿命ですよ。
(後略)


相場だけではない。建築や土木だけではない。古今東西、生きている日常そのものが、決め事のなかでだけ安心できるもので、境界部分や外側はほとんどノーマークの危険極まりないものだ。そして、時々その部分に触れる人たちだけが、災難にあったとか、不運だと言われるのだ。

逆の見方をすれば、決め事のなかでだけでも安心できることは、実は貴重なことだと言える。我々はそれを大事に味わいたいものだ。




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2012-02-10 22:37:08

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ドクロこのページの使い方


1、まずは原文を読んで、だいたいどのような内容かを推測する
2、単語、表現を参照しながら、もう一度読む
3、日本語訳で確認する
4、最後に原文を音読する(右のブックマークに読み上げソフトがある)
5、日本語訳を読むだけでも、1週間の出来事が分かる





日本語訳は可能な限り前から後ろに訳している。その癖をつけないと、早く読んだり、耳で聞いて理解するようにはならないからだ。話し言葉は前から順に消えていくので、聞き手は前から順に理解している。日本語は結論が後に来ると言われるが、文脈から聞き手は結末を予測しているのだ。


英語では結論が先に来るので、聞き手はその詳細を期待することになる。例えば、何かが最も上がったなどという表現の後には、期間や範囲を限定する表現が続く。その後に理由やその他の詳細が続くのだ。だから英語での討論では「いったい何がいいたいの?」などということはなく、聞き手が話し手を途中で遮って、「あなたの言いたいことは分かるが、、、」と自分の意見を述べることもできるのだ。グッド!







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(2/6)
Stocks rose after the U.S. economy added more jobs than expected last month, driving the Nasdaq Composite to an 11-year high and pushing the Dow to its highest reading in almost four years.
U.S. Stocks Jump on Upbeat Reports より)



《マーケットでよくでる単語・表現》

reading 測定値


《日本語訳》

株式市場は上昇した。米経済が先月、市場予想よりも多くの雇用拡大を行ったことを好感した。ナスダックは11年来の高値となり、ダウは約4年ぶりの高水準となった。



(2/7)
But Saudi Arabia has already said it will not let the price of oil, which closed Monday around $97 a barrel, go above $100, bin Talal said.
Saudi Arabia Will Not Let Oil Go Above $100: Prince より)



《マーケットでよくでる単語・表現》

barrel 樽(1バレル=42アメリカ・ガロン=約159リットル)


《日本語訳》

しかし、サウジアラビアは石油価格を、月曜日には1バレル97ドル近辺で引けたが、100ドル以上にはさせないとすでに言明している。と、ビン・タラル王子が語った。




(2/8)
Arizona, Michigan and Florida, three of the states hit hardest by the housing crisis, will join a nationwide settlement over foreclosure abuses, officials with direct knowledge say. They will join more than 40 other states in approving a deal that would benefit many Americans who lost their homes or can't afford their mortgages.
More US States to Join Foreclosure-Abuse Deal より)



《マーケットでよくでる単語・表現》

settlement 調停
foreclosure 抵当流れ
abuse 乱用
approve 承認する
deal 取り決め


《日本語訳》

アリゾナ、ミシガン、フロリダは、住宅バブル崩壊に最も厳しく見舞われた3州だが、抵当権の乱用における全米的な調停に加わることになると、当事者情報を知る高官が語った。3州は他の40以上の州と共に契約の承認に加わり、自宅を取り上げられた人々や、住宅ローンの支払いが出来なくなった人々が支援されることになる。



(2/9)
The iPhone may be great for consumers, but takes a nasty toll on wireless carriers' bottom line. The price of Apple's iconic smartphone is heavily discounted by carriers. Those subsidies almost single-handedly devastate profit margins for Verizon, AT&T and Sprint.
The iPhone is a nightmare for carriers より)



《マーケットでよくでる単語・表現》

toll 料金
carrier 通信事業者
bottom line 最終損益
iconic 肖像の
subsidy 助成金
single-handedly 単独で
devastate 壊滅させる


