村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」現代ビジネス | 脱原発の日のブログ

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12月8日は1995年、もんじゅが事故を起こして止まった日。この時、核燃料サイクルと全ての原発を白紙から見直すべきだった。そんな想いでつながる市民の情報共有ブログです。内部被ばくを最低限に抑え原発のない未来をつくろう。(脱原発の日実行委員会 Since 2010年10月)

「現代ビジネス」永田町ディープスロートhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/33518
脱原発を訴える「反骨の外交官」が緊急寄稿!
村田光平「新たな一大汚染の危機と国・東電の無策ぶり」
                              <ピックアップ転載>

*去る8月31日、「福島原発4号機の核燃料問題を考える議員と市民の院内集会」が衆議院第一議員会館で行われました。私も特別スピーカーとして出席しましたが、この集会で驚くべきことが判明しましたので、急ぎご報告したいと思います。


①4号機の燃料プールの水が地震で抜け、燃料棒がむき出しになると、1535本の燃料棒に火がつく。このことはアメリカで、すでに実験によって確認されている。
②その火がついたときの破壊力は、核兵器程度ではすまない。東北、関東圏は壊滅し、放射能で人がいなくなれば、福島第一原発の1、2、3、5、6号機も管理不能となり 核の暴走が勃発する。
③燃料棒に一度火がつくと、燃料棒を包むジルコニウムが水を分解し、そのときに生じる酸素で発火が起こり、水素爆発に至る危険がある。したがって、消火に水を使用することは許されない。
④消火のための化学製品はアメリカで開発されているので、これを用意しておくことが望まれる。

「4号機は十分に補強しているので崩壊はあり得ない」

「燃えるようなものはなく、消防体制も強化している」(東電側からの答え趣旨)

*東電だけでなく、国の実務責任者も「燃料棒の消火に水を使うことが許されない」という重要な事実を知らなかったのです。


菅直人前首相の政策秘書・松田光世氏の発言でした。松田氏は、ガンダーセン氏が述べた消火のための化学薬剤に関して、こんな趣旨のことを述べました。

「福島第一原発の事故の直後、日本政府はアメリカ軍にこの消火薬剤を送ってもらっている。だが、東電にはまだ渡していない。東電には管理能力がないと判断しているので、消火薬剤の到着を知らせてもいない。

 もし、4号機の燃料棒に火がつくような事態が起きたら、米軍機が山形空港から飛び立って、4号機の燃料プールに消火薬剤を投げ入れることができるようになっている。だが、そのことにさえ反対する国会議員の勢力がある」

「4号機の建屋の下の、南側3分の1くらいのところに活断層がある。核燃料プールはその上にある。大震災のとき、4号機は80㎝も右に傾いた。そこに東電は40本の棒を打ちこんで補強した。

 しかし、60㎝沈んだところや40㎝沈んだところもあって、地面はあちこちが凸凹になっている。それを東電の報告書では『平均58㎝の地盤沈下』と言っているが、いったい何のことやら、実態を反映していない。

 コンクリートもひびが入ったので、底が割れないようにさらに厚くしたが、鉄筋も入れず、ただ厚くしただけ。だから横揺れには弱い。そういうことを、国と東電は正直にすべて言うべきではないか。データを公開すべきだ。

 現行の国の基準では、活断層の上に原子炉を建ててはならないことになっている。しかし、その建てられないところに4号機の建屋がある。原子力安全・保安院ですら、『4号機の建屋が震度6強に耐えられるかどうかは言えない』と言っている。情報をもっと世の中に真面目に公表してほしい」

*そんな中、ガンダーセン氏から次のような提言がありました。

「国は来年12月から核燃料棒を運び出すと言っているが、それでは遅すぎる。実は、もう、燃料棒の3分の2が十分に冷えているのだから、今から1 年半ほどかけて、冷えているものから順に取り出せばいい。それが終わる頃には、残りの3分の1も冷えているだろう。そうやって一刻も早く、効率的に取り出すことを考えるべきだ。地震は待ってはくれない。

