≪ご案内≫
この話はキョーコのクリスマス誕生日企画として、ななちのブログ のななちさんとスタートさせたコラボ作品です。
ななちさんサイドではキョーコ視点でのお話しがUPされていますので、そちらもぜひご覧になってくださいませ。
1つの話で二度おいしい企画を狙ってます(←また勝手なことを言ってるし…)
ともあれ。
楽しんでいただけたら幸いです。
では、以下からどうぞ~v
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光と闇のフォークロア 1
きっかけは他愛ない会話だったと思う。
たまたま訪れたラブミー部室に置いてあった雑誌。開かれていたそのページには最近流行のゲームに出てくるキャラクターのイラストが載っていた。
見れば、いかにも彼女が好みそうな、天使か妖精かというファンタジーな世界がそこに描かれている。
そのことで切り出した会話だった。
「最上さんはゲームとかやらないの?」
「え?あぁ…はい。家にゲーム機もないですし、実はやったこと自体ほとんどないんです」
苦笑しながら答える姿に、彼女の過去の事情を思い出す。
幼い頃から母親に認めてもらうために泣きながら勉強を頑張り、自分の居場所を得るために必死で旅館の手伝いをしていた彼女がゲームなどに時間を割けたわけもなく。
ましてや子供には高額なゲーム機を買ってもらうことなど、彼女が考えつくはずもない。
自分でアルバイトをするようになってからも、その収入はすべて他人の為にすべて使い切ってきたというのだから、ゲーム機を買うこと自体頭にはなかったのだろう。
「え、と…。それがどうかされましたか?」
つい、深く考え込んでしまっていたらしい。彼女が心配そうに俺を見ていた。
「あ、ごめん。特に理由はないんだけど…。ほら、最上さんって妖精や魔法、お姫様とか…好きだよね」
「はいっ!それはもう…なんて言っても私にはコーンがいますから!」
さっきまで自分を心配そうに見ていた彼女が、うっとりと 『コーン』 を想像してその世界に行ってしまう。
コーン=自分、ではあるのだが、それを告げることができない以上コーンは他人、だ。
何だか自分自身に嫉妬する滑稽な自分に落ち込みそうになるが、本題はそこではなかったな、と思い直す。
「そうか…。君のファンタジー好きは 『コーン』 の影響なのか」
「あー…えっと。そればっかりじゃぁないんですけど。もともと童話やおとぎ話なんかは好きだったんです。そこへ本物の 『妖精』 に出会って、あぁいう話が全て嘘じゃないって信じられたから。…それでいつかは…」
穏やかに話していた彼女の様子が一変する。
彼女が言わなくてもその表情で思っていることは察知できた。過去のこと…お姫様と言えば登場するのは王子様。過去に王子様と思っていた奴のことを考えてしまったのだろう。
そんな不快な思考に囚われていてほしくなくて、俺は話を最初の振り出しに戻すことにした。
「そうか。それなら最近のゲームなんかは結構気に入るものが多いかもしれないね」
「ほぇ?…どうしてですか?」
ちょっと強引な話題転換だったが、彼女も奴のことを思い出していたくなかったらしくすぐに話に乗ってきてくれた。
「うん、最近のゲームって結構ストーリー性を重視した物も多いみたいでね。それこそ剣と魔法、妖精や精霊が当たり前に存在してて、王様やお姫様が危険に陥るのを救うって具合に君の好きなものがいっぱい詰まっているから…。ひょっとしてそういうものが好きなのかな、と思って」
「そうなんですか!?私、今までゲームってストーリー性なんて特にないものだと思ってました。…そうやって聞くと何かとても楽しそうですね~」
そんな俺たちの会話を聞いていた敏腕マネージャーが、とある仕事の依頼を受けてきたのはそれからしばらくしてからの事だった。
つづく