《日本語訳》

アイフォーンは消費者には素晴らしいものかもしれない。とはいえ、ワイアレス通信業者の収益を酷く圧迫している。アップル社の象徴的なスマートフォンの価格は、電話会社によって大きく値引きされている。それらの助成金はほとんどそれだけでベライゾン、AT&Tとスプリントの収益を壊滅させている。



(2/10)
The share of young adults with jobs has hit its lowest level since the government started keeping records just after World War II. By the end of 2011, only 54.3% of those between the ages of 18 and 24 were employed, according to a Pew Research Center report released Thursday. And the gap in employment between the young and all working-age adults is roughly 15 percentage points -- the widest on record.
Fewer young adults hold jobs than ever before より)



《マーケットでよくでる単語・表現》

Pew Research Center 首都ワシントン・ベースのシンクタンク
gap 相違


《日本語訳》

職についている若者の割合が、政府が第二次大戦直後に記録をとり始めて以降、最低水準となった。2011年末時点で、18-24歳の54.3%だけが雇用されていたと、木曜日にピュー・リサーチセンターが報告した。そして、それら若者世代と全勤労世代との雇用ギャップはおおよそ15%と、過去最大に広がった。



(2/11)
建国記念の日





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2012-02-05 23:00:08

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1週5営業日分全部は容量が大き過ぎてアップできませんでしたので、ニュースの部分はすべて省略しています。




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この連載の元原稿を書き上げたのは2010年後半だが、ここで取り上げた事柄は正に今進行中で、ユーロ周辺国の債務問題も、アメリカの住宅市況も、円高も、日本の苦境も、ここに書かれた通りに進んでいる。逐次、数値はアップデートしていくが、数字に拘らずに、何が起きているか、そして日本がユーロ周辺国のような状況から抜け出すためにはどうすればいいかを読み取って頂きたい。

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(第3回:「序章5;いまだに冷戦構造下の日本」)

(第4回:「序章6;自立している国々は元気だ」)

(第5回:「序章7;日本の選択肢」、「目次」

(第6回:「第一章 ユーロ問題」、「第1項;ユーロの誕生」

(第7回:「第2項;通貨とは情報の信用度、安全で機能的な流通システムがキー」)

(第8回:「第3項;変動相場制度と統一通貨」)

(第9回:「第4項;ユーロの金融政策・その1」)

(第10回:「第4項;ユーロの金融政策・その2

(第11回:「第4項;ユーロの金融政策・その3」)

(第12回:「第5項;アイルランドの憂鬱」)

(第13回:「第6項;The Inconsistent Trinity」)

(第14回:「第7項;広域通貨の可能性」)




第15回:「第8項;通貨統合は必要か?」

ユーロ諸国の通貨統合は、第2次世界大戦という国家総力戦争の教訓から、世界が1つの国家になれば、民族間や地域間、あるいは宗教間の対立はあっても、国家同士の対立がなくなるという、世界国家の前段階としての経済、金融、通貨の統合を模索したことに始まる。

統一通貨ユーロでは、「The Inconsistent Trinity」の項目で紹介した3つのうち、金融政策の自由度を放棄することになるが、域内に限っては為替管理という概念もなくなる。


図表13 The Inconsistent Trinity(省略)


では、通貨統合と世界国家で本当に幸せになれるのだろうか?

例えば、民族がイラク、トルコ国境で分断されているクルド人は、それでも他国に支援されているが、他国がなくなれば、どうなるのだろう。ユダヤ人は各国のパワーバランスを利用することで発言権を保っているが、各国がなくなると発言権もなくなる。いや、ユダヤ人なら逆に世界政府を操ることができるようになるかもしれない。そうなると、アラブ人はどうなる?

そんなことより、我々、日本人だ。日本は世界国家政府の与党になれるだろうか?