 また現状のプランでは、水中から取り出した燃料棒を100トンのキャニスター(核物質を入れる容器)で運ぼうとしているが、これは40トンから50トンくらいに小さく分けて回数を多く運ぶ方がよい」


*現場で事故処理に携わる会社の責任者も、私にこう語ったことがあります。

「処理の予算を東電が半分に削ったりするような現状を改め、国が全責任を担う体制にすれば、ガンダーセンさんの提言に沿うことは、困難が伴うかもしれませんが実行が可能です」

* 集会の後、ガンダーセン氏は私宛のメールの中で、次のような意見を述べてきました。

①東電は最悪の事態が発生しうることを想像できていない。そのため、対策の必要も感じていないことが今回の集会により証明された。
②「4号機の冷却プールに燃えるものは何もない」という東電側の言い分に戦慄を覚えた。原発事故が起こった後も、東電の世界観は事故の前と一切変わっていない。
③「独立した専門家が必要」とのご意見には賛成するが、IAEA(国際原子力機関)の専門家は排除すべきである。

* 4号機について、フランスの有力誌『ル・ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』は8月、「最悪の事故はこれから起きる」とするショッキングな記事を掲載しました。この記事では、北澤宏一元JST理事長など、4号機の施設のデータを分析した専門家を取材し、「北半球全体が長期にわたって深刻な汚染にさらされ、現代日本は滅亡する」と指摘する声を伝えています。

また同誌は、この事態の危険性を日本の政府やマスコミはいっさい伝えていないが、欧米諸国では早くから危惧されてきており、米上院エネルギー委員会の有力メンバーであるロン・ワイデン議員が昨年6月、ヒラリー・クリントン国務長官に深刻な状況を報告した---と指摘しています。

*以上のことを踏まえ、私はこのたび野田首相宛に手紙を出し、広島、長崎、そして福島を経験した日本が当然打ち出すべき脱原発政策の確立と、日本の名誉挽回のため、次の諸点を要望する旨を申し入れました。

①原発ゼロ政策を確立すること
②事故収拾については国が全責任を負い、4号機からの燃料棒取り出しの作業を早急に開始すること
③4号機問題の解決に人類の叡智を動員するため、中立評価委員会及び国際技術協力委員会を設置すること
④福島事故は、原発事故が人類の受容できない惨禍であることを立証するものであるから、そのような事態が起こる可能性を完全にゼロにする必要があると世界に発信すること

 今、「原発の存在自体が、倫理と責任の欠如に深く結びついたものである」という認識が、急速に国際的に広がりつつあります。それなのに日本では、福島第一原発事故の後も原発推進体制が改められることなく、原発輸出や再稼働などによって国は「不道徳」の烙印を押されたも同然で、名誉は大きく傷つけられています。

 先の集会でわかったように、原発事故の収拾体制に驚くべき欠陥があると露呈したことで、上記4項目は、一刻も早く実現しなければならない最優先の国民的ミッションとなったのです。


村田光平(むらた・みつへい)
1938年、東京生まれ。61年、東大法学部卒業、外務省入省。駐セネガル大使、駐スイス大使などを歴任し、99年、退官。99年~2011年、東海学園大学教授。現在、同大学名誉教授、アルベール・シュバイツァー国際大学名誉教授。外務官僚時代、チェルノブイリ原発事故をきっかけに「脱原発」をめざす活動を開始。私人としての活動だったにもかかわらず、駐スイス大使時代の99年、当時の閣僚から「日本の大使が原発反対の文書を持ち歩いている」と批判され、その後日本に帰国となり、辞職。さまざまな圧力に屈せず、脱原発の主張を貫いて「反骨の外交官」と呼ばれた。以後、現在まで、主に原子力問題やエネルギー問題などをテーマに言論活動を続けている。著書に『原子力と日本病』、『新しい文明の提唱 未来の世代に捧げる』など。


<以上は抜粋です、全文は>http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33518