安倍内閣と類似した政策で「景気回復を実現した!」と言われる政権に、小泉内閣があります。その経済政策の特徴は、
①日銀による量的緩和
②財政支出のカット
③規制緩和
上記の3つでした。
ネットの保守層のうち、上念司氏や倉山満氏を支持する「リフレ派」といわれる人たちは、「日銀の量的緩和でデフレ脱却できる!小泉内閣の時はもう一歩だった。だから、安倍政権は量的緩和を大胆に実施するだけでも支持に値する」と主張しています。
量的緩和は「深刻なデフレ状況下」でも有効なのでしょうか?
そもそも、量的緩和の効果をまずは整理する必要があります。
①潤沢なマネーの提供による、設備投資の増加(投資需要の増加)
②株価や土地など、資産価格の上昇による消費需要の増加
③円安による純輸出の増加
上記3点が量的緩和による効果であると考えられます。
今回は、③の「純輸出」増加に的を絞って、反論を行いたいと思います。
このグラフを見ていただけますでしょうか?
小泉内閣の2001~2006年は、輸出がかなり増えていることがわかります。
その一方で、輸入もかなり増えていますよね???
GDPの計算であくまで重要なのは、「純輸出」であって「輸出」ではありません。
なぜなら、GDPとは「国内で生み出された付加価値の合計」であるため、輸入は国外の付加価値であることから、控除する必要があるのです。
円安誘導をしたとしても、必ずしも純輸出が増えるとは限らないことがわかります。
さらに、以下のグラフをご覧になっていただきたいと思います。
これは、内閣府から拝借したグラフです。
輸入デフレーター、つまり小泉内閣において輸入物価がかなり上昇していることがわかります。
これが、小泉内閣で純輸出がほとんど伸びなかった原因です。
輸出が増えても、輸入も同じように増えたために、「純輸出」としては大きくならなかったのです。
円安になれば、同じ製品であってもドル評価額は安くなるので、輸出に有利です。
しかし、同じ製品でも輸入価格は高くなるので、輸入に不利です。
実際、円安になった現在も日本の貿易赤字は継続しています。
よくリフレ派は「インフレは良い、デフレは悪い!」と言いますが、輸入インフレ(コスト・プッシュ型のインフレ)は、企業にとってはコスト上昇による利潤圧迫、家計にとっては生活の悪化を招き、決して良いものではありません。
リフレ派の皆さんには、インフレといっても「輸入インフレ(コスト・プッシュ型)」なのか「ディマンド・プル型」なのか、明確に区別をして議論してほしいと思います。
輸出が増えても輸入で利潤が圧迫されたからなのか、輸出を増やすために低コスト路線に走ったために賃金が抑制されたのか理由はわかりませんが、以下のグラフのとおり輸出が増加しても賃金が上昇しない現実もあります。
安倍内閣は輸出やグローバリズムで成長しようとしていますが、すでに失敗した戦略の焼き直しでしかなく、何がしたいのかよくわかりません。
順次、量的緩和の他の効果、投資増加と資産効果についても別の記事で批判を加えていきたいと思います。