世界国家とは、すべての国が主権を失うことだ。戦争のない世界を模索するのだから、安全保障という概念もなくなる。あるのは治安維持だ。


世界国家のイメージを膨らませたいなら、現在の超大国米国が唯一の政府となり、警察権を主張して、各国を武装解除するところから考え始めればいい。そして、各国の主権を取り上げて、世界国家を主導する米国にすべてを委ねるのだ。仮に、米国の大統領がどんなに人格者であっても、それで世界の人々が、日本人が幸せになれるとは到底思えない。

そして、その国が議会制民主主義を採る限り、少数民族が選挙で多数派を維持することが困難になってくる。そうなると、現代の多民族国家で受けているような少数民族の悲哀が、世界国家の少数民族である日本人、あるいは、アングロサクソンやロシア人にも降りかかるようになるかもしれない。


図表18 世界の人口トップ10カ国
矢口新の生き残りのディーリング-pop



また語学力に関して、日本はアジア23カ国中、22位の北朝鮮を下回って最下位という評価を得ている。仮に、現状のままで世界国家やアジアの統一通貨ができれば、最も冷や飯を食わされるのは日本人である可能性が高いのだ。

世界通貨が成功する条件が、世界国家の成立だとすれば、まだまだ先の話に違いない。また、世界中を1つの金融政策で賄えるとは思えない。私は世界通貨、あるいはアジア通貨実現より、ユーロの崩壊が先に来るのではないかと見ている。ドイツによる欧州統一がそう簡単に行くとは思えない。盤石に見えた、あのソ連邦ですら崩壊したのだ。ソ連邦は国家であったが、ユーロは長く存続する通貨としての下地、つまり1つの統一国家をすら背景とはしていないのだ。

ユーロへの通貨統合におけるドイツ、フランスの真意を知る術はないが、実際におきているのは周辺国から中核国への富の再分配だ。周辺国はユーロに留まれば留まるほどに国力が低下する。国家主権というものがなくなる通貨統合は、形を変えた世界制覇への道なのだ。権力が集中することで、個々の民族や個人が幸せになれるとは思えない。

米ドルや米国は、あるいはそれに代わるスーパーパワーは、パワーバランスの中での、比較優位で十分なのだ。


さて、ギリシャやアイルランドなどのユーロ周辺国は、膨れ上がった債務を返すことができるのだろうか?

国土を切り売りしろという意見もあるが、例えば、日本が抱える領土問題、北方領土や竹島、尖閣諸島を見ても、領土問題は繊細だ。一時の債務を返済するのに、領土を売り払うのは将来に禍根を残すことになるといえるだろう。また、増え続ける債務を、資産の売却だけで支払っていたなら、いずれ資産は枯渇する。重要なのは、コストを上回る収益源を確保することで、徐々にでも債務を完済することなのだ。

それには税収増につながる景気の回復が不可欠だ。金融政策に期待はできず、財政のたがもはめられているが、ユーロ諸国全体の景気が良くなれば、周辺国も上向くだろう。政府には打つ手がないので、民間の活力に期待するしかない。

あるいは、ユーロから離れ、強烈な通貨安によって競争力を回復することだ。相応の痛みは伴うが、過去において破綻した国々は、いずれもそれで回復してきている。
(次回からは「第二章 サブプライム・ショック」)



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☆国債暴落?インフレに耐えられない日本

米ソの冷戦構造が崩壊して20年以上が経つというのに、いまだにアメリカに守って貰うことを国是としている日本は、当然の如く自立心、自尊心をなくし、草食動物化した。特に政治家は、国民の利害を代表して国際社会で主張することをせず、内輪の戦いに明け暮れている。そして、アメリカや諸外国に好かれ、国民に犠牲を強いることが、まるで政治家としての器量であるかのように振る舞っている。

一部を除き、輸出企業の決算は悲惨なものだ。過度な円高故に、企業の国籍を問わず、日本で生産すると赤字が出てしまう。当然、人件費は上がらない。雇用は削減される。八方ふさがりで、ぎすぎすして夢のない職場では、若者が力を出せないどころか、居つくことも覚束ない。

アジア諸国の追い上げが厳しいのは当たり前で、しばらく前から、日本は製品の輸出から、工場、技術の輸出へとシフトしている。アジア諸国は基本的に日本など先進国のノウハウを学び、品質的に同水準となったものを、通貨安で安く売っている。米ドルもユーロも安いので、日本の1人負けの状態だ。いずれ始まるのが、本格的な人材の輸出だろう。このままの円高が続けば、日本国内から職人芸以外の製造業がなくなっても不思議ではない。

製造業の雇用が不安定では、国民全体としての所得も伸びず、必然的に内需は過去の蓄えと、エコポイントなどの刺激による需要の先食いに頼るようになる。それが20年続いて、いよいよ日本は瀬戸際に追い詰められた。社会保障や年金制度の改革よりも、緊急を要し、日本の将来を決定づけるのは「円高対策」だ。

相場は力技だ。100兆円を超える外貨を買えば、トレンドは円安に変わる。日本の当局が市場介入を行っても良いし、ユーロ周辺国に円建て国債を発行させても良いのだ。どの国にも分岐点となる没落の危機があったが、今の日本はその危機に直面している。政治家にはもっと危機感を持って貰いたいものだ。

これまでの20年、それでも日本を支えてきたのが、経常黒字や貿易黒字と、政府による低利での資金調達能力だとも言われているが、2011年通年の貿易収支は31年ぶりの赤字となった。そして、にわかに注目を浴びてきたのが、政府による低利での資金調達能力、つまり、国債の低利回りがいつまで続くのかということだ。


IMFが今週2月6日から日本に調査団を派遣し、国家債務の内容についての査察を行うと報道されている。IMFは「近い将来に、日本国債は暴落の可能性がある」と指摘しており、そのための事実関係を調べるようだ。

果たして、日本国債は本当に暴落するのだろうか?

2011年12月末時点の日本政府の借金総額約959兆円うち、国債を通じて投資家から借りているのが約782兆円だ。うち、15%弱は中央銀行と海外による保有だ。残る85%強の国内投資家の保有のうち、45%近くは銀行等が保有している。生損保や投信、ディーラーなども含めた金融機関全体では約80%を保有している。つまり、金融機関の動向が日本国債の命運を握っているといえる。

みずほ証券は、長期金利の指標となる10年国債の利回りが現行の1%内外から1.13%程度に上昇するだけで、金融機関が保有する国債の強制的な損切りを招きかねないとする試算をまとめたようだ。同社、末廣徹マーケットアナリストは「国債利回りがパラレルに0.13%程度上昇すれば9000億円程度の損失が発生し、ロスカットを伴う急激な金利上昇が、さらなる損失拡大につながりかねない」と警告している。

また、三菱東京UFJ銀行は昨年末に、日本国債の価格急落に備えた「危機管理計画」を初めて作ったようだ。数年後に価格が急落して金利が数%にはね上がると、損を少なくするために短期間に数兆円の国債を売らざるを得なくなることもあると想定した。三菱東京UFJはゆうちょ銀行に次ぐ約42兆円の国債を保有している。

一方で、財務省が先週2日に実施した10年国債入札では、懸念された都市銀行から通常以上の応札がみられ、その倍率は昨年4月以来10カ月ぶりの高水準を記録した。「依然として消去法的に買われる構図が崩れていないことが鮮明となった」とされる。


これまでにも何度か、日本国債暴落近しとの観測が流れたが、それでも10年国債の利回りが1%台に乗るたびに、0%台に買い戻されてきた。その間、国債残高は増え続けてきたので、日本の金融機関はずっと買い増してきたことになる。何故だろうか?

買い手の主力である銀行が日本国債を保有する最も大きな理由は2つある。1)長短金利差により利回りが取れることと、2)BISによるリスクの掛け目がゼロだからだ。このことを簡略化して説明する。

1)は、政策金利がほぼゼロの時には、預金もほぼゼロの金利で集めることができるので、銀行の資金調達コストはゼロ%に近い。1%の国債利回りでも、1%近くの利回りを確保することができるのだ。

2)は、1兆円を一般優良企業に貸し付けて、1.40%の利息を受け取ると、BISの掛け目では1兆円のリスクで1.40%のリターンを上げたことになる。金額とすれば利息は140億円となる。企業の信用リスクは100%の資本を食うことになっているからだ。一方で、自国の国債のリスクはゼロとされている。

ここで、A銀行は10兆円を一般優良企業に1.40%で貸し付けて、1400億円を得たとする。BISの掛け目では10兆円のリスクで、1400億円のリターンだ。

B銀行は1兆円を一般優良企業に1.40%で貸し付けて、140億円を得たとする。そして、残る9兆円を1%で国債投資して900億円を得た。合計1040億円のリターンだ。ところが、BISの掛け目では国債はゼロリスクなので、1兆円のリスクで1040億円のリターンを上げたことになる。

投下資本に対するリターンはA銀行が1.40%に対し、B銀行は1.04%で、実収入はA銀行が勝っている。ところが、BISの掛け目で見ると、B銀行のリターンは10.40%に跳ね上がるのだ。そして、国際基準ではA銀行はリスクの取り過ぎ、B銀行は優良銀行との評価を受けることになる。

「そんなバカな!」とは、BIS導入時の1990年代初めに邦銀の関係者が叫んだことだ。それでも、国際業務を続けるには、BISによるルール変更に従うしかなかったのだ。ここでも冷戦後の、失われた20年があったといえる。

ギリシャやユーロ周辺国の国債価格を見るまでもなく、自国の国債にリスクがないなどと信じている関係者はいない。ギリシャのリスケによって、BIS規制は銀行の健全経営を促すために導入されたものではなく、国債の消化を助け、国が借金を続けるために導入されたものであることが明らかとなった。

連載中の「ユーロ周辺国と日本の選択肢」で、欧州政府や欧州中銀はコア諸国のためにだけ働き、ギリシャやアイルランドは犠牲になっているとご紹介しているが、BISやIMFなども、中核国が自国に有利な政策を取っていることは明白だ。そのことは犠牲となる国々の存在を暗示している。今回のIMFの日本査察も、どのような意図があることやら。


45%を保有する銀行がこのような行動を取ると、他の金融機関も概ねそれに倣うことになる。暴落を見越して空売りすれば踏み上げられるし、キャッシュのままではゼロ・リターンだからだ。

銀行の投資行動で、上記の2つが最も大きな要因だとして、欧米の中央銀行が民間銀行に資金供給してまで国債を購入させている現状では、BIS規制が国債売りを誘導するように変わることは考えなくていい。つまり、日本国債の暴落を考える時、問題は1)の、日本の政策金利が上がるかどうかだと見ていていいだろう。




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日本国債の暴落を考える時、上記のように投資家の損失が話題に上ることが多い。ところが、投資家には分散投資やデリバティブなどのヘッジの手段があり、国債での損失以上の利益を上げることが可能だ。

実は、金利が上がって最も困るのは、低利の巨額負債で自転車操業しているところなのだ。公的債務1000兆円の負債で金利が1%上昇すれば、支払い利息が10兆円増加する。借り換え分が2割だとすれば、それでも2兆円増加する。

消費税率を1%上げると約2兆円の税収増になると言われている。日本のGDPが約460兆円なので、そんなものかもしれない。ここで10年タームで考えて、日本国債の平均利回りがイタリア10年国債のように7%台にまで上がり、そのレベルで全額借り換えると、支払い利息は60兆円増加する。消費税をここから30%引き上げても、すべて支払い利息に消えてしまうのだ。日本より債務残高もGDP比率も低いギリシャでは短期債が40%となり、長期でも18%になったことを鑑みると、平均利回り7%は殊更非常識な仮定ではない。日本の10年国債でも1990年には8.6%台にまで上昇した。

加えて、巨額負債を抱えているのは、政府だけではない。


東京電力がこのようになる前から、私はセミナーなどで「企業のバランスシートを見ていると、日本のいくつかの業界の収益構造には不安を覚える」と述べていた。例えば電力各社のように、売上高を超える有利子負債を抱える業界、企業がいくつもある。収益ではない。売上の何倍かの借金を抱える企業があるのだ。

売上を超える利益はない。税引き前利益は売上から原材料費、人件費、資金コストなど、様々な費用を差し引いた上で得られる。電力会社の場合は、上に例えで挙げた3つのコストどれもが、健全経営とは呼べないものだった。


1つ目の原材料費では、東電は値上げの理由として「原発が使えなくなり、代わりに火力発電を増強した」ためにコストが増えたと述べている。

震災前の発電コストにおける資料では、原子力が5~6円(kWh)、火力が7~8円(kWh)となっている。
エネルギーに関する年次報告;2010年版 エネルギー白書概要


もっとも、この原子力のコストは、安全対策を十分に行わない場合のコストなので、福島第1原子力発電所の事故後のコストは、計算できないほど高いものについたことが分かっている。つまり、安全対策や廃炉のコスト抜きの発電コストは、そもそもが原発導入ありきのフィクションだったわけだ。

一方、コストアップにつながったとされる天然ガスは供給過多のために、このところ過去10年来の安値で、2006年末の高値15ドル近くからは、最近の2.3ドル台まで6分の1以下に下落した。


そして、天然ガス価格の下落を反映して、米の電気代は半額にもなっている。
Electricity Declines 50% as Shale Spurs Natural Gas Glut


日本の場合は加えて歴史的な円高なので、天然ガスは更に何割か安く買えてもいいはずだ。

もっとも、東電は長期契約とやらで、天然ガスでもべらぼうに高い料金を支払っているらしいのだ。電力会社は殿様商売ができてきた。高コストがそのまま高人件費に反映できるシステムなので、市場よりはるかに高く支払って売り手に実質的な利益供与をしても、自らの人件費を上げる口実となったのだ。同じことは広告費でもあったらしい。

つまり、2つ目の人件費も、とても健全経営とはいえない高コスト体質だ。

とはいえ、最も大きな問題は3つ目の、膨大な金利コストなのだ。売上高を上回る負債を抱えてしまうと、その事業を続ける限り元本返済することはほとんど不可能だといえる。電力会社は民間企業が公共サービスを行う形を取っているが、実体は民間企業ではない。限りなく公営企業に近いものだと分かる。ここで、金利が上げられたらどうなるのだろう?

そこで、私はセミナーで「日本は政策金利を上げられない」と述べていた。もちろん、政府などの公的債務残高の大きさも勘案している。


上記のことを鑑みると、日本政府は何がなんでも金利を上げたくないはずだ。とはいえ、マクロの経済環境が変わると、嫌でも上げなければならない時が来る。インフレの到来か、景気の回復だ。

政府にとってインフレはもう1つ困ることがある。公的年金には、毎年の物価の上昇や下落に合わせて、翌年度の支給額を増減させる仕組みがあるからだ。2011年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)は、前年比マイナス0.3%だった。それで、この6月支給分から年金は0.3%減額される。このことは5%のインフレだと、5%の増額を意味している。

ここにきて、何故、歴代の政府が「増税」、「信用収縮」、「円高放置」といったデフレ政策を取ってきたのかの答えがある。日本政府が日本を不景気にし、日本の空洞化を促しているとは考えたくないのだが、では、景気回復やインフレに伴う高金利に耐えられるかと考えると、案外、苦渋の選択に政治生命をかけているのかも知れないとも思えるのだ。


利上げは、日本の景気が十分に回復するか、インフレが来た時には避けられない。世界的な金余りは、近い将来の資産価値か、商品価格の上昇、つまりインフレの到来を暗示している。そうなると、銀行などはもっと健全で大きなリターンが見込める投資物件を得られることになる。日米独の国債は暴落する。投資家は逃げられるが、政府は逃げられない。

政府が行うべきことは、逃げないことだ。待たないことだ。円安誘導を行い、景気回復による税収増をはかることだ。その場合にだけ、日本はインフレ、高金利に耐えられるかと思う。




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